経営の重要課題であり企業の長期的価値を高める、ダイバーシティ&インクルーシブネス | 社外財務部長 原 一浩
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経営の重要課題であり企業の長期的価値を高める、ダイバーシティ&インクルーシブネス

経営の重要課題であり企業の長期的価値を高める、ダイバーシティ&インクルーシブネス

2021年3月に経済産業省は、【改訂版】ダイバーシティ経営診断シートの手引き「多様な個を生かす経営へ~ダイバーシティ経営への第一歩~」を公表しました。

 

Ⅰ 「多様な個を活かす経営=ダイバーシティ経営」の有効性

 

1.ダイバーシティ経営とは

 

「ダイバーシティ経営」は、

 

①経営戦略を実現するうえで不可欠である多様な人材を確保し、

②そうした多様な人材が意欲的に仕事に取り組める組織風土や働き方の仕組みを整備することを通じて、

③適材適所を実現し、

④その能力を最大限発揮させることにより

⑤「経営上の成果」につなげること

 

を目的としています。

 

(1)ダイバーシティ経営の定義

 

ダイバーシティ経営とは、

 

①多様な人材(注1)を活かし、

②その能力(注2)が最大限発揮できる機会を提供することで、

③イノベーションを生み出し、 価値創造につなげている経営(注3)

 

としています。

 

(注1) 「多様な人材」とは、性別、年齢、人種や国籍、障がいの有無、性的指向、宗教・信条、価値観などの多様注だけでなく、キャリアや経験、働き方などの多様性も含みます。

 

(注2)「能力」には、多様な人材それぞれの持つ潜在的な能力や特性なども含みます。

 

(注3) 「イノベーションを生み出し、価値創造につなげている経営」とは、組織内の個々の人材がその特性をいかし、いきいきと働くことの出来る環境を整えることによって、「自由な発想」が生まれ、生産性を向上し、自社の競争力強化につながる、といった一連の流れを生み出しうる経営をいいます。

 

(2)ダイバーシティ経営の4つの効果

 

①プロダクト・イノベーション

 

対価を得る製品・サービス自体を新たに開発したり、改良を加えたりするもの

※多様な人材が異なる分野の知識、経験、価値観を持ち寄ることで、「新しい発想」が生まれます。

 

②プロセス・イノベーション

 

製品・サービスを開発、製造、販売するための手段を新たに開発したり、改良を加えたりするもの(管理部門の効率化を含む)

※多様な人材が能力を発揮できる働き方を追求することで、効率性や創造性が高まります。

 

③外的評価の向上

 

優秀な人材の獲得、顧客満足度の向上、社会的認知度の向上など

※多様な人材を活用していること、およびそこから生まれる成果によって、顧客や市場などからの評価が高まります。

 

④職場内の効果

 

社員のモチベーション向上や職場環境の改善など

※自身の能力を発揮できる環境が整備されることでモチベーションが高まり、また、働きがいのある職場に変化していきます。

 

(3)ダイバーシティ経営に取り組む意義

 

①ダイバーシティとは

 

「女性」「外国人」「高齢者」「障がいのある人」といった表層的な多様性だけが「ダイバーシティ」ではなく、「働き方」や「キヤリア」、「経験」といった一見外からわからない内面/深層的な多様性も含まれます。

 

②ダイバーシティ経営とは

 

多様な人材が能力を発揮し価値創造を創出する「ダイバーシティ経営」は、「経営者の取組」、「人事管理制度の整備」、「現場管理職の取組」の3拍子がそろうことにより、彼らが活躍できる「組織風土」が醸成され、成果につながっていくことが分かってきました。

 

「ダイバーシティ経営」を推進している企業では、新入社員や中途社員の採用、正社員の定着、人材の能力開発の状態、 正社員の仕事に対する意欲、会社や仕事に対する満足度において「良い/うまくいっている」と回答する割合が高くなっています。

 

加えて、売上高や営業利益も高いことは、定着した人材が持てる能力を発揮できる職場環境があるため、と考えられます。

 

どのような人材、組織で自社を発展させていくかを考え、社員一人ひとりが活躍できる組織風土を醸成することが「ダイバーシティ経営」の実現には不可欠だとしています。

 

2.ダイバーシティ経営の実現に必要なインクルージョン

 

(1)インクルージョンの重要性

 

多様な人材が職場にいることは重要ですが、人が多様化しただけでは新たな価値は生まれません。

その多様な人材が能力を発揮できる「組織風土」、すなわち『インクルージョン風土』をつくっていくことが重要です。

 

(2)インクルージョンの意義

 

『インクルージョン』とは、一人ひとりが「職場で尊重されたメンバーとして扱われている」と認識している状態を指します。

そのためには、職場メンバーの一員として認められることと、その人の持つ独自の価値が組織に認められていることが必要です。

 

多様な人材が、それぞれ自分の「居場所」を実感できている状態が「インクルージョン」であると言えます。

 

 

3.ダイバーシティ経営が成果に結びつくまでのプロセス

 

