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収益認識基準における「商品券等(顧客により行使されない権利)」の取り扱い

日本公認会計士協会は、収益認識の基本論点(Q&A)を公表しています。

その中から、顧客により行使されない権利 (非行使部分)(商品券等)の取り扱いを見てみましょう。

 

1.会計基準等の定め

 

(1)顧客から支払いを受けた時の処理

 

①対象となる履行義務

 

企業は、将来において財又はサービスを移転する(又は移転するための準備を行う)という履行義務を負います。

 

②顧客から支払を受けた時

 

支払を受けた金額で契約負債を認識します。

 

③当該履行義務を充足した時

 

契約負債の消滅を認識し、収益を認識します。

 

(2)非行使部分

 

顧客から企業に返金が不要な前払いがなされた場合、将来において財又はサービスを受け取る権利が顧客に付与されます。

 

顧客は、当該権利のすべては行使しない場合があり、顧客により行使されない権利を「非行使部分」といいます。

 

(3)非行使部分に係る会計処理

 

収益基準では非行使部分に係る会計処理を図表1のとおり定めています。

 

「Q&A収益認識の基本論点」日本公認会計士協会より抜粋

 

①商品券等を販売した時点では、将来、商品やサービスを提供する義務が残るため、契約負債を認識します。

 

②のうち、将来にわたって利用されない部分(非行使部分)について、将来、企業が権利を得ると見込む場合(すなわち、あらかじめ顧客が権利を行使しないと見込まれる場合)は、顧客が権利を行使するパターンに比例して収益を認識します。

 

③権利を得ると見込まない場合は、顧客が残りの権利を行使する可能性が極めて低くなった時に収益を認識します。

 

2.事例:非行使部分の権利を得ると見込む場合

 

(1)前提条件

 

①販売時

 

  • X1年度において小売業者A社は自社でのみ使用可能な商品券(額面100,000円)を顧客に販売し、代金100,000円を受領しました。

 

②非行使部分

 

  • A社は類似の商品券に関する過去の経験に基づき、販売金額の10%が非行使になると見込んでいますが、非行使部分に相当する金額を顧客に返金する必要はありません。

 

・10%を非行使部分と扱って権利行使と比例的に収益認識したとしても、その後に収益の著しい減額が生じない可能性が高いとしています。

 

③利用時

 

  • X1年度において、顧客はこの商品券のうち、54,000円を利用しました。

 

(2)会計処理

 

①X1年度 (商品券販売時)

 

現金預金 100,000円 /契約負債 100,000円

 

②X1年度 (商品券利用時)

 

契約負債 54,000円 /売上高 54,000円

契約負債 6,000円 /売上高  6,000円 (*1)

 

(*1)(100,000円×10%)×54,000円/(100,000円×90%)= 6,000円

 

3.事例:非行使部分の権利を得ると見込まない場合

 

(1)前提条件

 

①販売時

 

  • X1年度において小売業者A社は自社でのみ使用可能な商品券(額面100,000円)を顧客に販売し、代金100,000円を受領しました。

 

  • A社は行使されなかった商品券について、顧客に返金する必要はありません。

 

・商品券は発行日から2年後に失効しますが、A社は過去に類似の商品券の販売を行っておらず、過去の情報を有していないため、その後に収益の著しい減額が生じない可能性が高い非行使部分の金額を見積る能力を有していません。

 

②利用時

 

・X1年度において、顧客はこの商品券のうち、54,000円を利用しました。

 

(2)会計処理

 

①X1年度 (商品券販売時)

 

現金預金 100,000円 /契約負債 100,000円

 

②X1年度 (商品券利用時)

 

契約負債 54,000円  /売上高 54,000円

 

※なお、非行使部分の金額については、顧客が残りの権利を行使する可能性が極めて低くなった時点で収益を認識するため、商品券利用時には認識しません。

 

収益認識基準における「返金が不要な契約における取引開始日の顧客からの支払い」の取扱

日本公認会計士協会は、収益認識の基本論点(Q&A)を公表しています。

その中から、「返金が不要な契約における取引開始日の顧客からの支払い」の取扱を見てみましょう。

 

1.会計基準の定め

 

(1)対象となる取引

 

取引:契約における取引開始日又はその前後に、顧客から返金が不要な支払を受ける場合。

 

例えば、スポーツクラブ会員契約の入会手数料、電気通信契約の加入手数料、サービス契約のセットアップ手数料、供給契約の当初手数料等があります。

 

(2)会計基準

 

収益基準では、返金が不要な顧客からの支払を図表1(適用指針第57項から第59項を基に作成)のように定めています。

 

「Q&A収益認識の基本論点」日本公認会計士協会より抜粋

 

①顧客から返金が不要な支払を受ける場合、当該支払が、将来の財又はサービスの移転に対するものであるときは、当該将来の財又はサービスを提供する時に収益を認識することになります。

 

②一方、当該支払が、約束した財又はサービスの移転を生じさせるものであるときは、当該約束した財又はサービスを提供する時に収益を認識することになります。

 

2.事例:スポーツクラブの入会金

 

(1)事例

 

スポーツクラブに顧客が入会する場合、スポーツクラブの運営会社は返金することのない入会金を顧客から受領します。

 

(2)会計基準等

 

収益基準では、顧客から返金が不要な支払を受ける場合、当該支払が、「将来の財又はサービスの移転に対するもの」であるか、それとも、「約束した財又は サービスの移転を生じさせるもの」であるかにより、収益の認識時点を判断することになります。

 

①会員資格に加え、入会金が会員にその期間に提供される財又はサービスを受ける権利を与えたり、非会員に課されるより低い価格で財又はサービスを購入する権利を与えたりする場合

 

返金が不要な入会金が、「将来の財又はサービスの移転に対するもの」である場合に該当し、当該将来の財又はサービスを提供する時に収益を認識することになります。

 

②返金が不要な入会金が、「約束した財又はサービスの移転を生じさせるもの」である場合

 

当該約束した財又はサービスを提供する時に収益を認識することになります。

 

ただし、収益基準では、返金が不要な契約における取引開始日の顧客からの支払は、通常、企業が契約における取引開始日又はその前後において契約を履行するために行う活動に関連し、当該活動は約束した財又はサービスを顧客に移転させるものではないとしています。

 

