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事業計画の策定時に押さえておくべきポイント~事業計画の形骸化を抑えるために

多くの企業で事業計画が策定されていますが、事業計画の形骸化リスクを抑えるために、事業計画策定時に押さえておくべきポイントがあります。

 

1.計画策定の意義

 

事業計画は、下記のようなメリットがあると考えられます。これらの点を意識して計画を策定するだけでも、計画の有用性は高まると考えられます。

 

(1)経営管理の強化

 

目標とする数値が存在することで、実績が計画と乖離した場合の要因分析が可能となり、次に打つべき施策・アクションの検討が容易になります。

 

(2)必要アクションの明確化

 

経営目標が示されることで、計画達成に向けた施策が具体化されるため、いつ、誰が、何をすべきか等の社内での必要なアクションを具体的に定めることが可能となります。

 

(3)関係者の合意形成

 

経営目標やビジョンを可視化した事業計画を社内外の関係者に提示し、当該計画に対して会社がコミットメントすることで、関係者の合意形成が促進され、必要な施策を実行しやすくなります。

 

2.計画策定のプロセスと留意点

 

計画策定における各プロセスの主な作業内容について実務的に留意が必要なポイントがありまます。

 

(1)目的の明確化

 

あらかじめ事業計画策定の目的は定まっていることが多いと想定されますが、策定目的により、計画書内で特に注力、強調するべき点は異なってくるため、計画策定を始める前段階で事業計画の策定目的を明確化しておくことが望ましいと考えられます。

 

(2)プロジェクトチームの組成

 

計画策定の目的を明確化した後は、計画策定を推進するメンバーを選定します。

トップダウンによる計画策定が効果的なケースもありますが、多くの場合、目標がお仕着せとなり、現場の主体性が欠如してしまう傾向にあります。

そのため、ある程度現場に近い人材(現場の実情を理解し、現場と意思疎通できる人材)や次期経営幹部候補など、計画実行を見据えた人選を行うことが効果的です。

 

(3)現状分析

 

現状分析が不十分なまま計画策定を行った場合、地に足の着かない目標設定がされ、結果的に、計画の形骸化に陥りやすくなります。

計画策定を本格化する前に社内外の状況を客観的に分析し、市場や競合の動向、社内の強み・弱み、経営課題などを改めて整理しておくことで、現実感のある目標設定が可能になります。

 

(4)目標の設定

 

現状分析を踏まえ、事業計画において達成を目指す定性面・定量面の目標を設定します。

現実感のある目標設定が望ましいのですが、現状や現場の声だけにとらわれてしまうと、過度に保守的な目標設定がされるケースがあるため、チャレンジングな目標との間でバランス感覚を持って検討することも必要と考えられます。

 

(5)施策の検討

 

前項で設定した目標達成に向けて、各種施策を具体化すると共に、各施策を幾つかのアクションに分解し、誰が、いつまでに、何を実施するかをまとめたアクションプランをセットで検討します。

アクションプランを作成することで、事業計画実施段階で、各施策が責任者不在のまま放置されるリスクが軽減化されると共に、作成の過程を通じて、各責任者の事業計画に対する主体性を高める効果が期待されます。

 

(6)計画の取りまとめ

 

これまで検討してきた各施策・アクションプラン、計画数値等を取りまとめ、事業計画書を作成していきます。

その際、各施策実施に伴う期待効果と計画数値の整合性が取れているか、最終的に実現可能な計画になっているか等を中心に確認作業を行います。

 

(7)モニタリング

 

計画が形骸化している多くのケースでは、策定後のモニタリングが不十分または未実施となっています。

計画策定後も、事業計画の進捗状況に関する定期的な報告体制を整備し、計画と実績の間で乖離が生じた場合は早期の原因分析、対応策の検討を行うことで、事業計画の着実な実行が担保されやすくなります。

 

TCFD による提言~策定の経緯、提言の特徴、リスクマネジメント、開示すべき情報

1.経緯

(1)気候変動

昨今、豪雨や台風といった自然災害が地球規模で増加しており、その影響は企業にとっても無視できないレベルにまで拡大しています。

このように激甚化する自然災害の一因と推測されているのが、地球温暖化です。地球温暖化とは、温室効果ガスに起因する地球の平均気温上昇という現象であり、国連気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change:IPCC)によると、今世紀末にはさらに0.3℃~4.8℃の範囲で上昇するとされています。

この気候変動に伴うさまざまなリスクが懸念されており、世界経済フォーラムがダボス会議の開催に合わせて毎年公表している「The Global Risks Report」の2018年版でも、発生可能性が高い負のリスクとして上位五つの中の一つに挙げられています。

 

(2)投資への影響

 

このように、気候変動に関連するリスクの重要性は世界的に高まっており、投資の世界においても気候変動リスクに関する情報開示を企業に求める機運が高まっています。

急速に高まる気候変動リスクは投資行動にも影響を及ぼしています。

具体例として、座礁資産を懸念した投資引き揚げ(ダイベストメント)の動きが挙げられます。座礁資産とは、市場環境や社会動向の劇的な変化によって価値が大きく毀損(きそん)し、投資資金が回収できなくなる資産を指します。

気候変動対応としてゼロ・カーボンの実現が求められる社会では、温室効果ガスを排出する化石燃料に関わる資産は価値が無くなってしまうため、座礁資産に該当します。

このため、世界各国で次々と年金基金や金融機関が投資を引き揚げ始めています。日本でも、生命保険業界を中心に同様の動きが起きています。

 

(3)TCFD提言

 

このように、企業の気候変動への対応が投資意思決定を左右し得る状況を踏まえ、TCFDは、整合性のある「金融市場が気候変動リスクを理解する一助となる開示」の提示を目指し、G20の財務大臣・中央銀行総裁会合コミュニケの要請を受けた金融安定理事会(Financial Stability Board:FSB)によって15年に設置されました。
1年半あまりの検討の後、気候関連財務情報開示タスクフォース(Task force on Climate-related Financial Disclosure:TCFD)による提言が2017年6月に公表されました。TCFDが公表した提言は、FSBを通じて同年のG20サミットに報告されました。

 

2.TCFDコンソーシアム

2015 年12 月に採択されたパリ協定を受け、金融業界を中心に、気候変動が投融資先の事業活動に与える影響を評価する動きが世界的に広まっています。
このような中で、G20財務大臣及び中央銀行総裁の意向を受け、金融安定理事会(FSB)が設置した「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD; Task Force on Climate-related Financial Disclosures)」は2017年6月に最終報告書(以下「TCFD提言」)を公表しており、我が国においてもTCFD 提言への対応に向けた機運が高まっています。

 

このような背景の下、わが国では、2019年5月27日にTCFDコンソーシアム(以下「コンソーシアム」)の設立総会が開催されました。コンソーシアムでは、企業の効果的な情報開示や、開示された情報を金融機関等の適切な投資判断に繋げるための取り組みについて議論が行われる予定です。

 

3.TCFD提言

 

(1)提言の特徴


提言の特徴として、以下が挙げられます。

①対象は債券、株式の発行主体全てとなり、企業のほか、公的/民間年金基金、財団も含んでいる。

 

