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組織形態の分析について~「コーポレート・ガバナンス白書2019」より

組織形態の分析について~「コーポレート・ガバナンス白書2019」より

「コーポレート・ガバナンス白書2019」(以下、本白書)が東京証券取引所から2019年5月に公表されました。本白書は、我が国企業を巡る近年のコーポレート・ガバナンス改革の進展も踏まえ、分析を行っています。本白書は、関係者が、変貌している我が国の上場会社のコーポレート・ガバナンスの取組状況を概観するための助けとなることを意図して作成されています。

 

組織形態に関する分析結果をみてみましょう

 

1.組織形態の概要

 

組織形態をみると、東証上場会社全体の73.3%(2,635社)が監査役会設置会社であり、続いて2015年の会社法改正で導入された監査等委員会設置会社が24.7%(888社)、指名委員会等設 置会社は2.0%(71社)となっています。

 

市場区分別にみても、各市場ともに監査役会設置会社の占める割合が一番高く、次に監査 等委員会設置会社、指名委員会等設置会社と続くことに変わりはありません。

 

なお、JPX日経400構成会社では指名委員会等設置会社の比率が比較的高く、8.8%を占めています。

 

また、市場第二部においては、監査等委員会設置会社が31.5%とやや高くなっています。

 

外国人株式所有比率でみると、比率が高くなるにつれて、指名委員会等設置会社の比率が 高くなっており、外国人株式所有比率が30%以上の会社では7.0%の会社が指名委員会等設置会社となっています。

 

2.現状のコーポレート・ガバナンス体制の概要

 

コーポレート・ガバナンス報告書の「現状のコーポレート・ガバナンス体制の概要」欄においては、業務執行、監査・監督の方法など、取締役会をはじめとするガバナンス機構に関する現状の体制について、その概要や、業務執行、監督機能等の充実に向けた追加的な施策の内容等を具体的に記載することとなっています。

 

(1)監査役会設置会社

 

監査役会設置会社(2,635社)においては、迅速な意思決定を行うための取締役会以外の体 制として、「経営会議」に言及する会社は48.1%(1,268社)、「常務会」に言及する会社は6.7%(176社)でした。

 

また、監督と執行の分離を進めていくために「執行役員制度」の導入に言及している会社は52.2%(1,375社)でした。

 

この他、「コンプライアンス」、「リスクマネジメント」等の内部統制関連の委員会の設置に言及している会社は19.5%(515社)でした。

 

(2)監査等委員会設置会社

 

監査等委員会設置会社(888社)においては、「経営会議」に言及している会社は46.6%(414社)、 「常務会」に言及している会社は6.0%(53社)、「執行役員制度」に言及している会社は47.4%(421社)でした。

 

また、「コンプライアンス」、「リスクマネジメント」等の内部統制関連の委員会を設置していることに言及している会社は、19.9%(177社)であり、監査役会設置会社と比率に大きな差異はみられませんでした。

 

(3)指名委員会等設置会社

 

指名委員会等設置会社(71社)においては、「経営会議」に言及している会社は43.7%(31社)であるのに対し、「常務会」に言及している会社は存在しませんでした。

 

指名委員会等設置会社においては法定の執行役制度がありますが、執行役のほか、「執行役員制度」に言及している会社は22.5%(16社)でした。

 

また、「コンプライアンス」、「リスクマネジメント」等の内部統制関連の委員会を設置していることに言及している会社は19.7%(14社)であり、監査役会設置会社や監査等委員会設置会社と比率に大きな差異はみられませんでした。

 

(4)監査役会設置会社の監査役による監査

 

監査役会設置会社の監査役による監査に関しては、「監査体制」に言及している会社は12.1% (319社)であり、社内と社外監査役、常勤監査役の人数などが記載されています。

 

また、「監査方針」に言及している会社は17.8%(469社)、「監査基準」に言及している会社は7.1%(186社)であり、監査役監査基準に準拠した監査を行っている旨の記載が多くありました。

 

この他、監査役会の開催状況や、各監査役の活動状況として、重要会議への出席、書類の閲覧、子会社への往査等について言及している会社もありました。

 

また、監査役業務の充実及び実効性の向上を図るため監査役室を設置しているという記載や、監査方針及び監査基準に基づき監査を実施しているという記載もみられました。

 

(5)監査等委員会設置会社における監査等委員会による監査

 

監査等委員会設置会社における監査等委員会による監査に関しては、「監査体制」に言及している会社は8.2%(73社)、「監査方針」に言及している会社は14.0%(124社)、また、「監査基準」に言及している会社は1.9%(17社)でした。

 

(6)指名委員会等設置会社における監査委員会による監査

 

指名委員会等設置会社における監査委員会による監査に関しては、「監査体制」に言及している会社は15.5%(11社)、「監査方針」に言及している会社は15.5%(11社)、また、「監査基準」に言及している会社は5.6%(4社)でした。

 

(7)監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社の監査体制

 

監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社の監査体制は、監査等委員会/監査委員会の社内と社外取締役の人数等の構成を記載するものが多く、各監査(等)委員は監査等委員会 /監査委員会で定めた監査方針、監査基準に基づき、取締役会をはじめとする重要な会議に出席するほか、取締役の業務の執行状況を監査するといった記載が多くみられました。