そのため、返金が不要な入会金が、「約束した財又はサービスの移転を生じさせるもの」であると判断されるケースは、限定的であると考えられます。

株式交付制度の創設(令和元年改正会社法)~その概要・主な手続き・実務上の留意点・会計処理について

2019年12月4日に「会社法の一部を改正する法律」(以下、改正法)が成立し、同月11日に公布されています。
従来、株式交換制度がありましたが、今回の改正ではM&Aに関する株式交付制度が創設されました。

 

1. 株式交付制度の概要

 

(1)株式交付制度の新設

 

改正法では、完全子会社とすることまでを企図していない場合であっても、株式会社が他の株式会社を子会社とする(議決権の50%超を取得する)ため、自社の株式を他の株式会社の株主に交付することができる株式交付制度を新たに設けました。

 

(2)株式交付制度の概要

 

株式交付制度とは、他の(国内)株式会社を子会社化するために、対象会社(株式交付子会社)の株式を譲り受け、その譲渡人に対してその株式の対価として自社(株式交付親会社)の株式を交付する手続です。

 

既存の株式交換制度とは異なり、対象会社の株主のうち希望者のみからその株式を取得する点に特徴があります。

 

(3)株式交換制度の概要

 

① 株式会社(買収会社)が、その株式を対価として当該他の株式会社(被買収会社)を買収しようとする場合に、株式交換制度があります。

 

② 株式交換制度を用いる場合には、買収会社は被買収会社の発行済株式のすべてを取得することになります。

 

(4)株式交換制度の制約

 

① 買収会社が被買収会社を完全子会社とすることまでは企図していない場合には、株式交換制度を用いることができません。

 

② 自社の新株発行等と他の会社の株式の現物出資という構成をとる場合には、原則として検査役の調査が必要となります。

 

③ 手続が複雑でコストが掛かることから、実務上、株式を対価とするM&Aの手法を用いることが困難になっていると指摘されていました。

 

2.株式交付制度の主な手続き

 

(1)株式交付計画

 

株式交付親会社は、譲り受ける株式交付子会社の株式の数の下限、交付する株式交付親会社の株式の数又はその算定方法、効力発生日などを定めた株式交付計画を作成します。

 

(2)株主総会特別決議

 

株式交付親会社は、株式交付計画について株主総会の特別決議による承認が必要です。

ただし、一定の要件を満たす場合は、株式交換制度と同様に簡易手続があります。

 

(3)株式交付計画の内容の通知

 

株式交付親会社は、株式交付子会社の株式の譲渡しの申込みをしようとする者(株式交付子会社の株主)に対して、株式交付計画の内容などの通知が必要です。

 

(4)株主・債権者保護手続き

 

株式交付親会社の株主及び債権者保護のため、株式交付計画の内容の備置き・閲覧等、反対株主の株式買取請求、債権者異議手続などが設けられます。

 

(5)株式の給付

 

効力発生日に、申込みをした株式交付子会社株主は、割り当てられた株式交付親会社株式の株主となり、株式交付親会社は、株式交付子会社株式の給付を受け、これを取得します。

 

3.株式交付制度のイメージは下記のとおりです。

 

法務省「会社法の一部を改正する法律の概要」より抜粋

 

4. 実務上の留意点

 

(1)対象会社

 

株式交付子会社は、日本の会社法上の株式会社に限られ、外国会社は対象外とされています。

 

(2)有償譲渡

 

株式交換制度の場合は、株式交換完全親会社が株式交換完全子会社の全ての株式を当然に取得しますが、株式交付制度は、株式交換制度とは異なり、株式の有償の譲渡とされています。

 

(3)公開買付規制

 

株式交付子会社が上場会社である場合には、株式交付親会社は、株式交付を行なうに当たり、別途、公開買付規制に該当する場合があるとされる点に留意する必要があります。

 

(4)利用されることが予想される会社

 

(3)の点から、株式交付制度は、主として国内の非上場会社を対象会社とするM&Aにおいて利用される余地が大きいことが想定されています。

 

5. 企業結合における会計処理

 

(1)企業結合の分類

 

株式交付制度は、対象会社の議決権の50%超を取得することにより、当該対象会社が子会社となる場合を前提とするため、企業結合の分類としては、グループ外の企業結合である「取得」に該当すると思われます。

 

(2)会計処理

 

取得に該当するため、株式交付親会社の連結財務諸表上の会計処理としては、以下が考えられます。

 

①株式交付子会社の資産及び負債を時価評価します。

 

②時価純資産(受け入れた資産と引き受けた負債の差額)のうち株式交付親会社に帰属する部分と交付した株式の時価(支払った対価)との差を「のれん」(又は「負ののれん」)とします。

 

6. 適用日

 

令和3年(2021年)3月1日からの施行になります。

 

 

 

収益認識に関する会計基準及び適用指針~財務諸表における表示と注記

2020年3月31日に企業会計基準委員会(以下、ASBJ)から改正企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」(以下、本改正会計基準)及び改正企業会計基準適用指針第30号「収益認識に関する会計基準の適用指針」(以下、本改正適用指針)等が公表されました。

 

1.表示

 

(1)損益計算書の表示

 

①顧客との契約から生じる収益の表示科目

 

次のいずれかの方法により、損益計算書に表示します。

 

ア) 顧客との契約から生じる収益とそれ以外の収益と区分して損益計算書に表示する方法

 

イ) 顧客との契約から生じる収益とそれ以外に収益を合算して損益計算書に表示したうえで、顧客との契約から生じる収益の額を注記する方法

 

②顧客との契約から生じる収益の適切な科目例

 

売上高、売上収益、営業収益など

 

③顧客との契約に重要な金融要素が含まれる場合の取扱い

 

顧客との契約に重要な金融要素が含まれる場合、顧客との契約から生じる収益と金融要素の影響(受取利息又は支払利息)を損益計算書において区分して表示します。

 

(2)貸借対照表の表示

 

①契約資産及び顧客との契約から生じた債権

 

適切な科目をもって、次のいずれかの方法により貸借対照表に表示します。

 

ア)契約資産と顧客との契約から生じた債権のそれぞれについて、貸借対照表について区分表示する方法

 

イ)上記以外の場合、契約資産と顧客との契約から生じた債権のそれぞれの残高を注記する方法

 

②契約資産の適切な科目例

 

契約資産、工事未収入金など

 

③顧客との契約から生じた債権の適切な科目例

 

売掛金、営業債権など

 

④契約負債

 

適切な科目をもって次のいずれかの方法により、貸借対照表に表示します。

 