②金融セクターおよび一部の高リスク非金融セクター(エネルギー、運輸、材料・建築、農業・食品・木材製品)に対してはセクター向け補助ガイダンスが提供されており、より具体的な実践が求められる。

 

③気候変動に関するリスクと機会の開示を求めている。気候変動リスクは、移行リスクと物理リスクに分類される。

 

④財務書類における開示を求めている。このため、開示情報には適切な内部統制・品質管理が求められる。

 

⑤先見性のある情報をステークホルダーに提供するため、気候変動によって自社がどのような影響を受けるのか想定し得るシナリオを、長期的に分析することが推奨されている。

 

(2)気候変動のリスクマネジメント

 

TCFDは、気候変動に関するリスクと機会の特定および管理を既存のリスクマネジメントシステムに組み込むことの重要性を強調しています。

 

 

(3)開示すべき情報

 

TCFDの提言は「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」から構成されており、それぞれのテーマにおいて開示すべき情報が示されています。

 

①ガバナンス:気候関連リスク・機会に係るガバナンス体制について開示する

 

②戦略:気候関連リスク・機会がビジネス・戦略・資金計画に与える影響について開示する

 

③リスク管理:気候関連リスクをどのように特定・評価及び管理しているかについて開示する

 

④指標と目標:気候関連のリスク・機会を評価・管理する指標と目標について開示する

 

 

このように、気候関連リスク・機会を経営の中核要素に組み込んで報告していくことで、株主・投資家は気候変動が企業にもたらす財務的インパクトの内容とボリューム、そして企業がどのようにそれを把握し、経営の中で管理しているのかを知ることができます。

 

(4)今後の対応

 

TCFDの提言が示すフレームワークに即した情報開示を実現するためには、既存のガバナンスやリスクマネジメントプロセスの変更を伴うため、時間や人材を含むさまざまなコストが必要となります。

気候関連リスク・機会は、社会・環境要因を配慮したESG投資や社会的責任投資SRIにとどまらず、メインストリームの投資家においても重視されるファクターとなっています。

この流れは、低炭素社会への移行が進むにつれ、ますます強まることが予想されますので、気候変動リスクの開示に向けて迅速な対応が望まれます。

上場子会社のガバナンスの在り方~独立社外取締役の役割、子会社の指名委員会・報酬委員会について

経済産業省は、「コーポレート・ガバナンス・システム研究会(CGS研究会)(第2期)」における議論に基づき、「グループ・ガバナンス・システムに関する実務指針」(グループガイドライン)を策定し、2019年6月28日に公表しました。

 

1.「グループ・ガバナンス・システムに関する実務指針」(以下、本ガイドライン)の構成

 

本ガイドラインの構成は以下のとおりです。

 

1.はじめに(本ガイドラインの目的、位置付け、対象等)(第1章)

2.グループ設計の在り方(第2章)

3.事業ポートフォリオマネジメントの在り方(第3章)

4.内部統制システムの在り方(第4章)

5.子会社経営陣の指名・報酬の在り方(第5章)

6.上場子会社に関するガバナンスの在り方(第6章)

 

本稿では、「5.子会社経営陣の指名・報酬の在り方」及び「6.上場子会社に関するガバナンスの在り方」を解説します。

 

 

2.子会社経営陣の指名・報酬の在り方

 

本章は、完全子会社を前提としています。

 

(1)子会社経営陣の指名・報酬に関する親会社の関与の在り方

 

グループとしての一体的運営や企業価値向上の観点から、主要な完全子会社の経営トップを親会社の取締役会及び指名委員会・報酬委員会において審議対象とすることを検討すべきとしています。

 

(2)グループとしての経営陣の指名・育成の在り方

 

①グループとしての社長・CEO等の後継者計画の在り方

グループの社長・CEO等の後継者計画の一環として、子会社の経営陣ポストを積極的に活用することも有効であるとしています。

 

②グループとしての経営陣の人材育成・人事管理の在り方

グループ内の人的資源を最大限活用するため、グループ全体として一定レベル以上のポスト・人材を選定し、評価・選抜を行う仕組みを構築し、将来の経営人材の計画的育成を行うことを検討すべきとしています。

このため、人事情報の一元化による統合的な人事管理も有効であるとしています。

 

(3)グループとしての経営陣の報酬の在り方

 

①グループ全体での報酬政策の策定

グループとしての企業価値向上に向けて、グループ各社の経営陣の適切なインセンティブを付与するため、統一的な報酬政策の構築をすることが重要であるとしています。

 

②グループにおける報酬水準の在り方

中長期的には、グローバルな報酬水準及びその考え方の統一を目指すことが期待されますが、当面の対応として、客観的かつ統一的な基準を導入し、これに基づいて各地域における具体的な水準を決定することが検討されるべきとしています。

 

③グループ企業におけるインセンティブ報酬の設計

グループ全体の企業価値向上に向けた統一的な考え方の下で、報酬の種類ごとに成果指標(KPI)を設定し、情報開示を通じて、透明性・客観性を確保することが検討されるべきとしています。

 

④グループ企業における報酬に関する情報開示の在り方

グループとしての報酬政策に関する基本項目やKPI選定の理由等を開示することが検討されるべきとしています。

 

3.上場子会社に関するガバナンスの在り方

 

(1)適用対象

 

親子上場における子会社を対象としています。

 

(2)上場子会社の利益相反構造

 

上場子会社においては、支配株主である親会社と上場子会社の一般株主との間には、構造的な利益相反リスクが存在しています。

 

具体的には、親会社との直接取引、事業部門の譲渡・関連事業間の調整、完全子会社化が実施される場合などが挙げられます。

 

(3)親会社における対応の在り方

 

①グループの事業ポートフォリオ戦略の視点

親会社はグループ全体としての企業価値向上や資本効率性の観点から、上場子会社として維持することが最適か定期的に点検するとともに、その合理的理由や子会社のガバナンス体制の実効性確保について、取締役会で審議し、投資家に対して情報開示を通じて説明責任を果たすべきとしています。

 

②グループのリスク管理の視点

親会社は、グループのリスク管理上必要な事項等については、上場子会社による独立した意思決定が担保されることを前提に、事前の協議を求めることも合理的であるとしています。

 

(4)上場子会社におけるガバナンス体制の在り方

 

①基本的な考え方

上場子会社においては、親会社と一般株主との間に利益相反リスクがあることを踏まえて、上場子会社としての独立した意思決定を担保するための実効的なガバナンス体制が構築されるべきであるとしています。

 

②上場子会社における独立社外取締役の役割

上場子会社の独立社外取締役には、業務執行を監督する役割を果たすための執行人からの独立性に加えて、一般株主の利益を確保する役割も期待されているため、親会社からの独立性も求められています。

 

③上場子会社における独立社外取締役の独立性に関する考え方

a)上場子会社における独立性基準

上場子会社の独立社外取締役には、10年以内に親会社に所属していた者を選任しないこととすべきであるとしています。

 

b)上場子会社における独立社外取締役の選任

上場子会社の独立社外取締役については、特に一般株主の利益を保護するという重要な役割を担える人物であるかを確認して、その指名・選任が行われるべきであるとしています。

 

c)上場子会社における適切な独立社外取締役を確保するための担保措置

親会社は、上場子会社の独立社外取締役の選解任権限を行使するにあたり、上場子会社のガバナンス確保に十分配慮すべきであるとしています。

 

