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2021年3月期より適用になる見積開示会計基準~適用時期、経過措置、開示項目、注記事項

2018年11月に、公益財団法人財務会計基準機構(以下「FASF」という。)内に設けられている基準諮問会議より、「見積りの不確実性の発生要因」に係る注記情報の充実について検討することが提言されました。

 

これを受けて企業会計基準委員会(以下「ASBJ」という。)で検討が行われ、2020年3月31日に見積開示会計基準が公表されました。

 

1.適用時期及び経過措置

 

(1)適用時期

 

適用時期は、下記のとおりとなっています。

 

①原則適用

 

2021年3月31日以後終了する連結会計年度及び事業年度の年度末から適用

 

②早期適用

 

2020年3月31日以後終了する連結会計年度及び事業年度の年度末から適用

 

(2)経過措置

 

見積開示会計基準の適用初年度においては、表示方法の変更として取り扱われますが、改正遡及会計基準14項の定めにかかわらず、見積開示会計基準に定める注記事項について、適用初年度の連結財務諸表及び個別財務諸表に併せて表示される比較情報に記載しないことができるものとされています。

 

2.開示の基本的な方針

 

会計上の見積りの開示について原則(開示目的)を示した上で、具体的な開示内容は企業が当該原則(開示目的)に照らして判断することとされています。

 

見積開示会計基準の開発において、国際会計基準(IAS)第1号「財務諸表の表示」125項の定めを参考にしたとされています。

 

3.会計上の見積りの開示目的

 

・当年度の財務諸表に計上した金額が会計上の見積りによるもののうち

 

・翌年度の財務諸表に重要な影響を及ぼすリスクがある項目(有利となる場合及び不利となる場合の双方を含む(以下同じ)。)における会計上の見積りの内容について

 

・財務諸表利用者の理解に資する情報を開示すること

 

4.開示項目の識別

 

(1)識別される項目

 

通常、当年度の財務諸表に計上した資産及び負債が識別される項目になります。

 

開示する項目の識別の判断については、当年度の財務諸表に計上した金額が会計上の見積りにより行われている項目のうち、翌年度の財務諸表に重要な影響を及ぼすリスクがある項目を識別することとされています。

 

(2)識別される項目の留意事項

 

①減損損失

 

固定資産の減損損失の認識は行わないとした場合であっても、翌年度の財務諸表に重要な影響を及ぼすリスクを検討した上で、当該固定資産が開示項目として識別される可能性があります。

 

②市場価格の変動

 

直近の市場価額により時価評価する資産及び負債の市場価格の変動は、会計上の見積りに起因しないことから、項目の識別において考慮しないこととされています。

 

(3)開示項目の例外

 

以下の項目については、翌年度の財務諸表に重要な影響を及ぼすリスクがある場合には、開示を妨げないとされています。

 

・当年度の財務諸表に計上した収益及び費用

・会計上の見積りの結果、当年度の財務諸表に計上しないこととした負債

・注記において開示する金額を算出するにあたって見積りを行ったもの

 

5.注記事項

 

(1)記載方法

 

見積開示会計基準では、会計上の見積りの開示は独立の注記項目とされ、識別した項目が複数ある場合には、それらの項目名は単一の注記として記載することとされています。

 

(2)注記内容

 

開示する項目として識別した項目については、会計上の見積りの内容を表す項目名を注記し、併せて以下の注記が求められています。

 

・当年度の財務諸表に計上した金額

・会計上の見積りの内容について財務諸表利用者の理解に資するその他の情報

 

(3)理解に資するその他の情報

 

①項目の例示

 

「会計上の見積りの内容について財務諸表利用者の理解に資するその他の情報」については、以下の項目が例示されています。

 

チェックリストとして用いられるものではなく、企業の置かれている状況を勘案し、開示目的に照らして判断することが求められています。

 

A)当年度の財務諸表に計上した金額の算出方法

B)当年度の財務諸表に計上した金額の算出に用いた主要な仮定

C)翌年度の財務諸表に与える影響

 

②項目の記載方法等

 

例示項目(B)の主要な仮定については、(A)の算出方法に対するインプットとして想定される定量的情報若しくは定性的な情報又はこれらの組み合わせである場合も考えられます。

 

また、(C)について、定量的に示す場合には、単一の金額の方法のほか、合理的に想定される金額の範囲を示すことも考えられます。

 

(4)留意事項

 

「会計上の見積りの内容について財務諸表利用者の理解に資するその他の情報」については、単に会計基準等における取扱いを算出方法として記載したり、会計基準等における取扱いに基づく結果としての影響を記載したりするのではなく、企業の置かれている状況が理解できるような開示が求められていると考えられる点には留意が必要です。

 

6.個別財務諸表上の取扱い

 

見積開示会計基準に基づく会計上の見積りの開示は、連結財務諸表と個別財務諸表で同様の取扱いとすることを原則としています。

 

ただし、連結財務諸表と個別財務諸表の注記の重複を避けるという趣旨で、連結財務諸表を作成している場合の個別財務諸表においては、識別した項目ごとに、当年度の個別財務諸表に計上した金額の算出方法の記載をもって「会計上の見積りの内容について財務諸表利用者の理解に資するその他の情報」に代えることができるとされています。

この場合、連結財務諸表における記載を参照することができるとされています。

 

7.適用初年度の取扱い

 

(1)見積開示会計基準の適用初年度の取扱いは、以下のとおりです。

 

①本会計基準の適用は、表示方法の変更として取り扱う

 

②改正遡及会計基準 14 項の定めにかかわらず、見積開示会計基準に定める注記事項について、適用初年度の連結財務諸表および個別財務諸表に併せて表示される前連結会計年度における連結財務諸表に関する注記及び前事業年度における個別財務諸表に関する注記(比較情報)に記載しないことができる

 

(2)改正遡及会計基準と見積開示会計基準との関係

 

①改正遡及会計基準の取り扱い

 

財務諸表の表示方法を変更した場合には、原則として表示する過去の財務諸表について、新たな表示方法に従い財務諸表の組替えを行うこととされています。

 

②見積開示会計基準の取り扱い

 

適用初年度においては、見積開示会計基準に定める注記事項について比較情報に記載しないことができるとされています。

 

この取り扱いとした理由を以下に挙げています。

 

A) 適用初年度の比較情報を開示するために過去の時点における判断に見積開示会計基準を遡及的に適用した場合、当該時点に入手可能であった情報と事後的に入手した情報を客観的に区別することが困難であると考えられること。

 

B) また、多数の子会社を有している企業において、見積開示会計基準の適用初年度の比較情報として、すべての子会社から、見積開示会計基準に基づく開示に必要な過去の情報を入手し集計することは、実務上煩雑であること。

 

C) 特に、会計上の見積りの内容について、財務諸表利用者の理解に資するその他の情報に関して、翌年度の財務諸表に与える影響を定量的に記載する場合には、これを過去に遡って示すことが煩雑であると考えられること。

会計上の見積りを行う上での新型コロナウイルス感染症の影響の考え方

2020年4月に第429回企業会計基準委員会の議事概要を公表してから約10か月経過していますが、現状においても、新型コロナウイルス感染症の今後の広がり方や収束時期等を予測することが困難である状況に変わりはなく、会計上の見積りを行う上で、特に将来キャッシュ・フローの予測を行うことが極めて困難な状況であることに変わりはありません。

これまでに企業会計基準委員会が公表した議事概要の考え方を引き続き周知するとともに、現状における論点を審議し、これまでに公表した議事概要を更新する形で第451回企業会計基準委員会(2021年2月9日開催)の議事概要が公表されました。

 

Ⅰ 第429回企業会計基準委員会議事概要

 

企業会計基準委員会は、2020年4月10日に第429回企業会計基準委員会の議事概要として、会計上の見積りを行う上での新型コロナウイルス感染症の影響の考え方について以下を公表しています。

 

1.会計上の見積もり

 

会計基準では、会計上の見積りを「資産及び負債や収益及び費用等の額に不確実性がある場合において、財務諸表作成時に入手可能な情報に基づいて、その合理的な金額を算出すること」と定義しています。

 

2.新型コロナウイルス感染症

 

財務諸表を作成する上では、固定資産の減損、繰延税金資産の回収可能性など、様々な会計上の見積りを行うことが必要となります。

新型コロナウイルス感染症の広がりは、経済、企業活動に広範な影響を与える事象であり、また、今後の広がり方や収束時期等を予測することは困難であるため会計上の見積りを行う上で、特に将来キャッシュ・フローの予測を行うことが極めて困難な状況となっているものと考えられます。