ア)貸借対照表において他の負債と区分して表示する方法

 

イ)上記以外の場合、契約負債の残高を注記する方法

 

⑤契約負債の適切な科目例

 

契約負債、前受金など

 

2. 注記事項の概要

 

(1) 重要な会計方針

 

顧客との契約から生じる収益に関する重要な会計方針として、次の項目を注記します。

 

①企業の主要な事業における主な履行義務の内容

 

②企業が当該履行義務を充足する通常の時点(収益を認識する通常の時点)

 

③上記の項目以外に重要な会計方針に含まれると判断した内容については、重要な会計方針として注記

 

(2) 収益認識に関する注記

 

開示目的及び重要性の定め

 

ア)開示目的

 

顧客との契約から生じる収益及びキャッシュ・フローの性質、金額、時期及び不確実性を財務諸表利用者が理解できるようにするための十分な情報を企業が開示することとしています。

 

イ)重要性の定め

 

どの注記事項にどの程度の重点を置くべきか、また、どの程度詳細に記載するのかを開示目的に照らして判断します。

 

②注記の分類

 

開示目的を達成するため、収益認識に関する注記として、次の3区分に分類しています。

 

ア)収益の分解情報

 

イ)収益を理解するための基礎となる情報

 

ウ)当期及び翌期以降の収益の金額を理解するための情報

 

③重要性

 

各注記事項のうち、開示目的に照らして重要性に乏しいと認められる注記事項については、記載しないことができます。

 

④他の注記事項の参照

 

収益認識に関する注記として記載する内容について、例えばセグメント情報の注記に含めて収益の分解情報を示す等、財務諸表上の他の注記事項に含めて記載している場合には、当該他の注記事項を参照することができます。

 

3.注記事項の詳細

 

(1)収益の分解情報

 

当期に認識した顧客との契約から生じる収益は、収益及びキャッシュ・フローの性質、金額、時期及び不確実性に影響を及ぼす主要な要因に基づく区分に分解した情報を注記します。

 

【区分例】

 

・財またはサービスの種類(主要な生産ライン)

 

・地理的区分(国または地域)

 

・市場または顧客の種類(政府と政府以外)

 

・契約の種類(固定価格と実費精算契約)

 

・契約期間(短期契約と長期契約)

 

・財またはサービスの移転の時期(一時点で移転と一定期間にわたり移転)

 

・販売経路(消費者への直接販売と仲介業者を通じて販売)

 

(2)収益を理解するための基礎となる情報

 

収益認識の5つのステップに合わせ、以下の事項を注記します。

 

・契約及び履行義務に関する情報(ステップ1及びステップ2)

 

・取引価格の算定に関する情報(ステップ3)

 

・履行義務への配分額の算定に関する情報(ステップ4)

 

・履行義務の充足時点に関する情報(ステップ5)

 

・本会計基準の適用における重要な判断

 

(3)当期及び翌期以降の収益の金額を理解するための情報

 

当期及び翌期以降の収益の金額を理解するための情報として、次の事項を注記します。

 

・契約資産および契約負債の残高等

 

・残存履行義務に配分した取引価格

 

①契約資産および契約負債の残高等

 

履行義務の充足とキャッシュ・フローの関係を理解できるよう、次の事項を注記します。

 

ア)顧客との契約から生じた債権、契約資産及び契約負債のクシュ残高及び期末残高

 

イ)当期に認識した収益の額のうち期首現在の契約負債残高に含まれていた額

 

ウ)当期中の契約資産及び契約負債の残高の重要な変動がある場合のその内容

 

エ)履行義務の充足の時期が通常の支払時期にどのように関連するのか並びにそれらの要因が契約資産及び契約負債の残高に与える影響の説明

 

②残存履行義務に配分した取引価格

 

既存の契約から容器以降に認識することが見込まれる収益の金額及び時期について理解できるよう、残存履行義務に関して次の事項を注記します。

 

ア)当期末時点で未充足の履行義務に配分した取引価格の総額

 

イ)上記の金額を、企業がいつ収益として認識すると見込んでいるのかについて、次にいずれかの方法により注記します。

 

・残存履行義務の残存期間に最も適した期間による定量的情報を使用した方法

 

・定性的情報を使用した方法

 

4. 個別財務諸表及び四半期財務諸表における取扱い

 

(1)個別財務諸表

 

連結財務諸表を作成している場合

 

ア) 表示及び関連する注記の定めを適用しないことができます

 

イ)「収益の分解情報」及び「当期及び翌期以降の収益の金額を理解するための情報」について注記しないことができます

 

(2)四半期連結財務諸表

 

収益の分解情報を注記します。

 

5. 適用時期

 

(1)原則的な適用

 

2021年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用します。

 

(2)早期適用

 

①2020年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用することができます。

 

②2020年4月1日に終了する連結会計年度及び事業年度から2021年3月30日に終了する連結会計年度及び事業年度までにおける年度末に係る連結財務諸表及び個別財務諸表から適用することができます。

 

(3)2018年会計基準等の取り扱い

 

引き続き、2021年3月31日以前に開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用することができます。

ただし、2020年改正会計基準等を適用している場合を除きます。

 

6.経過措置

 

(1)2018年会計基準等を適用していない場合の経過措置

 

①遡及適用に係る経過措置の定め

 

ア)適用初年度においては、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取り扱います。

原則として、新たな会計方針を過去の期間のすべてに遡及適用します。

 

イ)ただし、初年度の期首より前に新たな会計方針を遡及適用した場合の適用初年度の累積的影響額を、適用初年度の期首の利益剰余金に加減し、当該期首残高から新たな会計方針を適用することができます。

 

②以下に条件に適合する企業は、別途経過措置が定められています。

 

・IFRSまたは米国会計基準を連結財務諸表に適用している企業が個別財務諸表に本会計基準を適用する場合

・IFRSを連結財務諸表に初めて適用する企業が個別財務諸表に本会計基準を適用する場合

 

③表示及び注記に係る経過措置の定め

 

ア)適用初年度の比較情報について、新たな表示方法に従い組替えを行わないことができます。

 

イ)適用初年度においては、本会計基準等に定める注記事項として記載した内容を適用初年度の比較情報に注記しないことができます。

 

(2)2018年会計基準等を適用している場合の経過措置

 

①遡及適用に係る経過措置の定め

 

将来にわたり新たな会計方針を適用することができます。

 