④上場子会社における実効的なガバナンスの仕組みの在り方

取締役会における独立社外取締役に比率を高めることを基本として、重要な利益相反取引については、独立社外取締役を中心とした委員会で審議・検討を行う仕組みを導入することを検討すべきとしています。

 

⑤上場子会社による情報開示の在り方

上場子会社は、そのガバナンスの方策について、積極的に開示すべきとしています。

 

(5)上場子会社経営陣の指名の在り方

 

①上場子会社に求められる対応

乗除子会社の経営陣については、上場子会社の価値向上に貢献するかという観点から、上場子会社が独立した立場で後継者計画を策定し、候補者の指名を行うべきとしています。

親会社から提案された候補者についても、その適格性について客観的に判断すべきであるとしています。

 

②上場子会社の指名委員会と親会社との関係

上場子会社の指名委員会は、上場子会社の企業価値向上にとって最適な経営陣の指名が行われるよう、親会社からの独立性が実質的に担保されるべきであるとしています。

 

(6)上場子会社経営陣の報酬の在り方

 

①上場子会社に求められる対応

上場会社の経営陣の報酬政策については、上場子会社の企業価値向上への適切なインセンティブとなるように、上場子会社において独立した立場で検討されるべきとしています。

 

②上場子会社の報酬委員会と親会社との関係

上場子会社の報酬委員会は、上場子会社にとって最適な報酬設計が行われるよう、親会社からの独立性が実質的に担保されるべきであるとしています。

 

「SDGs経営ガイド」~企業は如何に取り組むか、投資家はどのように評価するのか

経済産業省は、2019年5月に、「SDGs経営/ESG投資研究会」での議論をもとに、企業がいかに「SDGs経営」に取り組むべきか、投資家はどのような視座でそのような取組を評価するのか等を整理した「SDGs経営ガイド」を取りまとめました。

1.SDGs経営ガイド(以下、本ガイド)の構成

本ガイドにおいては、研究会での議論をもとに、「Part1.SDGs-価値の源泉」においてSDGsに関する現状認識を多様な観点から示した上で、「Part2.SDGs経営の実践」において、企業が「SDGs経営」を実践する際に有用な視点を整理しています。

 

(1)構 成

本ガイドは、以下の内容からなっています。

Part1. SDGs-価値の源泉

I 企業にとってのSDGs

・SDGsは企業と世界をつなぐ「共通言語」

・SDGsは「未来志向」のツール

・SDGs-企業経営における「リスク」と「機会」

・日本企業の理念とSDGs

・ベンチャー企業とSDGs

 

II 投資家にとってのSDGs~SDGs経営とESG投資~

・投資家を取り巻く環境変化

・長期的な企業価値の評価とSDGs

・SDGs経営を行う企業のパフォーマンス

 

III マルチステークホルダーとの「懸け橋」

・「SDGsネイティブ」としてのミレニアル世代

・SDGsと従業員/消費者

・「知の総体」としての大学の役割

・「連携」はSDGs経営の重要なカギ

 

Part2. SDGs経営の実践

I 社会課題解決と経済合理性

・経済合理性を見出し、新たな市場を取りに行く

 

II 重要課題(マテリアリティ)の特定

・重要課題を特定し、資源を投入する

 

III イノベーションの創発

・社会課題を解決するイノベーションを「協創」する

・経営者自身が新規事業をリードする

 

IV 「科学的・論理的」な検証・効果

・「科学的・論理的」な検証・評価を徹底する/させる

・国際標準を、積極的に活用する

 

V 長期視点を担保する経営システム

・SDGs経営を「仕組み」で持続させる

 

VI 「価値創造ストーリー」としての発信

・「価値創造ストーリー」を描き、発信する

・「選ばれたい人」に刺さるメッセージを発信する

・的確に伝え、対話し、更なる価値創造へ

 

(2)本ガイドの主なメッセージ

 

① 「SDGsネイティブ」であるミレニアル世代のプレゼンスが投資家・従業員・消費者として向上する中、SDGs経営は投資・人材・顧客獲得の重要なカギとなる

 

② SDGs経営で、社会課題解決の中に経済合理性を見出すことで、取り残されてきた市場を新たに獲得できる

 

③ 大企業とベンチャー・アカデミアの連携や長期の研究開発投資を通じて、社会課題を解決するイノベーションを「協創」できる

 

④ SDGs経営を企業の「価値創造ストーリー」に位置付けたうえで、「選ばれたい人」に的確に発信することが重要である

 

⑤ 科学的・論理的な検証と評価を徹底するとともに、国内外ステークホルダーにも浸透させるように働きかけていくべきである

 

⑥ 「三方よし」の精神等もあり、「SDGs経営」を当然のものと考える日本企業は多い

2.企業にとってのSDGs

(1)SDGsは企業と世界をつなぐ「共通言語」

 

①ESGやSDGsという世界的なフレームワークを用いて、コミュニケーションすることにより、日本企業への資金流入の促進が期待できる

 

②SDGsに対するベンチマーキングが必要である

 

(2)SDGsは「未来志向」のツール

 

100年先を見据えて、これまで誰も取り組んでこなかった社会課題に経営者がどのように取り組むかがSDGs経営の本質である

 

(3)SDGs-企業経営における「リスク」と「機会」

 

①SDGsに取り組まないことは、リスクとなる

 

②SDGsは挑むべき成長の機会である

 

③SDGsに対する取り組みは投資ととらえる

 

④EVA経営をアレンジする必要がある(注)

(注)Economic Value Addedの略。 経済付加価値。 毎年のオペレーションから入るリターンから投下資本に対して発生している資本コストを差し引いた経済的価値を示す。

 

(4)日本企業の理念とSDGs

 

①「三方よし」のように、SDGsの多くの考え方は、日本企業や商慣習と親和性が高い

 

②会社が世のため人のために存在するという考え方は、日本では脈々と受け継がれている

 

③日本企業は、長い間SDGsに取り組んできた

 

(5)ベンチャー企業とSDGs

 

ミッションそのものがSDGsと平仄を合わせている事例がある

 

3.社会課題解決と経済合理性

 

新しい技術やノウハウを動員することによって、課題解決とビジネスを両立させることは、SDGs経営の体現である。

 

(1)経済合理性がないと判断される市場に対しては、長期的視点を持つことが非常に重要である

 

(2)経済合理性を生み出すイノベーションが重要である

 

4.イノベーションの創発

(1)社会課題を解決するイノベーションを「協創」する

 

①イノベーションで社会課題を解決することは、企業にとっても大きな機会であり、ビジネスチャンスになる。

 

②新規事業に取り組む際に、コア技術が足りなければ、オープンイノベーションやアカデミアとの連携も必要である。

 

③長期的視座に立った研究開発も重要である。

 

(2)経営者自身が新規事業をリードする

 

経営者には、可能性のある新たなチャレンジを見極めて、自らがその事業をリードしていく役割が求められる。

 

「グループ・ガバナンス・システムに関する実務指針」~内部統制システムの在り方

経済産業省は、「コーポレート・ガバナンス・システム研究会(CGS研究会)(第2期)」における議論に基づき、「グループ・ガバナンス・システムに関する実務指針」(グループガイドライン)を策定し、2019年6月28日に公表しました。