このような状況において、会計上の見積りを行う上では、以下の点に留意する必要があるとしています。

 

3.留意事項

 

(1)一定の仮定

 

「財務諸表作成時に入手可能な情報に基づいて、その合理的な金額を算出する」上では、新型コロナウイルス感染症の影響のように不確実性が高い事象についても、一定の仮定を置き最善の見積りを行う必要があること。

 

(2)客観性のある情報

 

一定の仮定を置くにあたっては、外部の情報源に基づく客観性のある情報を用いることができる場合には、これを可能な限り用いることが望ましいこと。

 

ただし、新型コロナウイルス感染症の影響については、会計上の見積りの参考となる前例がなく、今後の広がり方や収束時期等について統一的な見解がないため、外部の情報源に基づく客観性のある情報が入手できないことが多いと考えられます。

この場合、新型コロナウイルス感染症の影響については、今後の広がり方や収束時期等も含め、企業自らが一定の仮定を置くことになります。

 

(3)「誤謬」との関係

 

企業が置いた一定の仮定が明らかに不合理である場合を除き、最善の見積りを行った結果として見積もられた金額については、事後的な結果との間に乖離が生じたとしても、「誤謬」にはあたらないものと考えられます。

 

「企業会計基準第24号第4項(8)」では、「誤謬」とは、原因となる行為が意図的であるか否かにかかわらず、財務諸表作成時に入手可能な情報を使用しなかったことによる、又はこれを誤用したことによる、次のような誤りをいう。」として、「事実の見落としや誤解から生じる会計上の見積りの誤り」を掲げています。

 

(4) 追加情報としての開示

 

最善の見積りを行う上での新型コロナウイルス感染症の影響に関する一定の仮定は、企業間で異なることになることも想定され、同一条件下の見積りについて、見積もられる金額が異なることもあると考えられています。

このような状況における会計上の見積りについては、どのような仮定を置いて会計上の見積りを行ったかについて、財務諸表の利用者が理解できるような情報を具体的に開示する必要があると考えられ、重要性がある場合は、追加情報としての開示が求められるものと考えられます。

 

Ⅱ.第432回企業会計基準委員会議事概要

 

企業会計基準委員会は、2020年5月11日に第432回企業会計基準委員会の議事概要として、第429回企業会計基準委員会の議事概要に以下を追加しています。

 

1.追加情報の開示の必要性

 

これまでに公表された2020年3月期の開示情報を踏まえると、新型コロナウイルス感染症の影響が大きいと考えられる業種においても、今後の法定開示書類において追加情報の開示が十分に行われないのではないかとの意見が聞かれています。

 

2.「重要性がある場合」の財務諸表利用者への有用な情報の提供

 

追加情報として開示する場合の「重要性がある場合」については、

 

(1)当年度に会計上の見積りを行った結果、当年度の財務諸表の金額に対する影響の重要性が乏しい場合であっても

 

(2)翌年度の財務諸表に重要な影響を及ぼすリスクがある場合には

 

(3)新型コロナウイルス感染症の今後の広がり方や収束時期等を含む仮定に関する追加情報の開示を行うことが財務諸表の利用者に有用な情報を与えることになると思われるので

 

(4)開示を行うことが強く望まれています。

 

Ⅲ.第436回企業会計基準委員会議事概要

 

第429回企業会計基準委員会の議事概要及び第432回企業会計基準委員会の議事概要で示した上記の考え方について四半期決算における考え方を明らかにして欲しいとの意見が聞かれたため、2020年6月26日に第436回企業会計基準委員会の議事概要において、以下を確認しています。

 

(1) 前年度の財務諸表において第429回企業会計基準委員会の議事概要の(4)に関する追加情報の開示を行っている場合で、四半期決算において新型コロナウイルス感染症の今後の広がり方や収束時期等を含む仮定に重要な変更を行ったときは、他の注記に含めて記載している場合を除き、四半期財務諸表に係る追加情報として、当該変更の内容を記載する必要があるものと考えられること。

 

(2) 前年度の財務諸表において仮定を開示していないが、四半期決算において重要性が増し新たに仮定を開示すべき状況になったときは、他の注記に含めて記載している場合を除き、四半期財務諸表に係る追加情報として、当該仮定を記載する必要があるものと考えられること。

 

(3) 前年度の財務諸表において第429回企業会計基準委員会の議事概要の(4)に関する追加情報の開示を行っている場合で、四半期決算において新型コロナウイルス感染症の今後の広がり方や収束時期等を含む仮定に重要な変更を行っていないときも、重要な変更を行っていないことが財務諸表の利用者にとって有用な情報となると判断される場合は、四半期財務諸表に係る追加情報として、重要な変更を行っていない旨を記載することが望ましいこと。

 

Ⅳ.第451回企業会計基準委員会議事概要

 

冒頭で述べていますように、新型コロナウイルス感染症の今後の広がり方や収束時期等を予測することが困難である状況に変わりはなく、会計上の見積りを行う上で、特に将来キャッシュ・フローの予測を行うことが極めて困難な状況であることに変わりはありません。

これまでに公表した議事概要の考え方を引き続き周知するとともに、現状における論点を審議し、これまでに公表した議事概要を更新する形で第451回企業会計基準委員会の議事概要が公表されました。

 

1.企業会計基準第31号「会計上の見積りの開示に関する会計基準」を適用する前の取扱い

 

企業会計基準第31号「会計上の見積りの開示に関する会計基準」(以下「企業会計基準第31号」という。)を適用する前の年度決算に関する取扱い及び四半期決算の取扱いについては、審議の上、第429回企業会計基準委員会の議事概要、第432回企業会計基準委員会の議事概要及び第436回企業会計基準委員会の議事概要で示した考え方が変わらないことが確認されています。

 

2.企業会計基準第31号を適用した後の取扱い

 

第429回企業会計基準委員会の議事概要及び第432回企業会計基準委員会の議事概要で示した考え方について、2021年3月31日以後終了する連結会計年度及び事業年度の年度末に係る連結財務諸表及び個別財務諸表から適用が開始される企業会計基準第31号との関係を明らかにして欲しい等の意見が聞かれており、審議の上、以下を確認しています。

 

(1)過去の議事概要の考え方

 

第429回企業会計基準委員会の議事概要及び第432回企業会計基準委員会の議事概要で示した考え方のうち、(1)(2)及び(3)については、企業会計基準第31号の適用後も、会計上の見積りを行う上で新型コロナウイルス感染症の影響を考えるにあたり変わらないこと。

 

(2)重要性がある場合の追加情報の開示

 

①企業会計基準第31号の開示

 

企業会計基準第31号は、重要な会計上の見積りとして識別した項目について、当年度の財務諸表に計上した金額、及び会計上の見積りの内容について財務諸表利用者の理解に資するその他の情報を開示することとしています。

 

②会計上の見積りの内容

 

例えば、当年度の財務諸表に計上した金額の算出方法、当年度の財務諸表に計上した金額の算出に用いた主要な仮定、及び翌年度の財務諸表に与える影響が会計上の見積りの内容に含まれるとしています。

 

③新型コロナウイルス感染症に関する一定の仮定の開示

 

第429回企業会計基準委員会の議事概要及び第432回企業会計基準委員会の議事概要で示した考え方のうち、(4)において重要性がある場合に追加情報としての開示が求められる新型コロナウイルス感染症の今後の広がり方や収束時期等の一定の仮定については、企業会計基準第31号で求められる開示に含まれることが多いと想定され、前段に記載した他の開示と合わせ、新型コロナウイルス感染症の影響について、より充実した開示になることが想定されています。

 

なお、企業会計基準第31号に基づく開示において、第429回企業会計基準委員会の議事概要及び第432回企業会計基準委員会の議事概要で示した開示がなされる場合、改めて追加情報として開示する必要はないものと考えられています。

 

(3)新型コロナウイルス感染症の影響に重要性がないと判断される場合の開示

 

新型コロナウイルス感染症の影響に重要性がないと判断される場合であっても、当該判断について開示することが財務諸表の利用者にとって有用な情報になると判断し、追加情報として開示しているケースが見られます。

企業会計基準第31号に基づく開示は、翌年度の財務諸表に重要な影響を及ぼすリスクがある項目について求められるものであるため、このような開示は、企業会計基準第31号により求められる開示には含まれませんが、引き続き、追加情報を開示する趣旨に沿ったものになると考えられています。

2019年12月の改正会社法に基づく会社法施行規則等及び開示府令の概要について

1.改正会社法の施行日

 

2019年12月4日に「会社法の一部を改正する法律」(以下「改正会社法」という。)が成立し、同月11日に公布されました。

 