②表示及び注記に係る経過措置の定め

 

ア)表示方法に変更が生じる場合には、適用初年度の比較情報について、新たな表示方法に従い組替えを行わないことができます。

 

イ)適用初年度においては、本会計基準等に定める注記事項として記載した内容を適用初年度の比較情報に注記しないことができます。

 

取締役等に対する株式報酬等~制度の概要と会計処理

令和元年12月4日に「会社法の一部を改正する法律」(以下、改正法)が成立し、同月11日に公布されています。

今回の改正の中から、取締役等に対する株式報酬等を取り上げます。

 

1.改正の目的

 

取締役等の報酬等の内容の決定手続き等に関する透明性を向上させるとともに、株式会社が業績等に連動した報酬等を適正かつ円滑に取締役に付与することができるようにするための改正です。

 

2.改正の概要

 

(1)報酬等の内容

 

上場会社等において取締役個人別の報酬等の内容が定款等の定めや株主総会の決議により具体的に定められていない場合、取締役会は、その決定方針を定め、その概要等を開示しなければなりません。

 

(2)報酬としての株式等の付与

 

取締役の報酬等として当該株式会社の株式または新株予約権を付与しようとする場合、定款又は株主総会の決議により当該株式または新株予約権の数の上限等を定めなければなりません。

 

(3)金銭の払い込み

 

上場会社が取締役の報酬等として株式の発行等をする場合、金銭の払い込みを要しません。

 

(4)開示

 

事業報告による開示が充実します。

 

3. 取締役等に株式報酬等を付与する場合の手続の明確化

 

取締役等の報酬等として、募集株式の発行又は自己株式の処分、新株予約権の発行をするときは、定款又は株主総会の決議により、当該株式又は新株予約権の数の上限等を定めなければならないことが明確化されています。

 

4.取締役等の報酬等としての株式の無償発行等

 

(1)改正点

 

株式会社が業績等に連動した報酬等を適正かつ円滑に取締役に付与することができるようにするため、改正法では、主に以下の内容の改正が行われました。

 

①上場会社において、取締役等の報酬等として募集株式の発行又は自己株式の処分をするときは、金銭の払込み等を要しない

 

②上場会社において、取締役等の報酬等として新株予約権を発行するときは、新株予約権の行使に際して金銭の払込み等を要しない

 

③取締役等に対する報酬等としての株式の発行により資本金又は準備金として計上すべき額については、法務省令で定める

 

(2)対象者

 

上場会社の取締役等への報酬等のみについて、株式の無償発行等が可能となりました。

 

対象者は、取締役(取締役であった者を含む)、指名委員会等設置会社においては執行役(執行役であった者を含む)に限られており、それ以外の者(上場会社の監査役・執行役員・使用人、非上場会社の役員等)による利用は認められていない点に留意が必要となります。

 

(3)適用日

 

公布日(令和元年12月11日)から1年6カ月を超えない範囲内において政令で定める日から施行されるため、令和3年3月期以降の決算に影響を与える可能性があります。

 

5.株式報酬の会計処理

 

2020年9月11日に、企業会計基準委員会より「業務対応報告公開草案第60号 取締役の報酬等として株式を無償交付する取引に関する取扱い(案)」が公表されました。

 

(1)範囲

 

・上場されている株式を発行している株式会社が

・取締役等の報酬等として金銭の払い込みを要しないで

・株式の発行等をする場合

・その会計処理及び開示

 

(2)事前交付型の会計処理

 

①定義

 

・対象勤務期間の開始後速やかに

・契約上の譲渡制限を付した株式の発行を行い

・権利確定条件が達成された場合に、譲渡制限が解除され

・権利確定条件が達成されない場合には、企業が無償で株式を取得する取引

 

②取締役等の報酬等として新株の発行を行う場合

 

ア)会計処理

 

・取締役等に対して新株を発行し

・これに応じて企業が取締役から取得するサービスは

・その取得に応じて費用として計上する

・費用に対応する金額は、資本金または資本準備金に計上する

 

イ)費用計上額

 

・株式の公正な評価額のうち

・対象勤務期間を基礎とする方法その他合理的な方法に基づき

・当期に発生したと認められる金額

 

③取締役等の報酬等として自己株式を処分する場合

 

ア)会計処理

 

・割当日において、処分した自己株式の帳簿価額を減額

・同額の資本準備金を減額する

・企業が取締役等から取得するサービスは

・サービスの取得に応じて費用計上する

 

(3)事後交付型の会計処理

 

①定義

 

・契約上、株式の発行等について

・権利確定条件が付されており

・権利確定条件が達成された場合

・株式等の発行が行われる取引

 

②取締役等の報酬等として新株の発行を行う場合

 

・企業が取締役等から取得するサービスは

・サービスの取得に応じて費用計上する

・対応する金額は

・株式の発行等が行われるまでの間

・株主資本以外の項目に株式引受権として計上する

 

③取締役等の報酬等として自己株式を処分する場合

 

・前項と同様の処理を行う

 

6.開示

 

年度の財務諸表において、取引の内容、規模及びその変動状況の注記を行います。

 

会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準

2020年3月31日に企業会計審議会より改正企業会計基準第24号「会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」(以下、本会計基準)が公表されました。

 

1.本会計基準の公表の経緯

 

本会計基準は、関連する会計基準等の定めが明らかでない場合に採用した会計処理の原則及び手続に係る注記情報の充実のために、所要の改正を行ったものです。

 

我が国の会計基準等では、取引その他の事象または状況に具体的に当てはまる会計基準が存在しない場合の開示に関する会計基準上の定めが明らかではなく、開示の実態も様々であるとの違いが、ディスクロージャー専門委員会の検討で明らかになりました。

 

ディスクロージャー専門委員会は、「会計処理の対象となる会計事象等に関連する会計基準等の定めが明らかでない場合に採用した会計処理の原則及び手続の開示上の取り扱いを明らかにして、財務諸表利用者にとって不可欠な情報が提供されるようにすることは、有用であると考えられる」とした報告を基準諮問委員会に行い、企業会計審議会は、審議の結果、会計基準として公表されることになりました。

 

2.開示目的

 

(1)重要な会計方針に関する注記の開示目的

 

「財務諸表を作成するための基礎となる事項を財務諸表利用者が理解するために、採用した会計処理の原則及び手続の概要を示すこと」です。

 

