2019年4月に中小企業白書・小規模企業白書(以下、本白書)が中小企業庁から公表されました。
Ⅰ 2019年版中小企業白書・小規模企業白書の骨子
1.「令和時代の中小企業・小規模事業者の活躍に向けて」のサブタイトルがつけられ、以下の点を指摘しています。
(1)中小企業・小規模事業者にとって、人口減少・少子高齢化が最大の課題としています。
(2)今回は、新時代を視野に入れ、①経営者の世代交代と、②中小企業・小規模事業者に期待される自己変革に焦点を当てています。
①経営者の世代交代については、事業承継・経営資源の一部承継、多様な創業について分析・解説をしています。
②自己変革については、構造変化に対応する挑戦やそれを支えるステークホルダーとの互恵関係について分析・ 解説をしています。
2.経営者の世代交代に絞って、その骨子を見てみましょう。
(1)経営資源の引継ぎ
①全部継承:
親族内外の類型を網羅した総合的な支援施策を活用し、多くの質の高い事業承継を早めに実現しました。
②一部継承:
仮に廃業する場合でも、人材や設備等の貴重な経営資源を意欲の高い次世代の経営者に引き継ぐことが期待されます。
(2)創業
①経営資源の譲受け:
初期費用の低い創業の促進が期待されます。
②副業・フリーランス:
クラウド等のICT技術の発展や働き方改革が進展し、リスクやコストの低い創業も容易になりつつあります。
Ⅱ 2019年版中小企業白書・小規模企業白書の要点
経営者の世代交代に焦点を当てて本白書の要点を見てみましょう。
1.親族内承継の支援措置は大幅に前進。親族外承継により新事業の展開も期待される。
(1)これまで、法人向け、個人事業者向けに、贈与税や相続税の負担をゼロにする事業承継税制を措置してきました。親族内承継の支援措置は、大幅に前進しました。
(2)今後は、親族外承継も一層推進することが重要です。旧経営者の負担が軽減されるほか、新経営者による新たな事業展開も期待されます。
2.廃業時に経営資源を引き継ぐことは、旧経営者・起業家の双方にとって有益。
(1)やむを得ず廃業する場合でも、経営資源の一部を有償で譲渡すれば、経営者は、廃業費用の一部を賄うことが可能となります。
(2)事業を素早く立ち上げようとする場合、他者から経営資源を引き継ぐ形での起業は有効ですが、実際に引き継げた者は限定的です。
(3)起業促進の観点からも、部分的な事業承継として、経営資源の引継ぎを進めることが必要です。
3.比較的簡単に起業できるフリーランス・副業による創業を促進することも重要。
(1)クラウドなどのIT技術の発展や働き方改革の進展によって、フリーランスや副業など創業の裾野が広がるなど、個人が比較的簡単に創業できるチャンスが到来しています。
(2)まずはフリーランス・副業で起業し、その後、事業を拡大するような事例も存在しています。
起業の一形態として、フリーランス・副業による創業を促進することも重要です。
※ここでの「フリーランス」とは、特定の組織に属さず、雇用・店舗なし、技術技能の提供で成り立つ事業を営む者、「副業」とは、雇用される傍ら、事業を営むことをいっています。