また、改正会社法の施行に伴い、2020年11月27日に、「会社法の改正に伴う法務省関係政令及び会社法施行規則等の改正」が公布され、会社法施行令、会社法施行規則及び会社計算規則などが改正されました。

 

改正会社法及び関連する政令等の改正については、下記を除き、2021年3月1日に施行されています。

①株主総会資料の電子提供制度の創設

②会社の支店の所在地における登記の廃止

①、②は、改正会社法の公布日(2019年12月11日)から起算して3年6月を超えない範囲内において政令で定める日から施行されます。

 

2.主な改正内容

 

会社法の主な改正内容は以下のとおりです。

 

① 取締役等の報酬に関する規律の見直し

② 株式交付制度の新設

③ 株主総会資料の電子提供制度の新設及び整備

④ 事業報告に関する規定の改正

 

以下では、①、②、④について解説します。

 

3.取締役等の報酬に関する規律の見直し

 

(1)取締役等の報酬に関する規律の見直しの内容

 

① 上場会社等において、取締役の個人別の報酬の内容が株主総会で決定されない場合には、取締役会は、その決定方針を定め、その概要等を開示しなければならないこととされました

 

② 取締役の報酬として株式等を付与する場合の株主総会の決議事項に、株式等の数の上限等を加えることとされました

 

③ 上場会社が取締役等の報酬等として株式の発行等をする場合には、金銭の払込み等を要しないこととされました

 

④ 事業報告による情報開示を充実することとされました

 

(2)「株式報酬等取扱い」の公表

 

① 公表の経緯

改正会社法において、取締役等の報酬等として株式の発行等をする場合には、金銭の払込み等を要しないこととされました。

これを受けて、ASBJでは、これらの会計処理及び開示を明らかにすることを目的として、2021年1月28日に「株式報酬等取扱い」を公表しました。

 

② 適用開始日

「株式報酬等取扱い」は、2021年3月1日施行であり、「株式報酬等取扱い」はその日以後に生じた取引から適用されます。

 

上場会社が取締役等の報酬等として株式を無償交付する制度を用いる場合には株主総会の決議が必要となるため、2021年3月期決算に直接影響を与えることは限定的であると考えられます。

 

なお、2021年3月期定時株主総会で導入される会社もあると考えられますが、この場合は、2021年3月期決算においても、重要な後発事象の注記などに記載することも考えられます。

 

4.株式交付制度の新設

 

(1)株式交付制度の概要

 

① 新設の趣旨

完全子会社とすることを予定していない場合であっても、株式会社が他の株式会社を子会社とするため、自社の株式を他の株式会社の株主に交付することができる制度として、株式交付制度が新設されました。

 

② 現行制度の問題点

現行法上、自社の株式を対価として他の会社を子会社とする手段として株式交換の制度がありますが、完全子会社とする場合でなければ利用することができない点、また、自社の新株発行等と他の会社の株式の現物出資という構成をとる場合には、手続が複雑でコストが掛かるという点が指摘されていました。

当該制度はこれらの指摘に対応するために新設されたものです。

 

③ 当該制度のイメージ

 

 

(出所:法務省「会社法の一部を改正する法律の概要」(3/3)より一部抜粋 )

 

(2)会計処理の概要

 

① 会計基準

株式交付制度が新設されましたが、企業会計基準第21号「企業結合に関する会計基準」等の改正はされておらず、当該制度に関する会計処理は、現行の会計基準に従って整理していくことになると考えられます。

 

② 会計処理の考え方

株式交付は、株式交換と同じ組織法上の行為として位置付けられており、現物出資ではなく、株式交換に準じて処理されるものと考えられます。

 

したがって、株式交付が取得とされる場合、株式交付親会社が取得する株式交付子会社株式の取得の対価は、企業会計基準適用指針第10号「企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針」38項に基づいて、時価により算定することが考えられます。

 

③ 株式交付制度と株式の取得

株式交付制度は子会社化を目的とするものであり、基本的に取得に該当するものと考えられます。

 

ただし、株式交付制度では、その範囲を客観的かつ形式的な基準により判断するために、子会社化の要件として、議決権の50%超を保有することにより子会社化する場合に限られています。

 

議決権の40%以上を保有しており、会社法施行規則第3条3項2号イからホまでのいずれかの要件に該当することとして既に子会社としているケースで、株式交付制度を用いて50%超を保有することとなる場合には、共通支配下の取引に該当することになります。

 

④ 株式交付親会社の株主資本変動額

株式交換と同様に、株式交付制度においても、支配取得の場合、共通支配下関係にある場合及びそれ以外の場合(逆取得や共同支配企業の形成等が該当)といった企業結合の類型に応じて、株主資本変動額を算定することになります。

 

具体的には、株式交付に際し、株式交付親会社において変動する株主資本等の総額は、それぞれ下表の方法に従い定まる額となります。

 

また、その内訳である株式交付親会社の資本金及び資本剰余金の増加額についても規定されています。

 

A)支配取得の場合:吸収型再編対価時価又は株式交付子会社の株式及び新株予約権等の時価を基礎として算定する方法

 

B)共通支配下関係にある場合:株式交付子会社の財産の株式交付の直前の帳簿価額を基礎として算定する方法

 

C)左記以外の場合:株式交付子会社の財産の株式交付の直前の帳簿価額を基礎として算定する方法

 

5.事業報告に関する規定の改正

 

株式会社の事業報告について下記の項目などの見直しをするとともに、所要の規定の整備が行われました。なお、公開会社が対象で、2021年3月期から適用になります。

 

(1)株式会社の現況に関する事項

 

親会社との間に当該株式会社の重要な財務及び事業の方針に関する契約等が存在するときは、その内容の概要に関する記載事項の追加

 

(2)株式会社の会社役員に関する事項

 

取締役、会計参与、監査役又は執行役の報酬等に関する記載事項の拡充

 

(3)株式会社の役員等賠償責任保険契約に関する事項

 

役員等賠償責任保険契約に関する事項や取締役、会計参与、監査役又は会計監査人と締結している補償契約に関する記載事項の追加

 

なお、役員等賠償責任保険契約及び補償契約に係る記載事項については、附則の中で、施行日以後に締結されたこれらの契約に係る事項に限るとされています。

 

(4)株式会社の株式に関する事項

 

報酬等として付与された株式や新株予約権等に関する記載事項の追加

 

(5)社外役員等に関する特則

 

社外取締役が果たすことが期待される役割に関して行った職務の概要の記載

 

6.改正会社法に伴う金融庁関係政府令等の改正~2021年3月期の有価証券報告書の記載の変更

 

(1)改正会社法に伴う金融庁関係政府令等の改正

 

① 改正会社法の施行等に伴い、2021年2月3日に「会社法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律の一部の施行に伴う金融庁関係政令の整備等に関する政令」(以下「改正金融庁関係政府令等」という。)が公布されており、一部を除き、改正会社法の施行の日(2021年3月1日)から施行、適用されています。

 

② 開示府令においては、株式交付制度に係る所要の規定の整備がされたほか、改正会社法において補償契約及び役員等賠償責任保険契約に関する規定が新設されたことを踏まえ、「コーポレート・ガバナンスの概要」の開示項目の拡充がされています。

 

③ また、改正会社法において取締役の個人別の報酬等に係る決定方針の規定が新設されたことを受け、「役員の報酬等」においても、開示拡充のための改正がされています。

 

(2)改正金融庁関係政府令等の主な内容

 

改正金融庁関係政府令等のうち、財務諸表規則、連結財務委諸表規則等の財務諸表規則等及び開示府令に関する改正の主な内容は以下のとおりです。

なお、これらは改正会社法の施行の日(2021年3月1日)から施行、適用されるため、2021年3月期の有価証券報告書から適用されることになります。

また、投資者の理解が容易になる観点から、記載内容が同様である又は重複する箇所があれば、適宜、当該他方を参照、引用するなどして記載することになると考えられます。

 

①財務諸表規則等

財務諸表規則等の改正内容と改正会社法との関連は以下のようになっています。

 

ア) 取締役等の報酬等として株式を無償交付する規定の新設関連

株式引受権の表示に関する規定の新設(純資産の部に「株式引受権」が新設)(連結財務諸表規則42条、43条の2の2等)

2021年3月1日施行であり、上場会社が取締役等の報酬等として株式を無償交付する制度を用いる場合には株主総会の決議が必要となります。

 

イ) 株式交付制度の新設関連

株式交付制度に関する定義の新設(財務諸表規則8条36項4号等)

 

②開示府令

 

開示府令の改正内容と改正会社法との関連は以下のようになっています。

 