この開示目的は、関連する会計基準等の定めが明らかでない場合に、会計処理の原則及び手続を採用するときも同じであるとしています。

本会計基準は、重要な会計方針の開示における従来の考え方を変更するものではなく、関連する会計基準等の定めが明らかでない場合いにおける取り扱いに関するこれまでの実務を変更することを意図するものではないとしています。

 

(2)会計基準等の定義

 

会計基準等とは、以下に掲げるもの及びその他の一般に公正妥当と認められる会計処理の原則及び手続を明文化して定めたものをいいます。

 

① 企業会計基準委員会が公表した企業会計基準

② 企業会計審議会が公表した会計基準(企業会計原則等を含む)

③ 企業会計基準委員会が公表した企業会計基準適用指針

④ 企業会計基準委員会が公表した実務対応報告

⑤ 日本公認会計士協会が公表した会計制度委員会報告、監査・保証実務委員会報告及び業種別監査委員会報告のうち会計処理の原則及び手続を定めたもの

 

3.関連する会計基準等の定めが明らかでない場合

 

(1)「関連する会計基準等の定めが明らかでない場合」の定義

 

「特定の会計事象等に対して適用し得る具体的な会計基準等の定めが存在しない場合」と定義しています。

 

(2)「関連する会計基準等の定めが明らかでない場合に採用した会計処理の原則及び手続」の例として以下のものを挙げています。

 

① 関連する会計基準等が存在しない新たな取引や経済事象が出現した場合に適用する会計処理の原則及び手続で重要性のあるもの

 

②適用される会計基準等については明らかでないが、参考となる既存の会計基準等がある場合に当該既存の会計基準等で定める会計処理の原則及び手続きを採用したとき

 

4.重要な会計方針に関する注記

 

重要な会計方針に関する注記については、企業会計原則の定めを引き継いで、以下のように取り扱うとしています。

 

(1)財務諸表には、重要な会計方針を注記します。

 

(2)会計方針の例として、以下のものがあります。ただし、重要性の乏しいものについては注記を省略できます。

 

① 有価証券の評価基準及び評価方法

② 棚卸資産の評価基準及び評価方法

③ 固定資産の減価償却の方法

④ 繰延資産の処理方法

⑤ 外貨建資産及び負債の本邦通貨への換算基準

⑥ 引当金の計上基準

⑦ 収益及び費用の計上基準

 

(3)会計基準等の定めが明らかであり、当該会計基準等において代替的な会計処理の原則及び手続が認められていない場合には、会計方針に関する注記を省略することができます。

 

5.未適用の会計基準等に関する注記

 

未適用の会計基準等に関する注記に関する定めの記載箇所が変更になることにより、未だに適用されていない新しい会計基準等全般に当該注記が適用されることが明確化されました。

 

6.適用時期及び経過措置

 

(1)適用時期

 

2021年3月31日以後終了する事業年度の年度末に係る財務諸表から適用されます。

ただし、公表日以後終了する事業年度の年度末に係る財務諸表から適用することができます。

 

(2)経過措置

 

本会計基準を適用したことにより新たに注記する会計方針は、表示方法の変更には該当しません。

本会計基準を新たに適用したことにより、関連する会計基準等の定めが明らかでない場合に採用した会計処理の原則及び手続を新たに開示するときには、追加情報としてその旨を注記します。

会計上の見積りの開示に関する会計基準~基本方針、開示目的、開示項目、注記事項

企業会計基準委員会(以下、ASBJ)は、2020年3月31日に企業会計基準第31号「会計上の見積りの開示に関する会計基準」(以下、本会計基準)を公表しました。

 

1.開発にあたっての基本方針

 

ASBJは、本会計基準の開発に当たっての基本的な方針として、原則(開示目的)を示した上で、具体的な開示内容は企業が開示目的に照らして判断することとしています。

本会計基準の開発にあたっては、IAS第1号「財務諸表の表示」第125項の定めを参考としています。

 

2.会計上の見積りの開示目的

 

(1)開示目的

 

本会計基準では、当年度の財務諸表に計上した金額が会計上の見積もりによるもののうち、翌年度の財務諸表に重要な影響を及ぼすリスクがある項目における会計上の見積りの内容について、財務諸表利用者の理解に資する情報を開示することを開示目的としています。

 

(2)開示目的の背景

 

財務諸表を作成する過程では、財務諸表に計上した項目の金額を算出するに当たり、会計上の見積りが必要となるものがあります。

会計上の見積りは、財務諸表作成時に入手可能な情報に基づいて合理的な金額を算出するものですが、見積もりの方法や見積もりの基礎となる情報は様々であり、財務諸表に計上した金額のみでは、当該金額が含まれる項目が翌年度の財務諸表に重要な影響を及ぼす可能性があるかどうかを財務諸表利用者が理解することは困難です。

 

当年度の財務諸表に計上した金額が会計上の見積もりによるもののうち、翌年度の財務委諸表に重要な影響を及ぼすリスクがある項目における会計上の見積りの内容についての情報は、財務諸表利用者にとって有用な情報であると考えられます。

 

(3)本会計基準設定の目的

 

翌年度の財務諸表に重要な影響を及ぼす可能性が高い項目は企業によって異なることから、個々の会計基準を改正して会計上の見積りの開示の充実を図るのではなく、会計上の見積りの開示について包括的に定めた会計基準において原則(開示目的)を示し、開示する具体的な項目及びその記載内容については当該原則(開示目的)に照らして判断することを企業に求めることが適切であると考えています。

 

3.開示する項目の識別

 

会計上の見積もりの開示にあたり、当年度の財務諸表に計上した金額が会計上の見積りによるもののうち、翌年度の財務諸表に重要な影響を及ぼすリスクがある項目を識別するとしています。

 

(1)項目の識別における判断

 

翌年度の財務諸表に及ぼす重要な影響を検討するにあたっては、影響の金額的な大きさ及びその発生可能性を総合的に勘案して企業が判断することとしています。

影響の金額的大きさやどの程度の影響が見込まれる場合に重要性があるとするかなどの項目の識別について、判断のための詳細な規準は示さないこととされました。

 

(2)識別する項目

 

① 対象

識別する項目は、通常、当年度の財務諸表に計上した資産及び負債であるとしています。

 

② 識別の考え方

・当年度の財務諸表に計上した金額に重要性があるものに着目して開示項目を識別するのではありません。

・当年度の財務諸表に計上した金額委が会計上の見積りによるもののうち、翌年度の財務諸表に重要な影響を及ぼす可能性が高いものに着目して開示する項目を識別します。

 