 

1.「グループ・ガバナンス・システムに関する実務指針」(以下、本ガイドライン)の構成

 

本ガイドラインの構成は以下のとおりです。

 

1.はじめに(本ガイドラインの目的、位置付け、対象等)(第1章)

2.グループ設計の在り方(第2章)

3.事業ポートフォリオマネジメントの在り方(第3章)

4.内部統制システムの在り方(第4章)

5.子会社経営陣の指名・報酬の在り方(第5章)

6.上場子会社に関するガバナンスの在り方(第6章)

 

本稿では、「4.内部統制システムの在り方」を解説します。

 

2.内部統制システムの在り方

 

(1)内部統制システムの意義

 

「守りのガバナンス」であるコンプライアンスや不正防止にとどまらず、

中長期的な企業価値向上を支える適切なリスクマネジメントの一環として、

「事業戦略の確実な執行のための仕組み」とする視点も重要です。

 

(2)内部統制システムに関する現状と課題

 

組織の大規模化・グローバル化:グループとしてのリスクマネジメント体制の整備が重要となっています。

内部統制システムが実効的に運用されていない例として以下の項目が指摘されています。

・グループ本社による一元的なリスクマネジメント体制の欠如

・現場のコンプライアンス意識の希薄

・管理部門・内部監査部門のチェック機能の不全

 

(3)内部統制システムの構築・運用に関する基本的な考え方

 

各社の経営方針、子会社の体制等に応じ

・監視・監督型

・一体運用型

 

の選択・組み合わせを行います。

 

ITの活用等による内部統制システムの高度化と効率性のバランスを考慮します。

 

(4)グループの内部統制システムに関する親会社の取締役会の役割

 

グループ全体の内部統制システム構築に関する基本方針の決定し、

子会社を含めたその構築と運用を監視・監督する責務を負っています。

 

(5)内部統制システムに関する監査役等の役割

 

①監査役等の役割

 

内部統制システムの有効性の監査する役割があります。

親会社監査役等と子会社の監査役等とが連携して、グループ全体の内部統制システムの監査を効率的に行うことの検討が必要です。

 

②内部監査部門との連携

 

内部監査部門から監査役等への直接のレポートラインの確保を検討する必要があります。

 

③子会社に対する監査

 

親会社の監査役等・会計監査人と子会社の監査役等や内部監査部門等との連携が重要となります。

 

(6)実効的な内部統制システムの構築・運営の在り方

 

「3線ディフェンス」の導入と適切な運用の在り方を検討する必要があります。

 

a)第1線:事業部門におけるコンプライアンス意識の醸成

 

b)第2線:管理部門の役割と独立性確保・機能強化

 

c)第3線:内部監査部門の役割と独立性確保・機能強化

 

(7)監査役等や第2線・第3線における人材育成の在り方

 

監査役等の人材育成や指名・選任にあたっては、役割認識・意欲や専門的知見に配慮すべきです。

経営トップは管理部門や内部監査部門の重要性を認識し、専門性やプロフェッショナル意識の向上を図るべきです。

 

(8)ITを活用した内部監査の効率化と精度向上

 

ITやデータアナリティクスの活用を検討すべきです。

 

(9)サイバーセキュリティ対策の在り方

 

グループ全体やサプライチェーンも考慮に入れた対策の在り方の検討が必要です。

 

(10)有事対応の在り方

 

①基本的な考え方

 

・レピュテーションへのダメージの最小化

・ステークホルダーの信頼回復

・グループ本社中心に早期発見と被害の最小化のために迅速な対応

 

など、有事対応を適切に行なわなければなりません。

 

②有事対応の在り方

 

a)有事対応の目的

速やかに事実関係を調査し、根本原因を究明し、再発防止策の検討を行う必要があります。

十分な説明責任をはたすことにより、信頼回復と企業価値の維持・向上を図ることができます。

 

b)事案の公表等

事案の重大性の見極め、迅速な第1報、必要に応じた謝罪、正確な説明を心掛けるべきです。

 

c)独立社外役員等による対応の在り方

当該事案に利害関係のない社外役員が、第三者委員会の設置の要否を含む、調査体制の選択、調査委員会の組成・運営において主導的な役割を果たすべきです。

 

③子会社で不祥事等が発生した場合における親会社の対応の在り方

 

事案の態様や重大性、子会社における対応可能性等を勘案し、事態の原因究明や事態の収束、再発防止策の策定を主導することが期待されます。

「グループ・ガバナンス・システムに関する実務指針」~グループ設計の在り方と事業ポートフォリオマネジメントの在り方

経済産業省は、「コーポレート・ガバナンス・システム研究会(CGS研究会)(第2期)」における議論に基づき、「グループ・ガバナンス・システムに関する実務指針」(グループガイドライン)を策定し、2019年6月28日に公表しました。

 

1.「グループ・ガバナンス・システムに関する実務指針」(以下、本ガイドライン)の構成

 

本ガイドラインの構成は以下のとおりです。

 

1.はじめに(本ガイドラインの目的、位置付け、対象等)(第1章)

2.グループ設計の在り方(第2章)

3.事業ポートフォリオマネジメントの在り方(第3章)

4.内部統制システムの在り方(第4章)

5.子会社経営陣の指名・報酬の在り方(第5章)

6.上場子会社に関するガバナンスの在り方(第6章)

 

本稿では、1~3を解説しています。4~6は、別稿で解説します。

 

2.目的・位置づけ・対象等

 

「本ガイドライン」は、主として単体としての企業経営を念頭に作成されたコーポレートガバナンス・コード(以下「コード」といいます。)の趣旨を敷衍し、グループガバナンスの在り方をコードと整合性を保ちつつ示すことで、コードを補完するものです。

本ガイドラインは、実効的なグループガバナンスの在り方に関し、経済産業省が実施した国内外のグループ経営を行う企業等に対するヒアリングやアンケート結果に基づき、グループガバナンスの実効性を確保するために一般的に有意義と考えらえられるベストプラクティスを示しています。

なお、グループ経営の在り方は極めて多様であるため、本ガイドラインに記載の取組を一律に要請するものではありませんが、各企業において、最適なグループガバナンスの在り方を検討する際、本ガイドラインが実務に即した指針として、その検討に資することが期待されます。

 

3.グループ設計の在り方

 

(1)グループ設計の基本的考え方を示しています。

 

各社の事業特性や多角化・グローバル化等の状況を踏まえて、グループの中長期の企業価値向上と持続的成長を実現するための合理的な在り方を検討するべきとしています。

 

(2)分権化と集権化のバランス

 

・迅速な意思決定と一体的経営、実効的な子会社管理等の必要性を勘案し、

・事業部門への権限移譲と本社によるコントロールの最適なバランスを検討する

 

としていて、グループ本社によるコントロールの確保も重要であるとしています。

 

(3)法人格の分離

 

法人格分離のメリット・デメリットを勘案して、あり方を検討するとしています。

 

(4)2つのシナジー

 

・財務的シナジーと事業的シナジーの最適な組み合わせを明確にし、

・その方針に応じたグループ設計やガバナンスの在り方を検討する

 

としています。

 

4.事業ポートフォリオマネジメントの在り方

 

(1)事業ポートフォリオマネジメントの基本的な考え方

 