 

また、監査機能の強化のために監査等委員会事務局に専任のスタッフを配置するといった記載もみられました。

 

3.現状のコーポレート・ガバナンス体制を選択している理由

 

コーポレート・ガバナンス報告書は、組織形態が監査役会設置会社、監査等委員会設置会社又は指名委員会等設置会社のいずれであるか、監査役会設置会社については社外取締役を選任しているか否かに区分して、取締役会をはじめとするガバナンス機構の構成に関して、現状の体制を採用している理由について記載することを求めています。

 

⑴ 監査役会設置会社の場合

 

①概要

監査役会設置会社であって社外取締役を選任している会社(2,553社)は、各社の現状に照らして当該体制を採用している理由を記載すること及び各社における社外取締役の役割や機能を記載することを求められています。

 

社外取締役の役割や機能として、経営陣から独立した立場で、取締役の業務執行の監督、意思決定の適正性を確保するための助言を担っている等の趣旨の記載が多くみられました。

 

②社外取締役

監査役会設置会社であって社外取締役を選任していない会社にも、各社の現状に照らして当該体制を採用している理由を記載することを求めており、上場会社が会社法上の大会社である場合、社外取締役を置くことが相当でない理由を記載することとなっています。

 

監査役会設置会社であって社外取締役を選任していない会社は82社あり、これは監査役会設置会社形態をとっている上場会社の3.2%を占めています。

 

社外取締役を選任していない場合の記載内容としては、要件を満たす適任者の選定が困難、 会社規模からして現取締役会が効率的で意思決定も迅速、取締役相互の牽制が十分、コンプ ライアンス・リスクマネジメント委員会等の内部統制に関する委員会での強化といったものがみられました。

 

この他、業界に対する深い知識や経営に対する識見が十分でない社外取締役を選任した場合、実情に適さない意思決定で取締役会の機能を低下させ無用なコストを及ぼすというような理由もありました。

 

⑵ 監査等委員会設置会社の場合

 

監査等委員会設置会社が当該組織形態を採用した理由の具体的な記載内容として、記載要領では、意思決定の迅速化、経営の透明化、海外投資家の支持率の向上等について、監査役会設置会社形態の時と比較評価することや、これらの機能等を強化するために現在導入を検討している施策の概要、社外取締役の役割や機能を記載することを例示しています。

 

監査等委員会設置会社(888社)が同制度を選択している理由について、「社外」に言及している会社は66.4%(590社)であり、社外取締役による監督機能の強化への言及が多くみられました。

 

一方、意思決定の迅速化(「決定」に言及している会社は50.9%(452社))、権限委譲に伴う業務執行の迅速化(「権限」に言及している会社は11.1%(89社))、監督と執行の分離を明確化(「分離」に言及している会社は9.1%(81社))、執行機能の強化(「執行機能」に言及している会社は4.4%(39社))といった事項への言及は指名委員会等設置会社に比較すると少なくなっています。

 

⑶ 指名委員会等設置会社の場合

 

指名委員会等設置会社が当該組織形態を採用した理由の具体的な記載内容としても、監査 等委員会設置会社と同様、監査役会設置会社形態の時との比較評価等を記載要領において例示しています。

 

指名委員会等設置会社(71社)が同制度を選択している理由をみますと、監査等委員会等設置会社と比べて、監督と執行の分離に関する記載の比率が高くなっています。

 

意思決定の迅速化(「決定」に言及している会社は67.6%(48社))、社外取締役による監督機能の強化(「社外」に言及している会社は66.2%(47社))、監督と執行の分離を明確化(「分離」に言及している会社は64.8% (46社))、権限委譲に伴う業務執行の迅速化(「権限」に言及している会社は31.0%(22社))、執行機能の強化(「執行機能」に言及している会社は21.1%(15社))といったものが多くみられました。

 

4.取締役会の議長の属性

 

コーポレート・ガバナンス報告書においては、取締役会の議長について、設置の有無及び設置している場合はその属性について、⑴社長、⑵会長52、⑶会長・社長以外の代表取締役、⑷社外取締役、⑸その他の取締役、又は⑹なし、から選択することとなっています。

 

東京証券取引所上場会社全社が取締役会の議長を設置しており、その属性の傾向をみると、社長の比率が最も高く、83.1%を占めました。

 

また、会長の比率は15.0%であり、両者の合計は 98.1%と、ほぼすべての上場会社において、社長又は会長のいずれかが取締役会の議長を務めています。

 

なお、会長が取締役会の議長を務めている比率は、市場第一部では21.9%、JPX日経 400構成会社では、40.1%となっており、会社の規模が大きくなるほど、会長が務めている比率が多くなっているといえます。

 

取締役会における議論の活性化や監督と執行を分離し取締役会の監督機能を強化する観点 から、取締役会の議長を社外取締役とすることを求める投資家の声も増してきているものの、今回の調査では社外取締役が議長を務めている比率は0.8%にとどまっており、今後の課題の1 つといえます。

 

なお、JPX日経400構成会社においては、社外取締役が議長を務めている比率が4.0%と他の会社よりも多くなっています。

 

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