③ 例示

固定資産について減損損失の認識は行わないとした場合でも、翌年度の財務諸表に及ぼす影響を検討した上で、当該固定資産を開示する項目として識別する可能性があるとしています。

 

④ その他

なお、翌年度の財務諸表に重要な影響を及ぼすリスクがある場合には、当年度の財務諸表に計上した収益及び費用、並びに会計上の見積りの結果、当年度の財務諸表に計上しないこととした負債を識別することを妨げないとしています。

また、注記において開示する金額の算出に当たって見積りを行ったものについても、翌年度の財務諸表に重要な影響を及ぼすリスクがある場合には、これらを識別することは妨げないとしています。

4.注記事項

 

(1)会計上の見積もりの開示の対象とした項目名の注記

 

開示する項目として識別した項目について、会計上の見積りの内容を表す項目名を記載することとしています。

当該注記は独立の注記とし、識別した項目が複数ある場合には、それらの項目名は単一の注記として記載することを求めています。

 

(2)項目名に加えて注記する事項

 

① 当年度の財務諸表に計上した金額

 

② 会計上の見積りの内容について財務諸表利用者の理解に資するその他の情報

 

具体的な内容や記載方法は、開示目的に照らして判断することとしています。

 

なお、財務諸表の他の個所の注記に含めて記載がある場合には、当該他の注記事項を参照することにより当該事項の注記の記載に変えることができるとしています。

 

(3)財務諸表利用者の理解に資するその他の情報の例示

 

① 当年度の財務諸表に計上した金額の算出方法

② 当年度の財務諸表に計上した金額の算出に用いた主要な仮定

③ 翌年度の財務諸表に与える影響

 

上記は例示であり、注記事項は開示目的に照らして判断するとしています。

 

5.連結財務諸表を作成している場合の個別財務諸表の取扱い

 

連結財務諸表を作成している場合に、個別財務諸表において本会計基準に基づく注記を行うときは、「会計上の見積もりの内容について財務諸表利用者の理解に資するその他の情報」の注記事項について、連結財務諸表における記載を参照することができるとしています。

 

6.適用時期及び経過措置

 

(1)適用時期

 

2021年3月31日以後終了する連結会計年度及び事業年度の年度末に係る連結財務諸表及び個別財務諸表から適用します。

ただし、本会計基準の公表日以後終了する連結会計年度及び事業年度における年度末に係る連結財務諸表及び個別財務諸表から適用することができます。

 

(2)適用初年度の取扱い

 

本会計基準の適用初年度において、本会計基準の適用は表示方法の変更として取り扱います。

ただし、適用初年度の連結財務諸表及び個別財務諸表に併せて表示される前連結会計年度における連結財務諸表に関する注記及び前事業年度における個別財務諸表に関する注記(比較情報)に記載しないことができるとしています。

グループ法人税制~連結納税制度の見直し(案) について

1.はじめに

 

連結納税制度について、制度の適用実態やグループ経営の実態を踏まえ、企業の事務負担の軽減等の観点から簡素化等の見直しを行い、損益通算の基本的な枠組みは維持しつつ、各法人が個別に法人税額等の計算及び申告を行うグループ通算制度に移行します。

 

2.連結納税制度からグループ通算制度への移行

 

(1)グループ通算制度

 

グループ通算制度は各法人が個別に法人税額等の計算及び申告を行う制度です。

企業グループ内の各法人を納税単位として、各法人が個別に法人税額の計算及び申告を行いつつ、損益通算等の調整を行う簡素な仕組みとされ、申告納付や修正・更正に係る事務負担の軽減が図られます。

 

また、連結納税制度の選択のハードルとなっている適用開始・グループ加入時の時価評価課税・欠損金の切捨て等について組織再編税制と整合性が取れた制度とすることで、その対象が縮小されます。

 

(2)現行の連結納税制度

 

現行の連結納税制度は、企業グループ全体を一つの納税単位とし、一体として計算した法人税額等を親法人が申告する制度です。

 

法人間の連絡・調整が煩雑で、申告のための事務負担や計算誤りがあった場合の修正・更正の事務負担が過重になっており、損益通算のメリットがあるにもかかわらず、制度を選択していない企業グループも多く存在していました。

 

 

3.所得金額及び法人税額の計算

 

 (1)損益通算

 

① グループ通算制度

各法人が納税主体となることから、各法人の所得金額又は欠損金額を計算した上で、欠損法人の欠損金額をグループ内の他の法人の所得金額と損益通算します。

所得法人の所得金額と通算されます。

 

研究開発税制及び外国税額控除については、企業経営の実態を踏まえ、現行制度と同様、通算グループ全体で税額控除額を計算します。

 

② 損益通算の方法

損益通算の方法はプロラタ方式で行われ、欠損法人の欠損金額の合計額(所得法人の所得の金額の合計額を限度)を所得法人の所得の金額の比で配分し、所得法人において損金算入されます。

 

この損金算入された金額の合計額は、欠損法人の欠損金額の比で配分し、欠損法人において益金算入されます。

 

(2)繰越欠損金の通算

 

① グループ通算制度における繰越欠損金の通算

通算グループ内の各法人の欠損金の繰越控除前の所得(損益通算後)の金額50%相当額(中小法人等、更生法人等及び新設法人については所得金額)の合計額が控除限度額とされます。

このため、通算グループ内の各法人の控除限度額の合計額は、連結納税制度におけるグループ全体の控除限度額と変わらないと考えられます。

 

グループ通算制度は、個別申告方式であるため、各法人の損益通算後の所得金額からそれぞれ繰越欠損金の控除が行われます。

そのため、損益通算後の自己の所得金額がゼロ又はマイナスである場合には欠損金の控除ができず、通算グループ内の他の所得法人において控除されることになります。

 

連結納税制度とグループ通算制度では、グループ全体での控除額は変わらないものの、各社での控除額は異なると考えられます。

 

② グループ通算制度の適用法人の当期の所得金額又は過年度の欠損金額について誤りがあった場合

通算グループ内の他の法人との間で授受した欠損金額を当初申告額に固定することで、その誤りがあった法人のみが欠損金の繰越控除額を再計算することとされます。

ただし、欠損金の繰越期間に対する制限を潜脱するため又は離脱法人に欠損金を持たせるためにあえて誤った当初申告を行うなど、法人税の負担を不当に減少させることとなると認められるときは、職権更正において再計算ができることとされます。