①基本的な考え方

・シナジーの発揮や持続的な収益性確保の観点から

・定期的に見直し、最適化を図る

 

としており、

 

・コア事業の見極め

・M&Aとノンコア事業の整理

・コア事業に対する経営資源の集中投資

 

が戦略的に行われることが重要としています。

 

②事業ポートフォリオに関するガバナンスの重要性

グループ本社の取締役会の役割は、

 

・事業ポートフォリオマネジメントのための仕組みの構築

・その運用の監督

 

が期待される役割で、

 

社外取締役の主体的な関与が重要であるとしています。

 

(2)事業ポートフォリオマネジメントの仕組みの構築

 

グループ本社の取締役会は、

 

・投資や事業切り出し等に関する基準の設定

・検討の主体・プロセス等の明確化

 

の構築について検討すべきとしています。

 

(3)事業評価のための基盤整備

 

グループ本社は、

 

・事業セグメントごとのB/S、C/F計算書の整備をしたうえで

・資本コストの設定等の客観的な評価指標を用いた事業評価の仕組み

 

を構築することを検討すべきとしています。

 

こうした仕組みの構築・運用に際しては、CFOが主体的役割を果たすことが期待されています。

 

最近のディスクロージャー制度の動き~記述情報(有価証券報告書)の見直しと監査報告書の見直し

資本市場の機能強化や国全体の最適な資金フローの実現のため、スチュワードシップ・コードやコーポレートガバナンス・コードが導入されています。

資本市場の機能の発揮、企業価値の向上と収益向上の果実を家計にもたらすという好循環のために、投資家の適切な投資判断、投資家と企業との建設的な対話を促していくような企業情報の開示・提供が重要です。このような観点から、企業情報の開示・提供の在り方について再検討が行われました。

 

1.記述情報(有価証券報告書)の見直し

 

(1)ガバナンス情報の拡充(2019年3月期から適用)

 

①役員報酬に係る情報(2019年3月期から適用)

 

a)報酬プログラム

報酬決定・支給の方法やこれらに関する考え方を具体的にわかりやすく記載します。

 

・固定報酬・短期業績連動報酬・中長期業績連動報酬のそれぞれの算定方法

・固定報酬と短期・中小期業績連動報酬の支給割合

・役職ごとの支給についての考え方

・役員報酬の算定方法にKPI等の指標が関連付けられている場合、その指標と指標の選定理由、業績連動報酬への反映方法

・報酬総額等を決議した株主総会の年月日及び決議内容

 

b)報酬実績

実績と報酬プログラムが整合的か等を確認できるように記載します。

 

・登記の報酬額に決定した理由、当期のKPIの目標と実績の達成度

・固定報酬と業績連動報酬の支給割合の実績、支給された報酬の状況

 

c)報酬決定の枠組み

報酬決定プロセスの客観性・透明性のチェックを可能とするために記載します。

 

・算定方法の決定権者、その権限や裁量の範囲

・報酬委員会がある場合には、その位置づけ・構成メンバー

・取締役会・報酬委員会の報酬決定に関する具体的活動内容

 

②政策保有株式に係る記載事項(2019年3月期から適用)

 

・純投資と政策保有株式の区分の基準や考え方

・政策保有に関する方針、目的、効果

・売却・買い増しした政策保有株式のそれぞれの理由等

・個別の政策保有株式の保有目的・効果

・個別銘柄の開示(60銘柄)

・提出会社が政策保有株式として株式を保有している相手方が、当該提出会社の株主となっている場合、当該相手方が保有している株式

 

 

(2)記述情報の充実(2020年3月期から適用)

 

①記述情報が提供するもの

 

・投資家が経営者の視点から企業を理解するための情報を提供

・財務情報全体を分析するための文脈を提供

・企業収益やキャッシュ・フローの性質や、それらを生み出す基盤についての情報を通じ、将来の業績の確度を判断するうえで重要な情報を提供

 

②記述情報に充実に係る開示のポイント

 

・経営方針・経営戦略等

経営環境(企業構造、市場状況、競争優位性、主要製品・サービス等)についての経営者の認識を含め事業の内容と関連付けした記載

 

・事業等のリスク

顕在化する可能性の程度や時期、事業への影響、リスク対応策等の説明

 

・会計上の見積もり及び当該見積もりに用いた仮定

不確実性の内容やその変動により経営成績に生じる影響等に関する経営者の認識等の記載

 

③「記述情報の開示に関する原則」の概要

 

2019年3月19日にプリンシプルベースのガイダンスが公表されました。

 

a)目的

記述情報の中でも、経営方針・経営戦略等、経営成績等の分析、リスク情報を中心に、有価証券報告書における開示の考え方を整理することにより、ルールへの形式的な対応にとどまらない開示の充実に向けた企業の取り組みを促し、開示の充実を図る

 

b)位置づけ

・本原則は新たな開示事項を加えるものではないが、企業において本原則に沿った望ましい開示に向けた取り組みが進められることが期待される

・本原則に対応した開示例の公表により、好事例を全体に広げるとともに、好事例を本原則に反映することも検討する

 

 

④「記述情報の開示に関する原則」総論の概要

 

・経営方針、業績評価、経営リスク等の議論の適切な反映やディスクロージャーに関する基本方針の提示

・情報の重要性のディスクロージャーへの適切な反映

・成長投資、資本コスト等に関する議論並びに今後の方向性の反映

・震度あるセグメント情報の開示

・よりわかりやすい開示

 

 

(3)監査関係の情報の拡充(2020年3月期から適用、一部2019年3月期から適用)

 

①監査役会等の活動状況(2020年3月期から適用)

 

・監査役会等の開催頻度、主な検討事項

・個々の監査役等の出席状況

・常勤監査役の活動

 

②会計監査に関する情報

 

(2019年3月期から適用)

・企業が適正な監査の確保に向けて監査人と行っている取り組み

・監査役会等による監査人の選任・再任の方針及び理由

・監査人監査の評価

 

(2020年3月期から適用)

・監査人の継続監査期間

・監査業務と被監査業務に区分したネットワークベースの報酬額・業務内容

 

③総覧性の向上

 

(2019年3月期から適用)

・監査人の解任・不再任の方針

・監査役会等が監査報酬額に同意した理由

・監査人の業務停止処分に係る事項

 

2.監査報告書の見直し(KAMの導入)

 

(1)監査報告書の透明化

 

①監査人は、監査の過程で監査役等と協議した事項の中から

・特別な検討を必要とするリスクまたは重要な虚偽表示のリスク

・経営者の判断を伴う事項に対する監査人の判断の程度

・当年度において発生した重要な事象または取引が監査に与える影響

等について考慮したうえで、特に注意を払った事項を決定する。

 

②当該事項からさらに当年度の財務諸表監査において職業的専門家として特に重要であると判断した事項を絞り込み、「監査上の主要な検討事項」を決定する。

 

(2)監査人の交代に関する説明

 

企業及び監査人は、監査人の交代理由について実質的な内容を記載します。

例として、監査報酬や会計処理に関する見解の相違が挙げられています。

 

 

 

 

経営研究調査会研究報告第66号 「機械設備の評価実務」について

経営研究調査会研究報告第66号 「機械設備の評価実務」が、2019年7月12日に、日本公認会計士協会より公表されました。

 

