「監査法人のガバナンス ・ コー ドに関する有識者検討会」は、平成29年3月31日に「監査法人の組織的な運営に関する原則」(監査法人のガバナンス・コード)(以下、本原則)を公表しました。
Ⅰ 概要
会計監査は資本市場を支える重要なインフラであり、今後の会計監査の在り方について幅広く検討するため、平成27年10月、「会計監査の在り方に関する懇談会」が設置されました。
平成28年3月にその提言が取りまとめられましたが、そこでは、大手上場企業等の監査を担う監査法人の組織的な運営に関する原則を規定した「監査法人のガバナンス・コード」の策定が提言されました。
これを受けて、平成28年7月、有識者検討会が設置され、「監査法人の組織的な運営に関する原則」を取りまとめることとしたものです。
本原則は、組織としての監査の品質の確保に向けた5つの原則と、それを適切に履行するための指針からなっています。
以下のことを行うことなどが規定されています。
・ 監査法人がその公益的な役割を果たすため、トップがリーダーシップを発揮すること
・ 監査法人が、 会計監査に対する社会の期待に応え、 実効的な組織運営を行うため、経営陣の役割を明確化すること
・ 監査法人が、監督・評価機能を強化し、そこにおいて外部の第三者の知見を十分に活用すること
・ 監査法人の業務運営において、法人内外との積極的な意見交換や議論を行うとともに、構成員の職業的専門家としての能力が適切に発揮されるような人材育成や人事管理・評価を行うこと
・ さらに、 これらの取組みについて、分かりやすい外部への説明と積極的な意見交換を行うこと
Ⅱ 本原則の内容
1.監査法人が果たすべき役割
企業の財務情報の的確な把握と適正な開示の確保は、経済活動の支えであり、会計監査は、日本経済の持続的成長につなげていく前提となる重要なインフラであるとしています。
その役割を果たすために、以下のことをすべきとしています。
(1)価値観の共有
(2)行動指針
(3)職業的懐疑心の動機づけ
(4)解放的な組織文化・風土
(5)非監査業務の位置づけ
2.組織体制
法人の組織的な運営のためにすべきことを挙げています。
(1)実効的なマネジメント機関の設置
(2)経営機関の役割の明確化
- 監査品質
- 監査上のリスク
- 人材育成、人事管理
- ITの有効活用
- 経営機関の構成員
3.経営機関の実行性評価
監査法人の経営から独立した立場で、経営機能の実効性を監督・評価する機能の確保を求めています。
(1)監督・評価機関の設置
(2)監督・評価機関の構成員に独立性を有する第三者を選任
(3)第三者の役割明確化
- 実効性評価
- 構成員の選退任、評価等
- 内部、外部通報の検証、評価
- 資本市場の参加者との意見交換
4.業務運営
(1)組織的な運営を効率的に行うための業務体制の整備を求めています。
- 監査品質の持続的向上のため、経営機関の考え方の監査現場までの浸透
- 人材育成、人事管理・評価・報酬の方針策定
- バランスの取れた構成員の配置
- 幅広い知見・経験を得る機会
(2)被監査会社との十分な意見交換に留意すべきとしています。
(3)内部・外部通報情報の活用と通報者の不利益払拭に留意すべきとしています。
5.透明性の確保
(1)被監査会社、株主等の資本市場の参加者が監査法人を適切に評価できるよう、透明性の確保を求めています。
- 本原則の適用状況や品質向上に向けた取り組みの説明
- トップの姿勢
- 共通の価値観、行動指針
- 非監査業務の位置づけ
- 経営機関の構成、役割
- 監督・評価機関の構成・役割
- 実効性評価
(2)監督・評価機関の構成員の第三者の知見を活用すべしとしています。
(3)実効性の定期的評価を行うこととしています。
(4)資本市場参加者との意見交換を行うこととしています。