事業性評価における定量分析 | 社外財務部長 原 一浩
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事業性評価における定量分析

事業性評価における定量分析

企業の将来性、技術力を的確に評価し、事業価値を見極め、経営課題を発見・把握するための手法として、定性分析と定量分析があります。

 

1.定量分析とは

 

定量分析とは、企業の決算書などを使って、安全性や収益性などの様々な切り口から企業の財務内容を分析する手法です。

定量分析を実施する際には、決算書の数値が信頼できるものなのかも考慮しなければなりません。決算書が、いわゆる粉飾決算である場合には、定量分析の結果は事実と異なることになります。

また、意図していなくても、会計に関する知識不足により、決算が誤っている場合もありますので、会計基準に従った処理が行われているか確認する必要があります。

 

各分析項目の意味合いを理解して、分析結果から会社の強み・弱みを理解することが重要となります。

 

2.定量分析の手法

 

定量分析は、安全性、収益性、成長性、返済能力の観点から行われます

 

(1)安全性分析は、資金調達のバランス、支払い能力などについて、主に、貸借対照表を分析します。

 

①自己資本比率

総資産に対する自己資本の割合です。返済の必要のない自己資本が多い方が、経営が安定していると考えられます。

②ギアリング比率

自己資本に対する有利子負債の割合です。資金調達のバランスを見ることができます。

③固定長期適合率

固定資産と固定負債及び自己資本の割合です。

固定資産を、長期的な資金源泉である固定負債と純資産でどの程度まかなっているかを示すものです。

④流動比率

流動資産と流動負債の割合を示す、短期的な支払い能力を見る指標です。

 

(2)収益性分析は、各利益率や、利益計上の持続性などについて、主に、損益計算書を分析します。

 

①売上高経常利益率

企業の経常的な収益性を示す指標です。

②総資本経常利益率

総資本に対する経常利益の割合で、収益性と効率性の両方を示す指標となります。

③収益フロー

過去3年間の税引き前利益が、継続して計上されているかを見ます。

あわせて、キャッシュ・フローがプラスになっているかについても確認します。

 

(3)成長性分析は、売上や利益の増加率、自己資本額などを、総合的に分析します。

 

①経常利益増加率

経常利益は、営業利益と営業外損益から構成されますので、増加の原因分析を行う際には、それぞれの内容を理解する必要があります。

②自己資本額

自己資本は、企業の財務基盤の基本的数値ですので、企業規模と比べて適切かどうか判断する必要があります。

③売上高

売上高の推移も、成長性を図るうえで、重要な指標となります。

 

(4)返済能力分析は、キャッシュ・フローの額や借入金とのバランスなど、キャッシュ・フロー計算書を分析します。

①債務償還年数

有利子負債を営業キャッシュ・フロー(営業利益+減価償却費)により何年で返済できるかを示す指標です。

②インタレスト・カバレッジ・レシオ

金利支払い前利益が、支払利息の何倍であるかを示す指標です。倍数が高いほど、利払い能力が高いことになります。

③キャッシュ・フロー

簡便的なキャッシュ・フローは営業利益に減価償却費を足したもので、借入金返済の原資となるものです。

 

3.まとめ

定性分析は、評価者によって結果が異なる場合がありますが、定量分析の数値は、基本的には、評価者による結果のばらつきはないとされています。

 

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