1.本研究報告の背景及び目的

 

機械設備の評価は多くの局面で利用されますが、現時点で我が国では、機械設備の評価が、法令等により強制されることはなく、準拠しなければならない「基準」や「マニュアル」もありません。

 

公認会計士は、機械設備の評価に際して様々な形で関与することになります。

 

例えば、監査人の立場で機械設備の評価書を検討する場合、機械設備の評価を依頼される場合又は機械設備の評価について助言を求められる場合等です。

 

このような様々な場合において、公認会計士が参考にすることができるよう、機械設備の評価実施について取りまとめたのが「機械設備の評価実務」(以下「本研究報告」という。)です。

 

2.本研究報告の概要と特徴

 

本研究報告は、機械設備の評価が利用される局面のうち、公認会計士が会計目的、その中でもPPA目的(Purchase Price Allocation:M&A における取得原価の配分目的)で機械設備の評価を依頼された場合を想定して構成されています。

 

また、減損会計における留意点についても、個別論点として言及しています。

 

業務を受嘱した公認会計士は、機械設備評価に当たって、まず情報の収集と調査を開始します。

その結果を基に要因分析を実施し、評価アプローチや評価法を選定します。

本研究報告は、こういった評価の基本的な概要と実務について記述されています。

 

なお、これまでの研究報告と比べて下記の特徴があります。

 

① 国際評価基準審議会(International Valuation Standards Council:以下「IVSC」 という。)から「国際評価基準2017年版」(2017 International Valuation Standards)が公表されました。本研究報告では、これを引用・参考にしています。

IVSC は、国際評価基準の策定や維持等に寄与するために設立された国際団体です。日本公認会計士協会も、2016年10月にこの団体のInstitutional Memberとして加入しています。

 

② 工場にある資産を評価する場合、国内だけではなく海外にも業務範囲が及ぶ場合があります。

国内で工場の資産を評価する場合でも、公認会計士以外に、不動産鑑定士、無形資産評価専門家、機械設備の評価専門家が関与することになります。

機械設備の評価業務でも、評価チームを編成して、各地にある工場の機械設備の評価を実施する場合もあります。

本研究報告では、複数の評価専門家による評価を「共同評価」と称して、実務上の留意点について検討しています。

 

③ 評価アプローチには、インカム・アプローチ、マーケット・アプローチ及びコスト・アプローチの三つがあります。

車両、工作機械、パソコンのように中古市場が形成されている機械設備もありますが、多くの場合、コスト・アプローチの採用が多いと想定されます。

本研究報告では、このコスト・アプローチの評価例を検討しています。

 

3.本研究報告が対象とする評価業務

 

本研究報告が対象としているのは、製品の製造に関連する下記の資産です。本研究報告ではこれらを「機械設備」と呼称しています。

 

① 機械装置

② 工具器具備品

③ 車両運搬具

 

工場には土地及び建物もありますが、これらは我が国においては不動産鑑定士の業務範囲であることから、本件評価での検討対象とはしていません。

ただし、本研究報告で不動産や無形資産を含む工場全体の評価について言及している場合には、「機械設備」と区別して「工場資産」と呼称しています。

 

4.国際評価基準の概要

 

資産及び負債の評価に関して、国際評価基準( International Valuation Standards:以下「IVS」という。)がIVSCにより作成されています。本研究報告でも引用・参考にしている文献として挙げています。

 

本研究報告では、文献名としてこれを「国際評価基準2017年版」と称しています。

「国際評価基準2017年版」は、事業及び事業持分、無形資産、不動産の諸権利、開発に伴う資産及び金融商品といった幅広い資産等の評価を対象としていますが、機械設備に関する基準もその中に含まれています。

 

また、「国際評価基準2017年版」は一般基準として業務の適用範囲、調査と遵守、報告、価値の基礎及び評価アプローチを定めています。その上で、上記のように資産別基準を設けています。

 

機械設備の評価は、当該資産別基準の一つのセクション (IVS300)です。

IVSは評価基準ですが、客観性等について、IVSCは専門評価人の倫理原則(Code of Ethical Principles for Professional Valuers)によって専門家行動のための適切な枠組みの例も提供しています。

 

5.本研究報告の利用上の留意点

 

前述のとおり、我が国において公認会計士が機械設備の価値を評価する際に準拠しなければならない「基準」や「マニュアル」がない状況で、本研究報告は、機械設備の評価実務をまとめたものです。

 

本研究報告には規範性はありません。

 

しかしながら、機械設備の評価を行うに当たっては、本研究報告が利用可能であり、参考になるものと期待されます。

 

また、本研究報告は、会計目的の場合の評価実務を中心に取りまとめられていますが、取引目的(機械設備の売買や企業価値評価の一環として実施される評価)や裁判目的(機械設備評価をめぐる紛争や鑑定人としての機械設備の鑑定)、さらには、 会社更生や民事再生といった処分目的においても参考になるものと期待できます。

 

さらに、公認会計士が機械設備の評価を依頼される場合のほかに、機械設備の評価について助言を求められる場合や、監査人の立場で機械設備の評価書を検討する場合にも、本研究報告が参考になるものと期待できます。

 

我が国における機械設備の評価実務は、企業価値評価と比べてもまだ日が浅く、今後この分野の評価実務が積み重ねられることが想定されます。

 

そのため、本研究報告の公表以降に、信頼性が高いものとして定着した評価実務については、本研究報告に記述のないものであっても、その採用が妨げられるべきではありません。

 

財務デュー・デリジェンスにおける貸借対照表分析について

1.目的

貸借対照表分析の目的は、調査基準日における貸借対照表を分析し、適正な簿価純資産と時価純資産を把握し、他の分析や価値算定のために必要な情報を収集することです。

 

(1)適正な簿価純資産と時価純資産の把握

 

簿価純資産が企業価値評価に直接結びつくことは、ネットアセット・アプローチを採用している場合を除いてはありません。

しかし、企業価値評価の検証手段として、簿価純資産の把握は重要です。

 

まず、評価対象会社の貸借対照表が、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に従って作成されているかどうかを検証する必要があります。

 

(2)適正な簿価純資産への修正

 

簿価純資産の把握では、以下の点に留意が必要です。

 

①経営難の会社では粉飾決算が行われている可能性があります。

②小規模な会社では、税法基準で会計処理が行われている場合があります。

 

修正項目の代表例としては、下記の項目があげられます。

 

①回収可能性が乏しい売掛金

②滞留在庫

③含み損のある有価証券、投資等

④各種引当金の未計上

 

 

(3)時価純資産への置き換え

 

適正に作成された簿価純資産を基にして、時価純資産に置き換えるための修正を行うことになります。

実務では、無形資産、のれんなどの時価評価が難しい資産を除いて、土地や保険積立金など時価情報を収集しやすい資産のみ評価替えを行うことが多くなっています。

 

2.貸借対照表分析における留意点

 

(1)増減比較

 

貸借対照表分析では、調査基準日時点の貸借対照表と過去の貸借対照表を比較し、増減内容の分析を行いますが、この増減分析では、2期比較だけではなく過去5年から10年程度の貸借対照表を入手し、趨勢を分析することが必要です。

 