ア) 取締役等の報酬等として株式を無償交付する規定の新設関連

自己資本比率及び自己資本利益率の算定において、純資産額から株式引受権を控除(開示府令第二号様式(記載上の注意)(25)a(j),(k)、b(m),(n))

2021年3月1日施行であり、上場会社が取締役等の報酬等として株式を無償交付する制度を用いる場合には株主総会の決議が必要となります。

 

イ) 補償契約及び役員等賠償責任保険契約に関する規定の新設関連

「コーポレート・ガバナンスの概要」において、補償契約及び役員等賠償責任保険契約を締結した場合には、締結した契約の内容(開示府令第二号様式(記載上の注意)(54)a、b)

補償契約及び役員等賠償責任保険契約に係る記載事項については、附則の中で、施行日以後に締結されたこれらの契約に係る事項に限るとされています。

 

ウ) 取締役の個人別の報酬等についての決定方針に関する規定の新設関連

  • 「役員等の報酬」において、取締役の個人別の報酬等についての決定方針に関する記載の拡充(開示府令第二号様式(記載上の注意)(57)a)
  • 報酬等の種類別の開示に、非金銭報酬等を追加(開示府令第二号様式(記載上の注意)(57)b)
  • 取締役会から一任された取締役による、取締役の個人別の報酬等の内容を決定した場合の委任権限の内容等(開示府令第二号様式(記載上の注意)(57)c)

 

 

 

会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準の概要について

2009年12月4日に「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」(企業会計基準第24号、以下、遡及会計基準)と同適用指針(企業会計基準適用指針第24号、以下、適用指針)が公表され、2011年4月1日以後開始する事業年度の期首から適用されています。

 

また、「関連する会計基準等の定めが明らかでない場合に採用した会計処理の原則及び手続」の取扱いを明らかにした改正遡及会計基準が2020年3月31日に公表されました。

 

1.遡及会計基準の概要

 

(1)会計方針の変更と表示方法の変更

 

原則として遡及処理します。

 

(2)過去の誤謬の訂正

 

遡及会計基準上は原則として遡及処理することとされています。

金融商品取引法上は訂正報告書の制度が存在するため、遡及処理に係る規定は通常は適用されないと考えられます。

 

(3)会計上の見積りの変更(例えば有形固定資産の耐用年数の変更など)

 

遡及処理せず、その影響は将来に向けて認識します。

 

(4)減価償却方法の変更

 

会計上の見積りの変更と同様に、遡及修正は行いません。

 

(5)すでに公表されているものの、まだ適用されていない新しい会計基準等がある場合

 

「未適用の会計基準等に関する注記」が求められます。

 

(6)個別財務諸表における適用

 

特段の取扱いは設けず、連結財務諸表と同様の取扱いとなりますが、注記については一部簡略化が図られています。

 

(7)「関連する会計基準等の定めが明らかでない場合に採用した会計処理の原則及び手続」の取扱い

 

重要な会計方針としての注記が必要となります。

 

2.会計方針の変更

 

(1)会計上の原則的な取扱い

 

① 会計基準等の改正に伴う会計方針の変更の場合

 

会計基準等の改正には、既存の会計基準等の改正又は廃止のほか、新たな会計基準等の設定が含まれます。また、会計基準等を早期適用する場合も含まれます。

 

ア)会計基準等に特定の経過的な取扱いが定められていない場合には、新たな会計方針を過去の期間の全てに遡及適用します。

遡及適用する期間は、必要な場合には、会社設立時までさかのぼることになるものと考えます。

 

イ)経過措置が定められている場合には、その定めに従います。

 

② 上記以外の正当な理由による会計方針の変更の場合(自発的な会計方針の変更)

 

新たな会計方針を過去の期間の全てに遡及適用します。

 

③ 遡及適用の場合の表示上の取扱い

 

遡及適用する場合には、遡及適用の影響額を、表示する財務諸表のうち、最も古い期間の期首の資産、負債及び純資産の額に反映するとともに、各期間の財務諸表には、各期間の影響額を反映させます。

 

ア)有価証券報告書では、遡及処理後の前期財務諸表と当期財務諸表を開示することになります。

 

イ)会社法計算書類では遡及処理後の当期財務諸表のみ開示されるため、遡及適用の影響額は、当期の株主資本等変動計算書の期首残高に反映させます。

 

3.過去の誤謬の訂正

 

(1)会計上の取扱い

 

遡及会計基準においては「修正再表示」を行うこととし、遡及処理することとされています。

 

(2)例外

 

なお、過去の誤謬については、修正再表示が実務上不可能な場合の取扱いは、遡及会計基準上は明示されていませんが、まれに実務において誤謬の修正再表示が不可能な場合が生じる可能性を否定するものではないとされています。

また、過去の誤謬に関して、重要性の判断に基づいて、過去の財務諸表を修正再表示しない場合は、損益計算書上、その性質により、営業損益又は営業外損益として認識するものと考えられます。

 

4.会計上の見積りの変更

 

会計上の見積りの変更に関しては、その影響を当期以降の財務諸表において認識することとされています。

 

会計上の見積りの変更が行われた場合、以下の会計処理を行います。

 

① 当該変更が変更期間のみに影響する場合 ⇒ 当該変更期間に会計処理

 

② 当該変更が将来の期間にも影響する場合 ⇒ 将来にわたり会計処理

 

5.「関連する会計基準等の定めが明らかでない場合に採用した会計処理の原則及び手続」の取扱い

 

2018年11月に、FASFに設置されている基準諮問会議より、「関連する会計基準等の定めが明らかでない場合に採用した会計処理の原則及び手続」に係る注記情報の充実について検討することが提言されました。

 

ASBJのディスクロージャー専門委員会から、我が国の会計基準等においては、取引その他の事象又は状況に具体的に当てはまる会計基準等が存在しない場合の開示に関する会計基準上の定めが明らかでなく、開示の実態も様々であったと考えられることから、「関連する会計基準等の定めが明らかでない場合に採用した会計処理の原則及び手続」の取扱いを明らかにすることが有用であるとの報告がなされました。

 

これを受けてASBJで検討が行われ、改正遡及会計基準が2020年3月31日に公表されました。

 

(1)関連する会計基準等の定めが明らかでない場合

 

① 「関連する会計基準等の定めが明らかでない場合」の定義

 

特定の会計事象等に対して適用し得る具体的な会計基準等の定めが存在しないため、会計処理の原則及び手続を策定して適用する場合をいうとされています。

 

例えば、関連する会計基準等が存在しない新たな取引や経済事象が発生した場合で重要性がある場合が含まれるとされています。

 

② 「会計基準等」の定義

 

A)会計基準等には、対象とする会計事象等自体に関して適用される会計基準等については明らかではないものの、参考となる既存の会計基準等があり、当該会計基準で定められている会計処理の原則及び手続を採用したときも含まれるとされています。

 

B)会計基準等には、一般に公正妥当と認められる会計処理の原則及び手続を明文化して定めたもの(法令等)も含まれるとされています。

 

C)法令等によらず、業界の実務慣行とされている会計処理の原則及び手続のみが存在する場合で、当該会計処理の原則及び手続に重要性があると考えられる場合も、「関連する会計基準等の定めが明らかでない場合」に該当するものと考えられます。

 

(2)重要な会計方針の開示目的

 

① 重要な会計方針に関する注記の開示目的

財務諸表を作成するための基礎となる事項を財務諸表利用者が理解するために、採用した会計処理の原則及び手続の概要を示すことにあり、当該開示目的は、関連する会計基準等の定めが明らかでない場合も同様であるとされています。

 

② 重要な会計方針の考え方

改正遡及会計基準は、重要な会計方針に関する従来の考え方を変更するものではなく、関連する会計基準等の定めが明らかな場合における取扱いに関する従来の実務の変更を意図しているものとではないとされている点には留意が必要です。

 

(3)企業会計原則注解(注1-2)の定めの引継ぎ

 

① 企業会計原則注解(注1-2)の定めを引き継ぎ、重要な会計方針について、採用した会計処理の原則及び手続の概要を注記することとされています。

 

② 会計基準等の定めが明らかであり、当該会計基準等において代替的な会計処理の原則及び手続が認められていない場合には、会計方針に関する注記を省略することができるとされています。

 

③ 会計方針の例として、以下のようなものが例示されており、また、重要性の乏しいものについては注記を省略することができるとされています。

 

・有価証券の評価基準及び評価方法

・棚卸資産の評価基準及び評価方法

・固定資産の減価償却の方法

・繰延資産の処理方法

・外貨建資産及び負債の本邦通貨への換算基準

・引当金の計上基準

・収益及び費用の計上基準

 