 

(3)税効果相当額の授受

 

通算グループ内の法人間で、グループ通算制度を適用することにより減少する法人税及び地方法人税の額に相当する金額( 「通算税効果額」という)を授受する場合には、その授受する金額は、益金の額及び損金の額に算入しないこととされます。

 

(4)親法人の適用開始前の繰越欠損金の取扱い

 

親法人も子法人と同様、グループ通算制度の適用開始前の繰越欠損金を自己の所得の範囲内でのみ控除できます。

 

4.開始・加入時の時価評価

 

(1)時価評価課税

 

 

グループ通算制度では、以下の取り扱いになります。

 

① 親法人

グループ通算制度では、親法人も子法人と同様に取り扱われ、時価評価法人の範囲に含まれます。

 

② 子法人

子法人は時価評価課税の対象となる範囲が縮小されます。

 

グループ通算制度では、相対取引での株式購入により完全子会社化された子法人についても、適格組織再編成と同等の要件を満たせば時価評価の対象外となります。

 

なお、連結納税制度では、租税回避防止の観点から、原則として、子法人が適用開始又は連結グループへの加入に際して保有する時価評価資産の時価評価課税が行われ、含み損益を清算してから連結納税が適用されます。

また、時価評価の対象となる子法人の開始・加入前に発生した繰越欠損金は全額が切り捨てられます。

 

5.欠損金の持込制限及び含み損等の利用制限

 

(1)欠損金の持込制限

 

① グループ通算制度では開始前欠損金のうち持込可能なものについては、自己の所得金額の範囲内でのみ繰越控除できる欠損金として「特定欠損金」とされます。

 

なお、連結納税制度では、親法人の開始前欠損金は制限なく 連結グループ内で繰越控除が可能です。

 

② なお、既存の連結納税制度適用グループの親法人の欠損金(非特定連結欠損金)は、グループ通算制度への移行後も特定欠損金に該当しないものとして、通算グループ内の他の法人の所得金額と通算できることとされます。

 

(2)含み損等の利用制限

 

① 組織再編税制との整合性の観点から、開始・加入前の支配関係が5年超継続していない親法人と子法人について、支配関係発生前の欠損金の持込み及び含み損の通算グループ内での損金算入を一定期間において制限する措置が講じられます。

 

 ② ただし、開始・加入前に親法人との間に支配関係が5年超継続していない子法人であっても、通算グループ内のいずれかの法人との間に共同事業性がある場合には、支配関係発生前の欠損金の持込み及び含み損の通算グループ内での損金算入について制限を受けないこととされます。

 

6.適用時期  

 

令和4年4月1日以後に開始する事業年度から適用されます。

減損会計~減損の定義、対象資産、手続き、会計単位、兆候、テスト、認識

1.減損の定義

 

「資産の帳簿価額が回収可能価額を超えないよう資産の帳簿価額を回収可能価額まで減少させる手続き」をいいます。

 

2.減損の対象となる資産

 

有形固定資産

無形資産

投資不動産(原価モデル)

関連会社株式

など

 

3.減損手続きの流れ

 

以下の流れで行います。

 

(1)会計単位の決定

個別資産または資金生成単位

 

(2)減損の兆候の検討

 

(3)減損テスト

帳簿価額と回収可能価額の比較

 

(4)減損損失の認識

回収可能価額まで帳簿価額を減額

 

4.会計単位

 

個別資産のみでは独立したキャッシュ・インフローを生成しない場合は、概ね独立したキャッシュ・インフローを生成する最小の資産グループで減損の検討を行います。

 

5.減損の兆候

 

(1)外部の情報

市場価値の著しい下落

経営環境の著しい悪化

市場金利の上昇

PBR1倍割れ

など

 

(2)内部の情報

陳腐化

物的損害

遊休化

事業の廃止計画

営業損益の著しい悪化

など

 

(3)日本基準との比較

 

①日本基準

「固定資産の減損に係る会計基準の適用指針11-17」により具体的な数値基準を用いています。

 

例:

営業活動から生じる損益又はキャッシュ・フローが継続してマイナス

市場価額が帳簿価額から50%程度以上下落

 

②IFRS

より広い意味合いを有する状況証拠であり、感応度が高いため、より早期に減損の兆候が把握される傾向にあります。

また、純資産の帳簿価額が、その企業の株式の時価総額を超過している場合も、 減損の兆候として認められる例の 1つとされています。

 

 

6.減損テスト

 

減損の兆候がある場合、減損テストを実施します。

 

(1)回収可能価額の算定

 

①処分コスト控除後の公正価値

資産の公正価値から資産の処分に直接起因するコストを控除したものになります。

 

②使用価値

将来キャッシュ・フローの見積額の割引現在価値になります。

 

③減損テストの頻度

減損の兆候がある資産は、減損テストを実施します。

 

耐用年数が確定できない無形資産やのれんが含まれる資金生成単位は、減損の兆候がなくても、年1回は減損テストを実施します。

 

(2)のれん

 

のれんは、企業結合のシナジーから便益を受けると見込まれる資金生成単位または資金生成単位グループに配分されます。

 

のれんを内部管理目的で監視している企業内の最小レベルで、かつ、事業セグメントより大きくない資金生成単位あるいは資金生成単位グループに配分されます。

 

(3)全社資産

 

①合理的で首尾一貫した基準により資金生成単位に配分できる場合

配分された全社資産を他の資産と同様に取り扱い減損手続きを行います。

 

②合理的で首尾一貫した基準により資金生成単位に配分できない場合

全社資産を含めずにそれぞれの資金生成単位について減損手続きを行います。

次に、減損後の資金生成単位グループに全社資産を加えて再度減損テストを行います。

 

7.減損損失の認識

 

(1)IFRS(IAS36.59)

 

減損の兆候が存在する場合には、回収可能価額を算定し、資産の帳簿価額がその回収可能価額を上回る場合に、その差額を減損損失として認識します。

 

回収可能価額は、処分費用控除後の公正価値と使用価値のいずれか高い金額となります。

 

認識と測定を同時に行う「1段階アプローチ」と呼ばれています。

 

(2)日本基準

 

「固定資産の減損に係る会計基準(以下「基準」)二2,3」の定めにより、認識と測定を別個にこなう「2段階アプローチ」を行います。

 