また、調査基準日以降直近日までの変動も押さえておく必要があります。

 

(2)調査期間と調査手法

 

効率的かつ効果的に調査を行うために、事前に依頼主との間で重点調査項目のすり合わせを行い、調査範囲と調査手法の大枠について合意しておくことが重要となります。

 

(3)他の分析との関係

 

貸借対照表分析の結果は他の分析や価値評価と密接に関連するので、貸借対照表分析以外の分析や価値評価手法についても理解しておくことが重要です。

 

3.貸借対照表分析における時価概念

 

時価とは、公正な評価額であり、独立した第三者間で取引を行うと想定した場合の取引価額であるとされています。

 

公正な評価額には、市場で取引され、そこで成立している価格がある「市場価格に基づく価額」と市場価格がない場合の「合理的に算定された価額」があります。

 

「合理的に算定された価額」を算定する手法には、ネットアセット・アプローチ、マーケット・アプローチ、インカム・アプローチの三種類があります。

 

(1)ネットアセット・アプローチ

 

同等の効用または機能を有する代替資産の取得に要するコストをもとに評価する方法です。

コストには、再調達原価または複製原価が用いられます。

 

(2)マーケット・アプローチ

 

算定対象資産に関する市場の評価に着目する算定方法です。

同一または類似の資産の市場価格をもとに評価します。

 

(3)インカム・アプローチ

 

算定対象資産が生み出すキャッシュ・フローに着目する算定手法です。

将来キャッシュ・フロー、キャッシュ・フロー予想期間、割引率の3要素があれば評価額を算定できるので、多くの算定対象資産に適用することができます。

 

ただし、3要素は見積もりへの依存度が高いため、信頼ある見積もり情報を入手することができるかどうかが重要な留意点になります。

 

 

 

「企業及び企業環境の理解を通じた重要な虚偽表示リスクの識別と評価」~監査基準委員会報告書315

監査基準委員会報告書315「企業及び企業環境の理解を通じた重要な虚偽表示リスクの識別と評価」(以下、本報告書)が公表されました。

 

1.本報告書の範囲と目的

1-1.本報告書の範囲

本報告書は、内部統制を含む、企業及び企業環境の理解を通じて、財務諸表の重要な虚偽表示リスクを識別し評価することに関する実務上の指針を提供するものです。

 

1-2.本報告書の目的

本報告書における監査人の目的は、内部統制を含む、企業及び企業環境の理解を通じて、不正か誤謬かを問わず、財務諸表全体レベルの重要な虚偽表示リスクと、アサーション・レベルの重要な虚偽表示リスクを識別し評価することです。

これにより、リスク対応手続の立案と実施に関する基礎が提供されます。

 

 1-3.定義

本報告書における用語の定義は、以下のとおりです。

 

 (1) 「アサーション」

経営者が財務諸表において明示的か否かにかかわらず提示するものをいい、監査人は発生する可能性のある虚偽表示の種類を考慮する際にこれを利用します。

 

 (2) 「事業上のリスク」

企業目的の達成や戦略の遂行に悪影響を及ぼし得る重大な状況、事象、環境及び行動の有無に起因するリスク、又は不適切な企業目的及び戦略の設定に起因するリスクをいいます。

 

 (3) 「特別な検討を必要とするリスク」

識別し評価した重要な虚偽表示リスクの中で、特別な監査上の検討が必要と監査人が判断したリスクをいいます。

 

(4) 「内部統制」

企業の財務報告の信頼性を確保し、事業経営の有効性と効率性を高め、事業経営に係る法令の遵守を促すという企業目的を達成するために、経営者、取締役会、監査役若しくは監査役会、監査等委員会又は監査委員会(以下、監査役若しくは監査役会、監査等委員会又は監査委員会を「監査役等」という。)及びその他の企業構成員により、整備及び運用されているプロセスをいいます。

 

 (5) 「リスク評価手続」

内部統制を含む、企業及び企業環境を理解し、不正か誤謬かを問わず、財務諸表全体レベルの重要な虚偽表示リスクと、アサーション・レベルの重要な虚偽表示リスクを識別し評価するために実施する監査手続をいいます。

 

2.要求事項

 

2-1.リスク評価手続きとこれに関連する活動

(1)監査人は、財務諸表全体レベルの重要な虚偽表示リスクと、アサーション・レベル(財務諸 表項目レベル、すなわち取引種類、勘定残高及び注記事項に関連するアサーションごと)の重要な虚偽表示リスクを識別し評価する基礎を得るために、リスク評価手続を実施しなければなりません。

 

(2)リスク評価手続においては、以下の手続を含めなければなりません。

 

① 経営者への質問、内部監査に従事する適切な者(内部監査機能がある場合)への質問、及び不正又は誤謬による重要な虚偽表示リスクを識別するために有用な情報を持っていると 監査人が判断した場合には、その他の企業構成員への質問

② 分析的手続

③ 観察及び記録や文書の閲覧

 

(3)監査人は、監査契約の新規の締結及び更新に当たって入手した情報や、監査人が企業の監査以外の業務に関与している場合には、監査人は、その業務から得られた情報が、重要な虚偽表示リスクの識別に関連するものかどうかを考慮しなければなりません。

監査人は、企業での過去の経験と過年度の監査で実施した監査手続から得られた情報を利用しようとする場合には、その情報の当年度の監査における適合性に影響を及ぼす変化が生じていないかどうかを判断しなければなりません。

 

2-2.内部統制を含む企業及び企業環境の理解

 

2-2-1 企業及び企業環境

監査人は、以下の事項を理解しなければなりません。

 

(1)企業に関連する産業、規制等の外部要因(適用される財務報告の枠組みを含む。)

 

(2)企業の事業活動等

① 事業運営

② 所有とガバナンスの構造

③ 特別目的事業体への投資を含む、既存又は計画中の投資

④ 組織構造や資本関係と資金調達の方法

 

(3) 企業の会計方針の選択及び適用(会計方針の変更理由を含む。)

 

(4) 企業目的及び戦略並びにこれらに関連して重要な虚偽表示リスクとなる可能性のある事業上のリスク

 

(5)企業の業績の測定と検討

 

2-2-2 内部統制

監査人は、監査に関連する内部統制を理解しなければなりません。

 

監査に関連する内部統制のほとんどは財務報告に係る内部統制ですが、財務報告に係る内部統制が全て監査に関連するとは限りません。内部統制が、単独で又は他の幾つかとの組合せで、監査に関連しているかどうかは、監査人の職業的専門家としての判断によることとなります。

 

(1)内部統制の構成要素

 

 ① 統制環境

 

監査人は、統制環境を理解しなければなりません。その理解に際して、監査人は以下の事項を評価しなければなりません。

 

(a) 経営者は、取締役会による監督及び監査役等による監査(以下「取締役会及び監査役等による監視」という。)の下で、誠実性と倫理的な行動を尊重する企業文化を醸成し維持しているかどうか。

(b) 統制環境の各要素の有効性が、内部統制の他の構成要素に適切な基礎を提供しているかどうか。また、内部統制の他の構成要素は、統制環境の不備によって損なわれていないかどうか。

 

② 企業のリスク評価プロセス

 

②-1監査人は、企業が以下の事項に関するプロセス(以下「企業のリスク評価プロセス」という。)を有しているかどうかを理解しなければなりません。

 