(4)適用時期及び経過措置

 

2021年3月31日以後終了する事業年度の年度末に係る財務諸表から適用することとすることとし、公表日以降終了する事業年度の年度末から早期適用できるとされています。

 

また、改正遡及会計基準を適用したことにより新たに注記する会計方針は、表示方法の変更には該当しないものの、関連する会計基準等の定めが明らかでない場合に採用した会計処理の原則及び手続を新たに開示するときには、追加情報としてその旨を注記することとされています。

TCFD を活用した経営戦略立案~気候関連リスク・機会のシナリオ分析実践ポイント

環境省は、2019 年 3 月に「TCFD を活用した経営戦略立案のススメ~気候関連リスク・機会を織り込むシナリオ分析実践ガイド~」を発表し、2020 年 3 月に、①シナリオ分析を進める上でポイントとなるステップごとの解説、②2019年度支援企業 12 社の事例、及び③参考となる外部データ、ツール集を追加し、実践ガイドver2.0(以下、「実践ガイド」)として改定し発表しました。

 

実践ガイドでは、第2章においてシナリオ分析のステップを説明しています。

 

1.シナリオ作成のプロセス

 

シナリオ作成のプロセスについては、

 

①ガバナンス整備、

②リスク重要度の評価、

③シナリオ群の定義、

④事業インパクト評価、

⑤対応策の定義、

⑥文書化と情報開示

 

という6ステップに分け、それぞれのステップについて ToDo を図解しています。

 

(出所)環境省「TCFDを活用した経営戦略立案のススメ~気候関連リスク・機会を織り込むシナリオ分析実践ガイドVer2.0

 

2.シナリオ分析を始めるにあたって

 

シナリオ分析を始めるにあたり、経営陣にTCFDの意義を理解してもらうことが重要です。 また、分析実施体制の構築、分析対象の設定、分析時間軸の設定が必要となります。

 

3.リスク重要度の評価

 

(1)リスク重要度の定義

 

現在及び将来に想定される、組織が直面する気候変動リスクと機会は何か?

それらは将来に重要となる可能性があるか?

組織のステークホルダーは関心を抱いているか?

 

(2)概要

 

リスク項目の列挙、起こりうる事業インパクトの定性化、リスク重要度の評価を実施します。

 

① 第一段階:リスク項目の列挙

 

対象となる事業に関するリスク・機会項目を列挙します。

 

② 第二段階:起こりうる事業インパクトの定性化

 

列挙されたリスク・機会項目について、 起こりうる事業インパクトを定性的に表現していきます。

 

③ 第三段階:リスク重要度の決定

 

リスク・機会が起こった場合の事業インパクトの大きさを軸に、重要度を決定します。

 

3.シナリオ群の定義

 

(1)シナリオ群の定義

 

いかなるシナリオ(と物語)が 組織にとって適切か?

入力変数と仮定、分析手法を検討する。

いかなるシナリオを参照すべきか?

 

(2)概要

 

シナリオの選択、パラメータ(変数)に関する将来情報の入手、世界観の整理を実施します。

 

① 第一段階:シナリオの選択

 

・2℃未満シナリオを含む、複数の温度帯のシナリオを選択していきます。

 

・どのようなシナリオを選ぶか

可能な限り温度帯や世界観が異なるシナリオを選択することが、「想定外を無くす」ことに繋がります。

各シナリオの特徴やパラメータを踏まえ、自社の業種や状況に合わせたシナリオの選択が重要です。

 

② 第二段階:関連パラメータの将来情報の入手

 

・リスク、機会項目に関するパラメータの客観的な将来情報を入手し、自社に対する影響をより具体化します。

 

・外部情報より、パラメータの客観的な将来情報を入手することが重要です。

 

③ 第三段階:ステークホルダーを意識した世界観の整理

 

・(必要であれば)将来情報を元に、将来のステークホルダーの行動など自社を取り巻く世界観を鮮明化し、社外の視点も取り入れ社内で合意形成を図ります。

 

・事業部を含む関連部署が納得感のある世界観を「対話を通じて構築」することが重要となります。

 

・ナラティブな文章やポンチ絵による視覚化によってディスカッションを行いやすい環境をつくり、関連部署に気候変動を自分事と感じてもらい、シナリオの意味、世界観を共有していくことが重要です。

 

4.事業インパクト評価

 

(1)事業インパクト評価の定義

 

それぞれのシナリオが組織の戦略的・財務的ポジションに対して与えうる影響を評価します。

 

(2)概要

 

P/LやB/Sへのインパクトの整理、試算、成行の財務指標とのギャップの把握を実施します。

 

① 第一段階:リスク・機会が影響を及ぼす財務指標を把握

 

・気候変動がもたらす事業インパクトが自社のP/LやB/Sのうち、どの財務指標に影響を及ぼすかを整理します。

 

・どのような内部データが試算に使用可能か

「事業別/製品別売上情報」「操業コスト」「原価構成」「GHG排出量情報」等、事業部等が通常使用しているデータを用いることで、より企業の実態と近い試算が可能となります。

 

② 第二段階:算定式の検討と財務的影響の試算

 

・試算可能な財務指標に関して算定式を検討し、内部情報を踏まえて財務的影響を試算します。

 

・定量的に試算できないものはどう取り扱うか

 

・定性的もしくは科学的根拠が乏しい情報に関しては、継続的なモニタリングや外部有識者へのヒアリング等を実施します。検討済み/未検討リスクを整理し次のアクションを明確化することが重要です。

 

③ 第三段階:成行の財務指標とのギャップを把握

 

・試算結果を基に、将来の事業展望にどの程度のインパクトをもたらすかを把握します。

 

・成行の事業展望(将来の経営目標・計画)に気候変動がどの程度の影響をもたすかを把握します。

 

・事業インパクトが大きいリスク、機会は何か、気候変動により将来の経営標の事業展望はどの程度脅かされるか等が把握可能となります。

 

5.対応策の定義

 

(1)対応策の定義

 

① 特定されたリスクと機会を扱うために、適用可能で現実的な選択肢を特定します

 

② 「STEP5対応策の定義 本実践ガイドの対象」

 

対応策がビジネスモデルの変革等に至るには、「経営との統合(中期経営計画への気候変動の組込)」が重要であり、本ガイドでは、統合への流れを記載しています。

 

(2)概要

 

自社の対応状況の把握、対応策の検討、具体的アクション・社内体制の構築を実施します。

 

① 第一段階:自社のリスク•機会に関する対応状況の把握

 

・事業インパクトの大きいリスク・機会について、自社の対応状況を把握します。

 

・必要であれば競合他社の対応状況も確認します。

 

② 第二段階:リスク対応・機会獲得のための今後の対応策の検討

 

・事業インパクトの大きいリスク、機会について、具体的な対応策を検討します。

 

・どのような状況下でも、レジリエント(強靭)な対応策を検討しておくことが重要となります。

 

③ 第三段階:社内体制の構築と具体的アクション、シナリオ分析の進め方の検討

 

・対応策を推進するために必要となる社内体制を構築し、関係部署とともに具体的アクションに着手します。

 

・またシナリオ分析の今後の進め方を検討します。

 

・社内体制の構築と関連部署の巻き込み、シナリオ分析の進め方を検討します。

 

・並行して中期経営計画等への気候変動の組込を進めます。

 

6.シナリオ分析結果を経営にどのように活かしていくか

 

気候変動を経営戦略検討のプロセスに入れ込むことが重要です。

まずは直近の中期経営計画へ気候変動を組み入れることも一案です。

 

TCFD を活用した経営戦略立案のススメ~気候関連リスク・機会を織り込むシナリオ分析実践ガイドVer2.0~より抜粋

 

7.シナリオ分析後の社内体制はどのようなものがあるか

 

シナリオ分析結果の実効性を持たせるべく、経営企画の直下に気候変動等に関する横断的な組織を作ることも考えられます。

TCFD を活用した経営戦略立案のススメ~気候関連リスク・機会を織り込むシナリオ分析実践ガイドVer2.0~より抜粋

 

8.どのようなステップで今後進めればよいのか

 

気候変動と経営との統合・企業価値向上がゴールとなります。

シナリオ分析を契機に、開示・体制の再構築(経営戦略との統合)のサイクルを継続的に実施していきます。

TCFD を活用した経営戦略立案のススメ~気候関連リスク・機会を織り込むシナリオ分析実践ガイドVer2.0~より抜粋

 

