監査役・監査役会・会計監査人は、会社のガバナンスの担い手です。会計監査人の選解任や会計監査報告等について、監査役・監査役会との関連を含めて解説します。
1.会計監査人の選任
会計監査人は、株主総会の決議によって選任されます。
会計監査人は、公認会計士又は監査法人でなければなりません。
会計監査人の任期は、選任後一年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとし、定時株主総会において別段の決議がされなかったときは、当該定時株主総会において再任されたものとみなされます。
2.会計監査人の解任
会計監査人は、いつでも、株主総会の決議によって解任することができます。
解任された会計監査人は、その解任について正当な理由がある場合を除き、株式会社に対し、解任によって生じた損害の賠償を請求することができます。
3.監査役による会計監査人の解任
監査役会は、会計監査人が次のいずれかに該当するときは、その会計監査人を解任することができます。
(1)職務上の義務に違反し、又は職務を怠ったとき。
(2)会計監査人としてふさわしくない非行があったとき。
(3)心身の故障のため、職務の執行に支障があり、又はこれに堪えないとき。
解任は、監査役が二人以上ある場合には、監査役の全員の同意によって行わなければなりません。
会計監査人を解任したときは、監査役は、その旨及び解任の理由を解任後最初に招集される株主総会に報告しなければなりません。
4.監査役の選任に関する監査役の同意等
取締役は、監査役の選任に関する議案を株主総会に提出するには、監査役(監査役が二人以上ある場合にあっては、その過半数)の同意を得なければなりません。
また、監査役は、取締役に対し、監査役の選任を株主総会の目的とすること又は監査役の選任に関する議案を株主総会に提出することを請求することができます。
5.会計監査人の選任等に関する議案の内容の決定
監査役設置会社においては、株主総会に提出する会計監査人の選任及び解任並びに会計監査人を再任しないことに関する議案の内容は、監査役が決定します。
6.会計監査人の監査
会計監査人は、計算関係書類を受領したときは、次に掲げる事項を内容とする会計監査報告を作成しなければなりません。
(1)会計監査人の監査の方法及びその内容
(2)計算関係書類が当該株式会社の財産及び損益の状況を全ての重要な点において適正に表示しているかどうかについての意見があるときは、その意見
当該意見が次のイからハまでに掲げる意見である場合にあっては、それぞれ当該イからハまでに定める事項の記載
イ 無限定適正意見
監査の対象となった計算関係書類が一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行に準拠して、当該計算関係書類に係る期間の財産及び損益の状況を全ての重要な点において適正に表示していると認められる旨
ロ 除外事項を付した限定付適正意見
監査の対象となった計算関係書類が除外事項を除き一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行に準拠して、当該計算関係書類に係る期間の財産及び損益の状況を全ての重要な点において適正に表示していると認められる旨並びに除外事項
ハ 不適正意見
監査の対象となった計算関係書類が不適正である旨及びその理由
(3)前号の意見がないときは、その旨及びその理由
(4)追記情報
「追記情報」とは、次に掲げる事項その他の事項のうち、会計監査人の判断に関して説明を付す必要がある事項又は計算関係書類の内容のうち強調する必要がある事項としています。
① 継続企業の前提に関する注記に係る事項
② 会計方針の変更
③ 重要な偶発事象
④ 重要な後発事象
(5)会計監査報告を作成した日
7.会計監査人設置会社の監査役の監査報告の内容
会計監査人設置会社の監査役は、計算関係書類及び会計監査報告を受領したときは、次に掲げる事項(監査役会設置会社の監査役の監査報告にあっては、(1)から(5)までに掲げる事項)を内容とする監査報告を作成しなければなりません。
(1)監査役の監査の方法及びその内容
(2)会計監査人の監査の方法又は結果を相当でないと認めたときは、その旨及びその理由
(3)重要な後発事象
(4)会計監査人の職務の遂行が適正に実施されることを確保するための体制に関する事項
(5)監査のため必要な調査ができなかったときは、その旨及びその理由
(6)監査報告を作成した日
8.会計監査人設置会社の監査役会の監査報告の内容等
(1)会計監査人設置会社の監査役会は、監査役が作成した監査報告に基づいて、監査役会の監査報告を作成しなければなりません。
(2)監査役会監査報告は、次に掲げる事項を内容とするものでなければなりません。
この場合において、監査役は、当該事項に係る監査役会監査報告の内容が当該事項に係る監査役の監査役監査報告の内容と異なる場合には、当該事項に係る各監査役の監査役監査報告の内容を監査役会監査報告に付記することができます。
① 監査役及び監査役会の監査の方法及びその内容
② 前項(2)から(5)までに掲げる事項
③ 監査役会監査報告を作成した日
(3)会計監査人設置会社の監査役会が監査役会監査報告を作成する場合には、監査役会は、一回以上、会議を開催する方法又は情報の送受信により同時に意見の交換をすることができる方法により、監査役会監査報告の内容を審議しなければなりません。
9.会計監査人の職務の遂行に関する事項
会計監査人は、特定監査役に対する会計監査報告の内容の通知に際して、当該会計監査人についての次に掲げる事項を通知しなければなりません。
ただし、全ての監査役が既に当該事項を知っている場合は、この限りではありません。
(1)独立性に関する事項その他監査に関する法令及び規程の遵守に関する事項
(2)監査、監査に準ずる業務及びこれらに関する業務の契約の受任及び継続の方針に関する事項
(3)会計監査人の職務の遂行が適正に行われることを確保するための体制に関するその他の事項