「記述情報の開示に関する原則」の内容と有用性~改正開示府令を受けて | 社外財務部長 原 一浩
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「記述情報の開示に関する原則」の内容と有用性~改正開示府令を受けて

「記述情報の開示に関する原則」の内容と有用性~改正開示府令を受けて

2020年3月期以降の有価証券報告書において開示される記述情報及び「コーポレートガバナンス等の状況」に記載される「監査の状況」のうちの一部の項目については、2019年1月に改正された「企業内容等の開示に関する内閣府令」(以下、改正開示府令)が原則適用となり、改正後の規定に基づく開示が行われています。

改正開示府令の適用に合わせて、金融庁は2019年3月19日に、「記述情報の開示に関する原則」を公表しました。

また、「記述情報の開示に関する原則」に加えて「記述情報の開示の好事例集」が金融庁より公表されています。

「記述情報の開示の好事例集」も確認することで、有価証券報告書における記述情報やガバナンス情報の記載内容についての理解がさらに促進されると考えられます。

Ⅰ.「記述情報の開示に関する原則」について

 

1.内容

 

この原則は、企業情報の開示に関する金融審議会「ディスクロージャーワーキング・グループ報告」の提言を踏まえ、財務情報以外の開示情報である、いわゆる「記述情報」について、開示の考え方、望ましい開示の内容や取り組み方をまとめています。

 

2.目的

 

この原則は、記述情報の中でも、投資家による適切な投資判断を可能とし、投資家と企業との深度ある建設的な対話につながる項目である、経営方針・経営戦略等、経営成績等の分析、リスク情報を中心に、有価証券報告書における開示の考え方等を整理することを目的としています。

 

3.性格

 

この原則は、企業情報の開示について、開示の考え方、望ましい開示の内容や取り組み方を示すものであり、新たな開示事項を加えるものではありません。

 

4.有用な点

 

・開示書類の作成・公表に関与する者の自主的な点検

・投資家が企業との対話を行う際の利用

・開示に関するルールやプリンシプルベースのガイダンスの整備

・適切な開示の実務の積み上げ

・企業開示の好事例(ベストプラクティス)を全体に拡大

・ベストプラクティスを、必要に応じ、この原則にも反映

・開示内容の全体のレベルの向上

 

Ⅱ.「総論」についての説明

 

  1. 企業情報の開示における記述情報の役割

 

(1)財務情報を補完し、投資家による適切な投資判断に資する

 

(2)投資家と企業との建設的な対話を促進する

 

(3)企業の持続的な企業価値の向上を図る

 

  1. 記述情報の開示に共通する事項

 

(1)取締役会や経営会議の議論の適切な反映

 

記述情報は、投資家が経営者の目線で企業を理解することが可能となるように、取締役会や経営会議における議論を反映することが求められます。

 

① 考え方

 

①-1 経営に係る決定が行われる取締役会や経営会議における議論の適切な反映

 

ア) 経営方針・経営戦略等

 

イ) 経営成績等の分析(Management Discussion and Analysis)

 

ウ) リスク情報

 

①-2 投資家は、企業の現況の認識や、企業の経営方針・経営戦略等の内容の理解に必要な情報を得る

 

①-3 投資家は、財務情報だけでは判別できない、経営の方向性を理解し、将来の経営成績等の予想の確度をより高めることが可能となる

 

①-4 取締役会や経営会議における議論の適切な開示

 

ア) 企業の経営資源の最大限の活用に向け、成長投資・手許資金・株主還元や資本コストに関した議論

 

イ) 今後の経営の方向性

 

①-5 投資家による適切な投資判断が可能となり、投資家と企業との建設的な対話経て、よりよい経営方針・経営戦略等を確立しうる

 

② 望ましい開示に向けた取組み

 

②-1 経営者は、開示書類作成の早期から、開示内容の検討に積極的に関与し、開示についての方針を社内に示す

 

②-2 担当役員が各部署を統括するなどして、関係部署が適切に連携し得る体制を構築する

 

(2)重要な情報の開示

 

記述情報の開示については、各企業において、重要性(マテリアリティ)という評価軸を持つことが求められます。

 

① 考え方

 

①-1 投資家の投資判断にとって重要か否か、経営者の視点による経営上の重要性も考慮する

 

①-2 企業価値や業績等に与える重要性(マテリアリティ)に応じた説明の順序、濃淡等を考慮する

 

② 望ましい開示に向けた取組み

 

②-1 企業価値や業績等に与える影響度を考慮した記述情報の重要性

 

②-2  読み手が当該情報の重要性を理解できる記述情報の記載

 

②-3 提出日時点における記述情報の重要性の評価

 

(3)セグメントごとの情報の開示

 

記述情報は、投資家に対して企業全体を経営者の目線で理解し得る情報を提供するために、適切な区分で開示することが求められます。

 

① 考え方

 

①-1 それぞれのセグメントにおける事業の状況の適切な把握

 

①-2 多角化によるシナジー効果の創出

 

①-3 経営資源の適切で効率的な配分

 

①-4 企業の事業選択の適切性の理解

 

② 望ましい開示に向けた取組み

 

②-1 財務情報におけるセグメント(報告セグメント)ごとの開示

 

②-2 必要に応じて、経営方針・経営戦略等の説明に適した区分(例えば、事業セグメントや地域セグメント)ごとの情報を開示

 

(4)分かりやすい開示ましい~開示に向けた取組み

 

記述情報の開示に当たっては、その意味内容を容易に、より深く理解することができるよう、分かりやすく記載することが期待されます。

 

① 投資家の分かりやすさを意識した記載

 

内容の理解を促進するために、図表・グラフ・写真等の補足的なツールの利用、前年からの変化の明確な表示等

 

② 適切な見出しや表題、関連する情報を整理

 

③ 継続性が重要な事項について変更が生じた場合

 

変更内容を記載した上で、変更の影響についての説明を記載

 

④ 関連性のある記述情報

 

「経営方針・経営戦略等」と「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」などについては、記載を相互に関連付け

 

⑤ 他の箇所の参照

 

記載内容が同様である又は重複する項目の参照

 

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