TCFD を活用した経営戦略立案~気候関連リスク・機会のシナリオ分析の位置付け

環境省は、2019 年 3 月に「TCFD を活用した経営戦略立案のススメ~気候関連リスク・機会を織り込むシナリオ分析実践ガイド~」を発表し、2020 年 3 月に、①シナリオ分析を進める上でポイントとなるステップごとの解説、②2019年度支援企業 12 社の事例、及び③参考となる外部データ、ツール集を追加し、実践ガイドver2.0(以下、「実践ガイド」)として改定し発表しました。

 

実践ガイド第1章では、TCFD 提言におけるシナリオ分析の位置づけについて解説しています。

 

1.気候変動と企業経営

 

気候変動は企業経営にとって明確なリスクと機会になりえます。

 

TCFD を活用した経営戦略立案のススメ~気候関連リスク・機会を織り込むシナリオ分析実践ガイドVer2.0~より抜粋

 

2.TCFDの目指す姿

 

TCFDは企業の段階的な対応を期待しています。

 

TCFD を活用した経営戦略立案のススメ~気候関連リスク・機会を織り込むシナリオ分析実践ガイドVer2.0~より抜粋

 

3.TCFD提言の求めているもの

 

TCFDは、全ての企業に対し、

 

①2℃目標等の気候シナリオを用いて、

②自社の気候関連リスク・機会を評価し、

③経営戦略・リスク管理へ反映、

④その財務上の影響を把握、開示すること

 

を求めています。

 

4.財務上の影響

 

(1)TCFDでは、気候関連リスク・機会と財務上の影響の開示対象を例示しています。

 

気候関連リスクと機会が与える財務影響(全体像)

TCFD を活用した経営戦略立案のススメ~気候関連リスク・機会を織り込むシナリオ分析実践ガイドVer2.0~より抜粋

 

(2)気候関連リスク

 

TCFDでは気候関連リスクを、低炭素経済への「移行」に関するリスクと気候変動による「物理的」変化に関するリスクに大別しています。

 

種類        定 義           種 類        主な側面・切り口の例

出所:気候関連財務情報開示タスクフォース,気候関連財務情報開示タスクフォースによる提言(最終版),2017,10ページを基に環境省作成 1-12

 

(3)気候関連機会

 

TCFDでは気候変動緩和策・適応策による経営改革の機会を5つに分類し例示しています。

 

① 資源の効率性

② エネルギー源

③ 製品・サービス

④ 市場

⑤ 強靭性(レジリエンス)

 

5.TCFDの要求項目

 

TCFDの要素は、ガバナンス・戦略・リスク管理・指標と目標の4つです。

 

(1)ガバナンス=経営陣の関与

 

気候関連リスクと機会を経営戦略に反映するためには、経営陣を巻き込んだ体制が必要であり、TCFDでは監督体制や経営者の役割の開示を求めています。

 

① リスクと機会に対する取締役会の監督体制

② リスクと機会を評価・管理する上での経営者の役割

 

(2)戦略

 

短期・中期・長期のリスクと機会、事業・戦略・財務に及ぼす影響、2℃目標等の気候シナリオを考慮した組織戦略の強靭性の開示を求めています。

 

① 短期・中期・長期のリスクと機会

② 事業・戦略・財務に及ぼす影響

③ 2℃目標等の気候シナリオを考慮した組織戦略の強靭性

 

(3)リスク管理

 

リスク識別・評価のプロセス、リスク管理のプロセス、組織全体のリスク管理への統合状況について、開示を求めています。

 

① リスク識別・評価のプロセス

② リスク管理のプロセス

③ 組織全体のリスク管理への統合状況

 

(4)指標と目標

 

組織が戦略・リスク管理に則して用いる指標、GHG排出量、リスクと機会の管理上の目標と実績について、開示を求めています。

 

① 組織が戦略・リスク管理に則して用いる指標

② GHG 排出量(Scope 1、2、3)

③ リスクと機会の管理上の目標と実績

 

6.シナリオ分析の意義

 

気候関連リスクと機会が与える影響を評価するため、シナリオ分析による情報開示を推奨しています。シナリオ分折に係る技術的補足書も策定しています。

 

(1)シナリオ分析の有用性

 

シナリオ分析は、長期的で不確実性の高い課題に対し、組織が戦略的に取り組むための手法として有益です。

 

気候関連リスクが懸念される業種にとって重要シナリオの前提条件も含めて開示すべきです。シナリオ分析には能力・労力が必要となりますが、組織にもメリットがあります。

 

(2)シナリオ分析は、将来の不確実性に対応し戦略立案と内外対話を可能にします。

 

① 相応の蓋然性をもって予見可能な未来の場合・・・

 

TCFD を活用した経営戦略立案のススメ~気候関連リスク・機会を織り込むシナリオ分析実践ガイドVer2.0~より抜粋

 

  • 将来の変化に経営戦略が即応できない
  • 将来の見立てについての水掛け論が続く
  • 事業のレジリエンスを疑われる

 

② 不確実であり、それゆえ可能性もある未来の場合・・・

 

 

TCFD を活用した経営戦略立案のススメ~気候関連リスク・機会を織り込むシナリオ分析実践ガイドVer2.0~より抜粋

 

  • 将来の変化に柔軟に対応する経営が可能
  • 将来について、主観を排除した議論ができる
  • 事業のレジリエンスを主張できる

パリ協定の目標実現に向けて~「クライメート・トランジション・ファイナンスの考え方」

経済産業省は「環境イノベーションに向けたファイナンスのあり方研究会」を設置し、2020 年 3 月に「クライメート・トランジション・ファイナンスの考え方」をとりまとめました。

 

1.背景

 

(1)令和2年から実行フェーズに入るパリ協定に基づき気候変動対策を着実に実施していくための環境整備が重要である。

 

(2)世界的に、アジア等の新興国を中心としてパリ協定の目指す長期目標の実現に向けて莫大な規模の投資が必要となる。

 

(3)これらの投資の促進が急務である。

 

(4)グリーン・ボンド等を促進していく従来の取り組みに加え、以下の点を踏まえることが重要である。

 

① 低炭素化に資するより幅広い分野に投資を促進する

 

② 真に世界全体で温室効果ガスの排出を削減していくために、グローバルで各産業部門における低炭素化を図っていく必要がある

 

③ 低排出に向けた適切な取り組みや改善の行われている分野に資金を促す

 

④ 対炭素化・脱炭素化に向けた長期的な研究開発等を促す

 

⑤ グローバル・バリューチェーン全体、ライフサイクル全体で温室効果ガスの排出削減を促す

 

(5)パリ協定の目標の実現に向けた着実な以降に関する基準を策定することで、こうした分野へのファイナンスの流れを促進していくことが必要である。

 

2.基本的な考え方

 

(1)再生可能エネルギー等の既に脱炭素化・低炭素化の水準にある活動へのファイナンスを促進していくこととあわせて、温室効果ガス排出産業部門が脱炭素化・低炭素化を進めていく移行の取組(トランジション)へのファイナンスについても、促進していくことが重要である。

 

(2)トランジションへのファイナンスは、パリ協定の目標及び各国のパリ協定に基づく削減目標に向けて移行を進めている事業へのファイナンスと位置づける。

 

(3)具体的にどのような事業が該当するかは、各国・地域ごとに異なりうる。

 

(4)「トランジションへのファイナンス」の考え方を整理するにあたっては、以下を提案する。

 

① 国際的な原則は、特定の産業や技術を排除することなく、多様な国々・地域に適用しうる包摂的で柔軟なアプローチを採用しつつ、

 

② 詳細については各国・地域毎に実情に応じた考え方が深められていくべき

 

3.国際的な原則を検討するにあたっての提案

 

一般的な形での原則を提案した内容。実際の運用にあたっては、各国・地域において詳細を検討していく。

 

(1)パリ協定との整合性に関する基準

 

パリ協定及び各国の削減目標の達成に向けた移行へのファイナンスであること。

 

(2)事業実施主体に関する基準

 

① 中長期的なビジョンや行動計画等を示すなど、移行への取組に積極的に取り組んでいる事業主体へのファイナンスであること。

 

② 温室効果ガス削減目標を実際に達成しているか今後の達成目標に向けて取り組みを実施している事業主体へのファイナンスであること。

 

(3)対象事業に関する基準

 

① 温室効果ガス排出産業部門において国際的または当該地域で、温室効果ガス低排出の観点でベストパフォーマンスとされる水準の実現・実施のための事業に対するファイナンスであること。

 

② 温室効果ガス排出産業部門において国際的または当該地域で、温室効果ガス低排出の観点でベストパフォーマンスとされる水準の実現・実施のための製品に関連・貢献するファイナンスであること。