多様な人材が活躍して能力を発揮し、組織にとっての成果(価値創造)を生み出すまでには①→②→③→④のステップが必要です。

しかし、これは短期でできるものではありません。

特に②の「経営者の取組」が「人事管理制度の整備」や「現場管理職の取組」に反映され浸透するまでには②→③→②を繰り返していく過程で3拍子がそろうようになり、多様な人材が尊重され、その独自性を発揮できる「組織風土=インクルージョン」が醸成され成果につながっていくと言えます。

 

 

4.企業が成果を出すまでに必要な要素とプロセス

 

(1)経営姿勢・理念

 

「ダイバーシティ経営」に限らず、企業が成果を出すまでには、企業としての考え方である「経営姿勢・経営理念」の明示が必要です。

「ダイバーシティ経営」は人材が多様であるからこそ、組織として1つの方針に基づき活動するための「経営姿勢・理念」が重要になります。

 

(2)経営戦略、人事管理制度、職場マネジメント

 

「経営姿勢・理念」に基づく「経営戦略」を設定したうえで、それらの実現に向けた各部門、各部門に所属する職場メンバーの役割を明確にし、一人ひとりの仕事を付与することで、各人が果たすべき役割を理解して持てる能力を発揮し、成果を生むと考えられています。

また、経営戦略の実現に必要な人材の要件の明確化と、各人が的確に能力を発揮していくための施策である「人事管理制度」の活用、それらを運用する現場管理職の「職場マネジメント」により、一人ひとりが確実に能力を発揮することが可能になります。

 

 

Ⅱ 改訂版ダイバーシティ経営診断ツールと診断シート

 

1.改訂版ダイバーシティ経営診断ツールとは

 

(1)改訂版ダイバーシティ経営診断ツールの概要

 

「改訂版ダイバ—シティ経営診断ツール」は、「改訂版ダイバーシティ経営診断シー卜」と「改訂版手引き(本資料)」によって構成される、中堅・中小企業の「ダイバーシティ経営」の実現に必要な現状分析・課題の明確化・対応策の検討・実行に寄与するツールです。

 

(2)「改訂版ダイバーシティ経営診断ツール」の主な使い手

 

主な使い手は、企業経営、人事管理の構築、職場マネジメントに係る専門家としています。

各分野の専門家が各企業の現状を把握し「どの分野から取り組んでいくか」「何から取り組んでいくか」などを各社とコミュニケーシヨンをとりながら決め、各取組分野に精通した専門家と連携しながら「ダイバーシティ経営」の実現に取り組んでいくことを念頭に置いています。

 

2.「改訂版ダイバーシティ経営診断シート」について

 

(1)目的

 

①「改訂版ダイバーシティ経営診断シート」では、各社の「ダイバーシティ経営」の実現に向けた現状を見える化することを目的としています。

 

②シー卜は多様な人材の活躍に必要な要素別に設問が設けられ、各カテゴリーの平均点を比較することで各社の「強み」「弱み」を把握することができます。

なお、この平均点は各社のカテゴリー別の強みと弱みを把握することを目的としており、他社と比較するものではありません。

 

(2)成果

 

①「強み」、「弱み」の把握により、ダイバーシティ経営の実現に向け、取り組んでいくべき優先順位を把握することができます。

 

②各設問の取組を推進しながら、経年でカテゴリーとの点数を見ていくことで達成度やさらなる課題への深堀が可能になります。

 

③経年で実施する「改訂版ダイバーシティ経営診断シー卜」を蓄積しておくことにより、一定年数が経過した後に「(経営者の取組・人事管理制度の整備・現場管理職の取組のうち)どのような取組がダイバーシティ経営に寄与したのか」、「(経営者の取組・人事管理制度の整備・現場管理職の取組 の)3拍子と成果の関連性」などが分析可能になり、より実態に即した政策立案(Evidence Based Policy Making : EBPM) が可能となります。

 

(3)活用方法

 

①各カテゴリーの強み弱みの把握

カテゴリーごとの達成状況を基に、ダイバーシティ経営の実現に向けた自社の「強み」と「弱み」を理解し、取組の優先順位を判断することができます。

 

②経年変化の把握

定点観測期間を各社で設け、過去の結果と比較することにより、設定した目標の進埗を確認したうえで、さらに対応策を検討することができます。

 

③診断シートを経営者と作成した場合と、社員と作成した場合との記入結果の比較

経営者と社員とでそれぞれ診断シー卜を作成し、各取組に対する両者の認識ギャップをみることで、より経営者と社員のコンセンサスが取れた取組を実施することができます。

 

3.改訂版手引きについて

 

(1)改訂版手引きの概要

 

本手引きは、外部のアドバイザーが中小企業の経営者などと対話しながら、経営者が自社の人材の活躍状況を把握しこれからの組織としての取組を検討できるよう取りまとめられたものです。

 

(2)具体的内容

 

具体的には、各社が「ダイバーシティ経営」に取り組むにあたり、「なぜ『ダイバーシティ経営』に取り組むのが良いのか」といった企業からの疑問に的確に回答できる知識や、いざ「ダイバーシティ経営」に取り組むときに「どこから取り組むのか」を明らかにし説明できるよう、解説が入れられています。

 

(3)基本的活用方法

 

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