» 監査上の主要な検討事項(KAM)に関するQ&A
 » 監査上の主要な検討事項(KAM)に関するQ&A

社外財務部長 原一浩の公式サイト

監査上の主要な検討事項(KAM)に関するQ&A

監査上の主要な検討事項(KAM)に関するQ&A

1.はじめに

 

日本監査役協会は、2019年6月11日と12月4日に KAMに関するQ&A集(以下、本Q&A)を公表しました。

 

KAMの選定は監査人が行いますが、監査役等と協議した事項の中から選定されるため、監査役等はKAMの取り扱いにおいて重要な役割を果たすことが期待されています。

 

KAMの円滑導入に向けた監査役等の実務支援ツールとして本Q&Aが作成されました。

 

内容は、以下のようになっています。

 

1.KAMの概要

2.導入に向けて

3.実務上のポイント(前編・後編)

4.制度と実務対応の今後

5.その他

 

この中から、実務上のポイントについて解説します。

 

2.実務上のポイント

 

構成は、前編が、概ね6月ころまでに対応が必要となる事項、後編が、期中の対応・株主総会に向けた対応等となっています。

 

(1)監査契約

 

KAMは従来の監査手続きを大幅に変えるものではありませんが、監査計画から始まる監査の過程で監査役等とのコミュニケーションは一定程度増加し、全体としての監査時間は増加すると考えられます。

 

監査役等は、KAMが導入されることにより監査見積時間数及び監査報酬等が影響を受ける理由について監査人から説明を受け、このような影響が適正に反映されていることを確認する必要があります。

 

(2)監査計画

 

①監査人とのコミュニケーション

 

監査人とのコミュニケーションの在り方については、本質的な変化はありません。

監査計画の説明の中で、監査上の重要な論点についての説明がありますので、KAMの候補についても説明があると考えられます。

 

②執行側とのコミュニケーション

 

執行側は、株価や事業活動に与える影響を心配して、監査人や監査役等と見解が分かれる場合も考えられますので、監査役等は、KAM候補とされた事項の内容を理解し、監査役等、監査人、執行側の各者間で見解の相違がないように、各者間でコミュニケーションを取る必要があります。

 

(3)期中

 

監査人がKAMを最終的に決定するのは監査報告書の内容を決定する時点となりますが、期初の監査計画策定の段階でKAMの候補を選定し、期中の監査活動の進捗状況を反映して適宜見直し(追加、絞り込み、入れ替え)が検討されます。

 

KAM候補の見直しは、監査の過程で随時行われる重要なプロセスですが、期中も監査人の監査に影響を及ぼす事象が発生した場合には監査役等との監査人の間で随時協議を行いますので、監査人とのコミュニケーションに本質的変化はありません。

 

KAM候補の見直しに際しては、執行側とのコミュニケーションが必要なことも変更はありません。

 

(4)期末(監査報告書作成時)

 

監査役等は監査人から提示されるKAMのドラフトについて、以下のポイントを確認することが考えられます。

 

① KAMとして選定される項目の中に、監査役等と協議されていないものが含まれていないか。

 

② KAMの記載内容に事実と異なる内容が含まれていないか。また、誤解を与える表現になっていないか。

 

③ KAMとして選定される趣旨が利用者にとって、会社固有の情報が記載されているか。

 

④ KAMの記載に会社の未公開情報が含まれている場合、監査人の守秘義務が解除される正当な理由の範囲か。

 

(5)監査人と監査役等・執行側との間の見解の相違

 

KAMの項目や記載内容について、見解の相違が顕在化しないように、監査役等、監査人、執行側の間で綿密に協議を行っておく必要があります。

 

仮に、監査人と執行側との間で重大な見解の相違が解消せずに監査報告書が公表された場合には、監査役等は、見解の相違にどのように対応してきたのか(善管注意義務を果たしているのか)について、株主総会等で問われる場合も考えられますので、自身の見解と対応について説明できるよう整理しておく必要があります。

 

(6)会社法上の取り扱い

 

会社法上の会計監査人の監査報告書にKAMの記載を義務付けることは見送りとなり、記載は任意となりました。

任意で記載するか否かは、監査人、監査役等、執行側の間で協議することになります。

 

なお、会社法に基づく会計監査人の監査報告書へのKAMの記載の有無により、監査役等の監査報告書における取り扱いは、以下のようになると考えられます。

 

① 会社法に基づく会計監査人の監査報告書にKAMが記載されていない場合

 

監査役等の監査報告書の作成や定時株主総会の開催時点では、金融商品取引法に基づく監査人の監査報告書は、ほとんどの会社では発行されておらず、KAMの表現等については未公表の状況にあることが想定されます。

監査役等が会計監査人の監査の方法の相当性を判断するにあたり、監査人とのKAMの議論を考慮することになると考えられます。

また、定時株主総会の開催時点では、KAMの内容が確定しているはずですので、監査役等の見解と対応について、整理しておく必要があります。

 

② 会社法に基づく会計監査人の監査報告書にKAMが記載されている場合

 

会社法上の会計監査人の監査報告書にKAMが記載されていて、監査役等が会計監査人の監査報告書におけるKAMの記載内容に否定的な見解をとる場合には、その旨を記載することが必要になります。

 

監査役等の監査報告書に「会計監査人の監査の方法及び結果は相当である」と記載すれば、KAMの選定及び記載内容も相当であると判断したと解釈されると考えられます。

したがって、監査役等が会計監査人の監査報告書におけるKAMの記載内容に否定的な見解で、かつ、監査の方法の相当性の判断に影響がある場合には、その内容を会計監査人の監査の方法または結果が相当でない理由として記載することになると考えられます。

 

(6)株主総会に向けた対応

 

多くの会社では、有価証券報告書は株主総会終了後に提出されるため、株主は1年前に開示された有価証券報告書に含まれる監査報告書に記載されたKAMしか知りえないことになります。

多くの株主の関心は、株主総会終了後に提出される有価証券報告書に含まれる監査報告書に記載されるKAMの内容になると思われますので、KAMに関する質問は、提出予定の当年度の有価証券報告書に含まれる監査報告書におけるKAMの項目がどのように変化しているのか、監査期間中にどのような議論が行われたかなどになると思われます。

 

これらの質問に対する答弁内容は、株主総会当日では有価証券報告書は未提出のため、限定的にならざるを得ない面があると思われますが、答弁内容や誰が回答するかなどは、執行側、監査役等、会計監査人の間で協議の上、決めておく必要があると考えられます。

関連記事

無料相談

おススメの記事