 

4.その他、考慮することが望ましい観点

 

  • グローバル・バリューチェーンを有する産業の国際的な温室効果ガス排出削減への貢献の観点

 

  • ライフサイクル全体での排出削減の観点

 

  • 環境以外のSDGs等の環境目的への貢献、影響の観点

気候関連事項のIFRS基準財務諸表の開示に関する教育目的文書の概要について

国際会計基準審議会(以下、IASB)は 2020 年 11月 20 日に、IFRS 基準のうち気候関連事項の財務諸表開示に関連する規定をまとめた教育目的で作成された文書(以下、「本文書」)を公表しました。

 

Ⅰ 本文書の意義

 

本文書により IFRS 基準の規定が変更、削除又は追加されることはありません。

作成意図は確実な気候関連の開示を下支えすることにあります。

 

IFRS 基準は気候関連事項に関する明確な言及をしていませんが、企業はIFRS 基準を適用する際にその影響が重要となる場合には気候変動事項を考慮しなければなりません。

 

本文書に例として取り上げられているIFRS 基準はすべてを網羅するものではなく、例示以外でも気候関連事項が企業の財務諸表に影響を与える場合もあることに留意が必要です。

 

Ⅱ 本文書の要点

 

本文書では重要な要点を、IFRSの基準ごとにとりまとめています。

「財務諸表の開示」、「資産の減損」、「公正価値測定」についての記載をみてみましょう。

 

1.IAS 第1号「財務諸表の表示」

 

本文書では、気候関連事項のように IFRS 基準書に特に規定されておらず、他に表示されることがなくても、企業の財務諸表を適切に理解するための情報の開示が IAS 第1号で求められていることを強調しています。

 

(1)重要な情報

 

気候関連事項に関する情報は、企業に重要な影響を与え、投資決定に影響を及ぼすと投資家が合理的に見込む場合には目的適合となります。

 

さらに、IAS 第 1号は、重要な情報が財務諸表から欠落していないかどうかも検討しなければならないと定めています。

 

(2)将来に関する仮定

 

IAS 第 1号では、翌事業年度に帳簿価額の重要な修正が生じる著しいリスクが存在する場合、企業が将来について行う仮定に関する情報の開示が求められています。

 

また、IAS 第1号では、認識する金額に最も著しい影響を与える判断についても開示しなければならないと定められています。

 

気候関連事項は、企業が行う多くの判断に影響を与えますので、企業はそれらの判断を開示することを検討しなければなりません。

 

(3)継続企業

 

IAS 第 1号では、企業の継続企業として存続する能力に著しい疑義を生じさせる重要な不確実性の開示が求められています。

 

気候関連事項によって、企業の継続企業として存続する能力に著しい疑義を生じさせる事象又は状況に関する重要な不確実性が生じることがあります。

 

継続企業の前提で財務諸表を作成することが適切かどうかを評価するにあたり、気候関連事項に関する情報は他の不確実性と併せて検討しなければなりません。

 

2.IAS 第36号「資産の減損」

 

(1)減損テスト

 

資産又は資金生成単位(CGU)(のれんを含む)の帳簿価額は、減損テストに気候関連事項の影響を考慮に入れないとしたら過大に表示される可能性があります。

 

企業は各報告期間に減損の兆候が存在するかどうかを評価しなければなりません。

気候関連事項に対するエクスポージャーは、資産(又は資産のグループ)が減損している兆候になり得ます。

 

たとえば、温室効果ガスを排出する製品の需要が低下する場合、それは製造工場が減損していることを示唆する可能性があります。

 

気候関連事項に関する規制の変更も考慮しなければなりません。

 

のれんの年次減損テストを行う場合にも同じように、これらの要因について考慮する必要があります。

 

(2)将来の仮定

 

IAS 第 36 号では、回収可能価額が使用価値を用いて見積もられる場合、将来の経済状況の予測に基づく一定のレンジを定め、経営者の最良の見積りを表す合理的かつ裏付け可能な仮定を基に決定しなければならないと定められています。

 

したがって、企業は、気候関連事項がこれらの仮定に影響を与えるかどうかを検討しなければなりません。

 

(3)将来キャッシュ・フローの見積もり

 

IAS 第 36 号ではまた、使用価値の計算にあたり、将来キャッシュ・フローを資産の現在の状態に基づいて見積もらなければならないと定められており、企業は資産の性能を向上させることで生じると見込まれるキャッシュ・フローの見積りを除外する必要があります。

 

気候関連事項に関する要求事項に準拠するように資産をメンテナンスするための関連費用を除外すべきかどうかについては判断が必要となります。

 

(4)公正価値

 

回収可能価額が処分費用控除後の公正価値を基に見積られる場合、企業は、それぞれの資産及びCGUの公正価値測定に影響を及ぼす可能性がある潜在的な気候関連の法律に関する市場参加者の見通しを考慮する必要があります。

 

製造コストの増加につながる排出削減法案の導入など、気候リスクが企業に重要な影響を与える場合、そうしたリスクが回収可能価額の計算にどのように織り込まれているかについての情報も財務諸表の利用者にとって目的適合性があると言えます。

 

(5)回収可能価額

 

回収可能価額を測定するのに用いた重要な仮定及びこれらの仮定の合理的に考え得る変更に関する情報の開示も状況によっては求められます。

 

気候関連事項は、合理的に変更され得るものに影響を与える可能性があります。

 

3.IFRS 第13号「公正価値測定」

 

法律をはじめとする潜在的な気候関連事項に関する市場参加者の期待は、財務諸表上の資産及び負債の公正価値測定に影響を及ぼす可能性があります。

 

また、気候関連事項は、公正価値測定、特に公正価値ヒエラルキーの「レベル3」に区分される公正価値測定の開示にも影響を及ぼす可能性があります。

 

IFRS 第13号では公正価値測定に使用される観察不能なインプットの開示が求められています。

 

それらのインプットは、気候関連リスクに関する仮定をはじめ、市場参加者が用いる仮定を反映するものでなければなりません。

気候関連財務情報開示に関するガイダンス~TCFDガイダンス 2.0の公表

「気候関連財務情報開示に関するガイダンス~TCFDガイダンス 2.0(以下、「ガイダンス」)」がTCFDコンソーシアムより2020年7月に公表されました。

 

1.ガイダンス作成の趣旨

 

(1)パリ協定が目指す目標を実現するため、大きなイノベーションを創出して社会が大きく変わり、「環境と成長の好循環」を確立していくことが必要である。

 

(2)事業会社の開示の取組は必ずしも十分に進んでいない。

 

(3)事業会社のビジネスモデルにおいて気候変動が重要な場合は、気候変動が自社の事業活動にどのような影響を与え、財務インパクトをもたらすかを認識し、それを投資家等に伝え、理解してもらうことが重要である。

 

(4)気候変動による影響があっても持続的に成長する企業であることを投資家等に示すことを可能にする。

 

(5)投資家等からの要求に応えるだけでなく、事業会社からも投資家等に対して積極的に強みなどを発信し、事業会社と投資家等との間で効果的な対話を重ねて双方の理解を深めていくことが、前述の「環境と成長の好循環」を実現していくために必要である。

 

(6)このような事業会社と投資家等との対話のためのツールとしては、TCFD 提言を用いることが有益である。

 

(7)TCFD 提言が G20 によってタスクアウトされた国際的な枠組みであり、既にグローバルな企業評価の枠組みや国・地域の制度の中に取り込まれる動きが拡大する。

 

(8)他方で、事業会社側からは、TCFD 提言については、開示媒体を決定する際の考え方やシナリオ分析、事業ごとの特性の反映方法など精査したい点も多々あり、TCFD 提言に沿った開示を進めにくいという声がある。

 

(9)経済産業省では2018 年 8 月に「グリーンファイナンスと企業の情報開示の在り方に関する『TCFD 研究会』(以下、「TCFD 研究会」)」を設置した。

 

(10)TCFD 研究会は、投資家等が開示を求める情報が事業会社の経営判断に関するものである点を勘案し、メンバーとして各事業会社の財務部門や経営企画部門の担当役員が参加する。

 

(11)事業会社の経営者と、国内外の投資家等との「対話」を通じてTCFD 提言に沿った情報開示の在り方を議論し、本ガイダンスを策定する。

 

(12)TCFD 提言に沿った情報開示は、世界的にもまだ始まったばかりである。

 

(13)本ガイダンスは TCFD 提言への対応を進めるための第一歩を示すものとして、TCFD 研究会及びその下に設置したワーキンググループでの議論を通じて抽出された論点に基づいて解説する。

