パリ協定の目標実現に向けて~「クライメート・トランジション・ファイナンスの考え方」 | 社外財務部長 原 一浩
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パリ協定の目標実現に向けて~「クライメート・トランジション・ファイナンスの考え方」

パリ協定の目標実現に向けて~「クライメート・トランジション・ファイナンスの考え方」

経済産業省は「環境イノベーションに向けたファイナンスのあり方研究会」を設置し、2020 年 3 月に「クライメート・トランジション・ファイナンスの考え方」をとりまとめました。

 

1.背景

 

(1)令和2年から実行フェーズに入るパリ協定に基づき気候変動対策を着実に実施していくための環境整備が重要である。

 

(2)世界的に、アジア等の新興国を中心としてパリ協定の目指す長期目標の実現に向けて莫大な規模の投資が必要となる。

 

(3)これらの投資の促進が急務である。

 

(4)グリーン・ボンド等を促進していく従来の取り組みに加え、以下の点を踏まえることが重要である。

 

① 低炭素化に資するより幅広い分野に投資を促進する

 

② 真に世界全体で温室効果ガスの排出を削減していくために、グローバルで各産業部門における低炭素化を図っていく必要がある

 

③ 低排出に向けた適切な取り組みや改善の行われている分野に資金を促す

 

④ 対炭素化・脱炭素化に向けた長期的な研究開発等を促す

 

⑤ グローバル・バリューチェーン全体、ライフサイクル全体で温室効果ガスの排出削減を促す

 

(5)パリ協定の目標の実現に向けた着実な以降に関する基準を策定することで、こうした分野へのファイナンスの流れを促進していくことが必要である。

 

2.基本的な考え方

 

(1)再生可能エネルギー等の既に脱炭素化・低炭素化の水準にある活動へのファイナンスを促進していくこととあわせて、温室効果ガス排出産業部門が脱炭素化・低炭素化を進めていく移行の取組(トランジション)へのファイナンスについても、促進していくことが重要である。

 

(2)トランジションへのファイナンスは、パリ協定の目標及び各国のパリ協定に基づく削減目標に向けて移行を進めている事業へのファイナンスと位置づける。

 

(3)具体的にどのような事業が該当するかは、各国・地域ごとに異なりうる。

 

(4)「トランジションへのファイナンス」の考え方を整理するにあたっては、以下を提案する。

 

① 国際的な原則は、特定の産業や技術を排除することなく、多様な国々・地域に適用しうる包摂的で柔軟なアプローチを採用しつつ、

 

② 詳細については各国・地域毎に実情に応じた考え方が深められていくべき

 

3.国際的な原則を検討するにあたっての提案

 

一般的な形での原則を提案した内容。実際の運用にあたっては、各国・地域において詳細を検討していく。

 

(1)パリ協定との整合性に関する基準

 

パリ協定及び各国の削減目標の達成に向けた移行へのファイナンスであること。

 

(2)事業実施主体に関する基準

 

① 中長期的なビジョンや行動計画等を示すなど、移行への取組に積極的に取り組んでいる事業主体へのファイナンスであること。

 

② 温室効果ガス削減目標を実際に達成しているか今後の達成目標に向けて取り組みを実施している事業主体へのファイナンスであること。

 

(3)対象事業に関する基準

 

① 温室効果ガス排出産業部門において国際的または当該地域で、温室効果ガス低排出の観点でベストパフォーマンスとされる水準の実現・実施のための事業に対するファイナンスであること。

 

② 温室効果ガス排出産業部門において国際的または当該地域で、温室効果ガス低排出の観点でベストパフォーマンスとされる水準の実現・実施のための製品に関連・貢献するファイナンスであること。

 

4.その他、考慮することが望ましい観点

 

  • グローバル・バリューチェーンを有する産業の国際的な温室効果ガス排出削減への貢献の観点

 

  • ライフサイクル全体での排出削減の観点

 

  • 環境以外のSDGs等の環境目的への貢献、影響の観点

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