(a) 財務報告に影響を及ぼす事業上のリスクの識別

(b) リスクの重要度の見積り

(c) リスクの発生可能性の評価

(d) リスクに対処する方法の決定

 

監査人は、企業のリスク評価プロセスが設けられている場合には、これを理解し、その結果を入手しなければなりません。

 

②-2監査人は、経営者が識別していない重要な虚偽表示リスクを識別した場合には、企業のリス ク評価プロセスにおいて本来識別されなければならないリスクが存在するかどうかを評価しなければなりません。

 

本来識別されなければならないリスクが存在する場合には、監査人は、なぜ企業のリスク評価プロセスが識別できなかったのかを理解し、その状況に照らして適切であるかどうかを評価、又は企業のリスク評価プロセスに関する内部統制の重要な不備かどうかを判断しなければなりません。

 

③ 財務報告に関連する情報システム(関連する業務プロセスを含む。)と伝達

 

③-1監査人は、財務報告に関連する情報システム(関連する業務プロセスを含む。)について理解しなければなりません。

 

これには、以下の事項を含みます。

 

(a) 財務諸表に重要な影響を与える企業の事業活動に係る取引種類

 

(b) 取引の開始から、記録、処理、必要に応じた修正、総勘定元帳への転記、財務諸表での報告に至る手続(ITによるものか又は手作業によるものかを問わない。)

 

(c) 手書きによる記録か電子的記録かを問わず、取引の開始、記録、処理及び報告に使用される会計記録、裏付け情報及び財務諸表での特定の勘定(これには、誤った情報の修正と、情報がどのように総勘定元帳に転記されるかを含む。)

 

(d) 取引以外で、財務諸表に重要な影響を及ぼす事象の発生や状況を情報システムにより把握する方法

 

(e) 財務諸表を作成するために用いている財務報告プロセス(重要な会計上の見積りや注記事項を含む。)

 

(f) 仕訳入力に関する内部統制(非経常的な又は通例でない取引や修正の記録に使用される非定型的な仕訳を含む。)

 

③-2監査人が理解すべき財務報告に関連する情報システムには、総勘定元帳や補助元帳だけではなく、それ以外の情報システムの注記事項に関連する部分を含めなければなりません。

 

③-3監査人は、財務報告の役割と責任、財務報告に係る重要な事項について、企業がどのように 内外に伝達しているかを理解しなければなりません。

これには、以下の事項を含みます。

 

(a) 経営者と取締役会や監査役等との間の伝達

(b) 規制当局等の外部への伝達

 

④ 監査に関連する統制活動

 

監査人は、監査に関連する統制活動を理解しなければなりません。

監査に関連する統制活動とは、アサーション・レベルで重要な虚偽表示リスクを評価し、リ スク対応手続を立案するために理解が必要であると監査人が判断したものです。

 

監査においては、重要な取引種類、勘定残高及び注記事項のそれぞれに関する全ての統制活動、又はこれらに関連するアサーションに関する全ての統制活動を理解することが求められているわけではありません。

 

監査人は、企業の統制活動の理解に際し、ITに起因するリスクに企業がどのように対応しているかを理解しなければなりません。

 

⑤ 監視活動

 

監査人は、監査に関連する統制活動に対するものを含め、企業が財務報告に係る内部統制の監視に用いている主要な活動を理解し、どのように内部統制の不備の是正措置を講じているかを理解しなければなりません。

 

企業が内部監査機能を有している場合、監査人は、内部監査機能の責任、組織上の位置付け、 及び実施された又は実施される予定の業務を理解しなければなりません。

 

監査人は、企業が監視活動に利用している情報の情報源とともに、経営者が利用している情 報が監視活動にとって十分に信頼できると経営者が判断している理由を理解しなければなりません。

 

2-3.重要な虚偽表示リスクの識別と評価

(1)監査人は、リスク対応手続を立案し実施する基礎を得るために、以下の二つのレベルで重要な虚偽表示リスクを識別し評価しなければなりません。

 

① 財務諸表全体レベル

② アサーション・レベル

 

(2)監査人は、重要な虚偽表示リスクを識別し評価するために、以下の事項を実施しなければなりません。

 

① 企業及び企業環境(虚偽表示リスクに関連する内部統制を含む。)を理解する過程を通じて、また、取引種類、勘定残高及び注記事項(定性的及び定量的な情報を含む。)を検討することにより、虚偽表示リスクを識別する。

 

②識別した虚偽表示リスクが、財務諸表全体に広く関わりがあり、多くのアサーションに潜在的に影響を及ぼすものであるかどうかを評価する。

 

③ 識別した虚偽表示リスクが、アサーション・レベルでどのような虚偽表示になり得るのかを関連付ける。このとき、当該リスクに関連する内部統制を考慮する(運用評価手続の実施を予定している場合)。

 

④ 複数の虚偽表示につながる可能性も含め、虚偽表示の発生可能性を検討し、潜在的な虚偽表示の影響の度合い(重要な虚偽表示となるかどうか。)を検討する。

 

 

2-3-1 特別な検討を必要とするリスク

(1)監査人は、リスク評価の過程で、監査人の判断により、識別した重要な虚偽表示リスクが特別な検討を必要とするリスクであるかどうかを決定しなければなりません。

この判断に際して、監査人は、当該リスクに関連する内部統制の影響を考慮してはなりません。

 

(2)監査人は、識別した重要な虚偽表示リスクが特別な検討を必要とするリスクであるかどうかを決定する際、少なくとも以下の事項を考慮しなければなりません。

 

① 不正リスクであるかどうか。

② 特別の配慮を必要とするような最近の重要な経済、会計などの動向と関連しているかどうか。

③ 取引の複雑性

④ 関連当事者との重要な取引に係るものであるかどうか。

⑤ リスクに関連する財務情報の測定における主観的な判断の程度(特に広範囲にわたって測定に不確実性がある場合)

⑥ 企業の通常の取引過程から外れた取引又は通例でない取引のうち、重要な取引に係るものであるかどうか。

 

監査人は、特別な検討を必要とするリスクがあると判断した場合には、当該リスクに関連する統制活動を含む内部統制を理解しなければなりません。

 

2-3-2 実証手続のみでは十分かつ適切な監査証拠を入手できないリスク

 

監査人は、一部のリスクについて、実証手続のみでは、十分かつ適切な監査証拠を入手する ことができない又は実務的ではないと判断することがあります。

 

このようなリスクは、定型的で重要な取引種類又は勘定残高が正確に又は網羅的に記録されていないことや、手作業がほとんど又は全く介在しないことを可能にする高度に自動化された処理の特性に関係していることがあります。

 

この場合には、これらのリスクに対応する内部統制は監査に関連するものであるので、監査人は当該内部統制を理解しなければなりません。

 

2-3-3 リスク評価の修正

 

アサーション・レベルの重要な虚偽表示リスクに関する監査人の評価は、監査実施中に入手 した他の監査証拠により変更されることがあります。

 

監査人は、リスク対応手続において監査証拠を入手した場合や新しい情報を入手した場合において、当初の評価の基礎となった監査証拠と矛盾するときには、リスク評価を修正し、これに応じて立案したリスク対応手続も修正しなければなりません。