 

(14)ガイダンスの内容については、情報開示の進展に応じて適宜見直しや解説の拡充を行うことを想定する。

 

2.ガイダンスの位置付け

 

(1)TCFD提言

 

「気候関連財務情報開示タスクフォース( TCFD: Task Force on Climate-related Financial Disclosures)」は、「TCFD提言」と、これを補足する文書として、TCFD提言実施に当たっての補助的文書としての位置づけの「Implementing the Recommendations of the Task Force on Climate-related Financial Disclosures」と、シナリオ分析を支援するための解説である「The Use of Scenario Analysis in Disclosure of Climate-related Risks and Opportunities」を作成しています。

 

TCFD 提言では下図のとおり、全体提言と、「ガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標」の4つのテーマに対して推奨される開示及び解説を示しています。

補助的文書では、TCFD 提言の実施に向けた解説が作成されており、特に4 テーマについては、セクター別に解説が作成されています。

 

推奨される気候関連財務情報開示における中核的要素

(出所)『最終報告書 気候関連財務情報開示タスクフォースによる提言』(2017年6月)(訳 株式会社グリーン・パシフィック)P. v より抜粋

 

(2)ガイダンスの構成

 

ガイダンスは、全 3 章から構成されています。

 

① 第 1 章では TCFD による活動が行われることとなった背景、本ガイダンス作成の趣旨及びガイダンスとTCFD 提言や補助的文書との関係性について説明しています。

 

② 第 2 章では、事業会社による開示を後押しするため、TCFD 提言や補助的文書に対する疑問点を整理し、解説しています。

 

③ 第 3 章では、9つの業種(非金融グループ 6 業種、金融グループ 3 業種)に対して業種別の開示推奨項目を提示しています。

非金融グループにおいては「戦略」及び「指標と目標」についての業種別の開示推奨項目を提示しています。

金融グループにおいては、これらに加えて投融資に関するガバナンス及びリスク管理の取組についても業種ごとに望ましい示し方が異なるため、解説を加えています。

 

(3)期待されること

 

事業会社と投資家等がこれらの業種別の開示情報に基づく対話を行うことで、今後より効果的な「環境と成長の好循環」に繋がることが期待されます。

 

(4)業種別分析

 

業種別の分析については民間でも類似の取組が進んでいます。

SASB やWBCSD がTCFD提言への対応に向けたガイダンスを作成しています。

このように、業種ごとの特性を踏まえた上でTCFD提言に沿った開示を進めようという動きは世界的に進みつつあります。

 

(5)方向性

 

このような様々な取組については、将来的にはそれぞれにおいて蓄積された知見やベストプラクティスを共有し、包括的な取組として昇華させていくべきものとしています。

したがって、第2章と同様に、第3章は多くの企業が開示に取り組む過程で改訂されていくものであり、今後、さらなる業種の追加も含めて内容を充実させていくことを想定しています。

IFRS財団評議員会~サステナビリティ報告に関する協議文書を公表

IFRS財団評議員会(以下、評議員会)は2020年9月、「サステナビリティ報告に関する協議ペーパー(以下、協議文書)」を公表しました。

2020年12月31日を本協議文書に関するコメントの募集期限としています。

寄せられたコメントを分析し、これらのコメントをIFRS財団の潜在的な役割に関しての議論の基礎とするとしています。

協議文書の中で「サステナビリティ基準審議会(以下、SSB)」の創設が提案されています。

 

1.新しいSSB

 

(1)提案

 

報告における一体性及び比較可能性な情報は必要なものであり、それを達成するために、タスクフォースが提案し評議員会が支持したアプローチは、以下のものです。

 

「IFRS財団のガバナンス構造の下で国際的なサステナビリティ基準を開発するための新しいサステナビリティ基準審議会(SSB)を創設する」

 

(2)承認の要件

 

評議員会は、以下の成功のための要件が満たされることを条件に、SSBという選択肢をさらに展開することを暫定的に選択しました。

 

①主要な市場における、公的機関、国際的な規制機関及び市場関係者(投資者及び作成者を含む)からの十分なレベルの国際的な支持の獲得

 

②サステナビリティ報告における国際的な一貫性の達成と複雑性の低減を目的とした地域的な取組みとの協力

 

③ガバナンス構造の適切性の確保

 

④評議員会、SSB メンバー及びスタッフについての適切な技術的専門性の達成

 

⑤必要となる独立した資金調達のレベル及び財政支援を得る能力の達成

 

⑥財務報告との効果的なシナジーの構築を図るための組織及び文化の開発

 

⑦ IFRS財団の現在の使命及びリソースが損なわれないことの確保

 

(3)SSBの目的

 

SSBの目的は、最初は気候関連リスクに焦点を当てたサステナビリティ報告基準の国際的なセットを開発し維持管理するというものとなると見込まれます。

 

また、このような基準設定は、既存のサステナビリティのフレームワーク及び基準を活用することになると見込まれます。

 

IFRS財団の制度上のガバナンス構造の下でSSBを設置するという提案は、財務報告と一体性があり関連付けられたサステナビリティ報告のフレームワークを開発するという目的と、投資者及び財務諸表の他の主要な利用者に役立つというIASB自身の使命を達成することができるとしています。

 

2.SSBIFRS財団が設立するとした場合

 

(1)「気候第一」アプローチ

 

①気候関連情報

 

タスクフォースのリサーチ及び非公式の協議で、気候に関連した情報についての国際的なサステナビリティ報告基準の開発が最も切迫した懸念事項であることが示されています。

 

気候リスクは、投資者及び健全性規制当局にとって重要度が増大している財務リスクです。

これは大半が、世界中での主要な法域による公共政策上の取組みによるものです。

これらの取組みの緊急性を踏まえて、SSBが行うべき最初の作業は気候関連情報に焦点を当てることが提案されています。

 

②以後の段階

 

タスクフォースの非公式な協議の間に、多くの利害関係者が、以後の段階において、SSBがサステナビリティ報告のより幅広い範囲(環境・社会・ガバナンス要因の相互関係を含む)を採用する可能性があると主張しました。

 

例えば、現在の世界経済フォーラムの国際ビジネス評議会の取組みの任務も、ガバナンス、地球、人々及び繁栄という原則に言及しており、当初は気候に焦点を当てるがやがては範囲を拡大できるようにするという柔軟な構造を提案しています。

 

(2)重要性に対するアプローチ

 

①サステナビリティ報告の目的

 

重要性の概念を検討する際には、サステナビリティ報告の目的、当該目的を達成するためにどのような情報が必要か、及びどの利害関係者が企業の報告する情報を利用するのかを決定することが重要になります。

 

有用なサステナビリティ情報の質的特性を、既存のフレームワーク(TCFD、SASB、国際統合報告フレームワーク及び持続可能な開発目標開示の提言(SDGD))に示された原則に依拠して開発することが必要となります。

 

②重要性に関してのSSBのためのアプローチ案

 

SSBがダブル•マテリアリティ・アプローチを開始することは、作業の複雑性を大きく増大させることになり、基準の採用に影響を与えたり遅延させたりする可能性があるため、漸進主義的なアプローチを推奨しています。

 

設立することとなった場合、SSBは、最初は、投資者及び他の市場参加者にとって最も目的適合性のあるサステナビリティ情報に注力することになると見込まれます。

 

SSBは、報告企業にとってのリスク及び機会のより包括的な評価を提供するために、 他の取組みと共同で作業しつつ、作業を進めるにつれて範囲をどのように拡大すべきかを検討することができます。

 

この包括的な評価は、より多くの法域が基準の国際的な及び法域別の分断のリスクを最小限にするためにダブル•マテリアリティの概念を受け入れる場合には、特に重要となるとしています。

 

③保証の達成

 

国際的に一貫したサステナビリティ報告の実務を達成するためには、企業が報告するサステナビリティ情報は、最終的には外部の保証の対象となる必要があるとしています。

 

しかし、そのような保証を達成するには、一貫した国際的フレームワークの必要性や、サステナビリティに関連した定性的な開示要求事項を示すことの困難性などの概念上及び実務上の課題があるとしています。

 

主要な利害関係者が共通のサステナビリティ開示を開発する目的は、企業が外部から保証された情報を開示することです。

 

サステナビリティ情報についての保証の枠組みが究極的には財務諸表についての保証の枠組みと同様となることが望ましいとしています。

 

IFRS財団は、監査上の課題に関連する財務報告基準の作成における専門性を有しており、これを達成するのに役立てるために、国際監査•保証基準審議会(IAASB) 及び監査の専門家との協力関係を構築してきました。