経済産業省は、2019年5月に、「SDGs経営/ESG投資研究会」での議論をもとに、企業がいかに「SDGs経営」に取り組むべきか、投資家はどのような視座でそのような取組を評価するのか等を整理した「SDGs経営ガイド」を取りまとめました。
1.SDGs経営ガイド(以下、本ガイド)の構成
本ガイドにおいては、研究会での議論をもとに、「Part1.SDGs-価値の源泉」においてSDGsに関する現状認識を多様な観点から示した上で、「Part2.SDGs経営の実践」において、企業が「SDGs経営」を実践する際に有用な視点を整理しています。
(1)構 成
本ガイドは、以下の内容からなっています。
Part1. SDGs-価値の源泉
I 企業にとってのSDGs
・SDGsは企業と世界をつなぐ「共通言語」
・SDGsは「未来志向」のツール
・SDGs-企業経営における「リスク」と「機会」
・日本企業の理念とSDGs
・ベンチャー企業とSDGs
II 投資家にとってのSDGs~SDGs経営とESG投資~
・投資家を取り巻く環境変化
・長期的な企業価値の評価とSDGs
・SDGs経営を行う企業のパフォーマンス
III マルチステークホルダーとの「懸け橋」
・「SDGsネイティブ」としてのミレニアル世代
・SDGsと従業員/消費者
・「知の総体」としての大学の役割
・「連携」はSDGs経営の重要なカギ
Part2. SDGs経営の実践
I 社会課題解決と経済合理性
・経済合理性を見出し、新たな市場を取りに行く
II 重要課題(マテリアリティ)の特定
・重要課題を特定し、資源を投入する
III イノベーションの創発
・社会課題を解決するイノベーションを「協創」する
・経営者自身が新規事業をリードする
IV 「科学的・論理的」な検証・効果
・「科学的・論理的」な検証・評価を徹底する/させる
・国際標準を、積極的に活用する
V 長期視点を担保する経営システム
・SDGs経営を「仕組み」で持続させる
VI 「価値創造ストーリー」としての発信
・「価値創造ストーリー」を描き、発信する
・「選ばれたい人」に刺さるメッセージを発信する
・的確に伝え、対話し、更なる価値創造へ
(2)本ガイドの主なメッセージ
① 「SDGsネイティブ」であるミレニアル世代のプレゼンスが投資家・従業員・消費者として向上する中、SDGs経営は投資・人材・顧客獲得の重要なカギとなる
② SDGs経営で、社会課題解決の中に経済合理性を見出すことで、取り残されてきた市場を新たに獲得できる
③ 大企業とベンチャー・アカデミアの連携や長期の研究開発投資を通じて、社会課題を解決するイノベーションを「協創」できる
④ SDGs経営を企業の「価値創造ストーリー」に位置付けたうえで、「選ばれたい人」に的確に発信することが重要である
⑤ 科学的・論理的な検証と評価を徹底するとともに、国内外ステークホルダーにも浸透させるように働きかけていくべきである
⑥ 「三方よし」の精神等もあり、「SDGs経営」を当然のものと考える日本企業は多い
2.企業にとってのSDGs
(1)SDGsは企業と世界をつなぐ「共通言語」
①ESGやSDGsという世界的なフレームワークを用いて、コミュニケーションすることにより、日本企業への資金流入の促進が期待できる
②SDGsに対するベンチマーキングが必要である
(2)SDGsは「未来志向」のツール
100年先を見据えて、これまで誰も取り組んでこなかった社会課題に経営者がどのように取り組むかがSDGs経営の本質である
(3)SDGs-企業経営における「リスク」と「機会」
①SDGsに取り組まないことは、リスクとなる
②SDGsは挑むべき成長の機会である
③SDGsに対する取り組みは投資ととらえる
④EVA経営をアレンジする必要がある(注)
(注)Economic Value Addedの略。 経済付加価値。 毎年のオペレーションから入るリターンから投下資本に対して発生している資本コストを差し引いた経済的価値を示す。
(4)日本企業の理念とSDGs
①「三方よし」のように、SDGsの多くの考え方は、日本企業や商慣習と親和性が高い
②会社が世のため人のために存在するという考え方は、日本では脈々と受け継がれている
③日本企業は、長い間SDGsに取り組んできた
(5)ベンチャー企業とSDGs
ミッションそのものがSDGsと平仄を合わせている事例がある
3.社会課題解決と経済合理性
新しい技術やノウハウを動員することによって、課題解決とビジネスを両立させることは、SDGs経営の体現である。
(1)経済合理性がないと判断される市場に対しては、長期的視点を持つことが非常に重要である
(2)経済合理性を生み出すイノベーションが重要である
4.イノベーションの創発
(1)社会課題を解決するイノベーションを「協創」する
①イノベーションで社会課題を解決することは、企業にとっても大きな機会であり、ビジネスチャンスになる。
②新規事業に取り組む際に、コア技術が足りなければ、オープンイノベーションやアカデミアとの連携も必要である。
③長期的視座に立った研究開発も重要である。
(2)経営者自身が新規事業をリードする
経営者には、可能性のある新たなチャレンジを見極めて、自らがその事業をリードしていく役割が求められる。