減損の兆候が存在する場合には、 最初に減損の認識の判定(資産の帳簿価額を、使用及び最終的処分を通じて発生する割引前将来キャッシュ・フローの総額と比較する)を行います。

 

その結果、資産の帳簿価額が割引前キャッシュ・フローの総額よりも大きいため、回収不能と判断された場合、資産の帳簿価額を回収可能価額(正味売却価額と使用価値のいずれか高い金額)まで減額するように減損損失を認識します。

 

(3)のれんの減損

 

①IFRS(IAS36.10,11,80)

 

規則的な償却は行わないませんが、 減損の兆候が無くても毎期1回、減損の兆候がある場合には追加で、減損テストを行います。

 

②日本基準

 

のれんは、20年以内のその効果が及ぶ期間にわたって規則的に償却を行った上で、減損の兆候がある場合には、別途、減損テストを実施します。

 

8.減損損失の戻入れ

 

(1)IFRS(IAS36.110,117,124)

 

①のれんの減損損失の戻入れは禁止されています。

 

②他の資産については、 毎年、 戻入れの兆候について検討しなければなりません。

 

(例)

・外部の情報

市場価値の著しい増加

経営環境の著しい改善

市場金利の下落

 

・内部の情報

性能の改善または拡張

営業損益の著しい改善

 

③戻入れが必要な場合は、過年度に減損がなかったとした場合の(償却又は減価償却控除後の)帳簿価額を上限として、減損損失を戻し入れます。

 

(2)日本基準

 

あらゆる資産について禁止されています。

 

株式交換の税務の概要と課税関係

. 株式交換等の課税の概要

 

(1)株式交換等により完全子法人の株主が完全子法人株式の移転をしたときは、原則として当該株主が時価により当該株式を譲渡したものとして取扱われます。

 

但し、当該株式交換等が完全親法人等の株式以外の資産が交付されないものに該当する場合には、当該株式の株式交換等にかかる譲渡損益が繰延べられます。

また、合併・分割税制との整合性を図るため、適格・非適格の概念を株式交換等にも取込み、非適格株式交換等の場合には、完全子法人の有する資産等について法人間の資産の移動はないものの、時価評価をした上でその評価損益を計上することとされています。

 

(2)株式交換とは、株式会社がその発行済株式の全部を他の株式会社等に取得させる取引をいい、株式移転とは、1又は2以上の株式会社がその発行済株式の全部を新たに設立する株式会社に取得させる取引をいいます。

 

株式交換

 

 

 

株式移転

 

(EY新日本有限責任監査法人HPより)

 

2. 完全子法人の課税関係

 

(1)原則的取扱い(非適格株式交換等)

 

非適格株式交換等が行われた場合には、当該完全子法人の当該株式交換等直前に有する時価評価資産の評価益又は評価損が当該株式交換等の日の属する事業年度の益金の額又は損金の額に算入されます。
時価評価については、全ての資産について評価替えを要求されておらず、法令で定める時価評価資産(固定資産、土地、有価証券、金銭債権、繰延資産で一定のものを除く)に限られています。

 

(2)特例的取扱い(適格株式交換等)

 

適格株式交換等が行われた場合には、当該完全子法人において時価評価資産の時価評価課税は行われません。

 

3. 完全子法人の株主の課税関係

 

(1)完全親法人株式等のみが交付される場合(株式の譲渡損益の繰り延べ)

 

株式交換等による完全子法人の株主は、株式交換等により交付される対価として完全親法人株式等のみが交付される場合、完全子法人株式を株式交換等の直前の帳簿価額(譲渡対価=譲渡原価)により譲渡したものとして、完全子法人株式の譲渡損益を繰り延べることとなります。

 

(2)上記(1)以外の場合(株式の譲渡損益の認識)

 

完全子法人の株主が株式交換等により完全子法人の株式の移転をしたときは、その移転をした完全子法人株式の移転の時の価額による譲渡をしたものとして、完全子法人の株主の各事業年度の所得の金額を計算します。

 

4. 完全親法人の受入処理

 

(1)完全子法人株式の取得価額

 

①完全支配関係法人間で行われた株式交換等で株式のみ交付される場合(子法人株主数に応じた受入)

適格株式交換等又は非適格株式交換等のうち株式交換等直前に完全支配関係がある法人間で行われた株式交換等で株式以外の資産が交付されないものにより、完全親法人が取得する完全子法人株式の取得価額は、株式交換等直前の完全子法人の株主数に応じた金額により受け入れることとなります。

 

②上記①以外の場合(時価による受入)

非適格株式交換等により、完全親法人が取得する完全子法人株式の取得価額は、その取得の時における取得のために通常要する価額(時価)で受け入れることとなります。

 

(2)完全親法人の純資産の部の取扱い

 

完全親法人の完全子法人株式の取得価額から一定の交付金銭等の金額を減算した金額が資本金等の額として計上されることとなります。

 

5. 税制適格要件

 

株式交換等の税制適格要件は、パターンごとにそれぞれ下表の「〇」の要件を全て充足する必要があります。

 

 

(1)対価要件
株式交換等の対価として株式交換等完全親法人株式等以外の資産が交付されないこと(株式交換完全親法人が株式交換完全子法人の発行済株式の総数の3分の2以上に相当する数の株式を有する場合において、株主に交付される金銭等を除く)

 

(2)完全支配関係継続要件(共同事業)
株式交換等後に株式交換等完全親法人と株式交換等完全子法人との間に株式交換等完全親法人による完全支配関係が継続することが見込まれているものであること

 

(3)事業関連性要件
株式交換等完全子法人の事業と株式交換完全親法人(株式移転においては他の株式移転完全子法人)の事業とが相互に関連するものであること

 

(4)事業規模要件
株式交換等完全子法人の事業と当該事業に関連する株式交換完全親法人(株式移転においては他の株式移転完全子法人)の事業のそれぞれの売上金額、従業者の数もしくはこれらに準ずるものの規模の割合がおおむね5倍を超えないこと

 

(5)経営参画要件
株式交換等前の株式交換等完全子法人(株式移転においては他の株式移転完全子法人を含む)の特定役員の全てが株式交換等に伴って退任するものでないこと

 

(6)従業者継続要件
株式交換等完全子法人の株式交換等直前の従業者のうち、その総数のおおむね80%以上に相当する数の者が株式交換等完全子法人の業務に引き続き従事することが見込まれていること

 

(7)事業継続要件
株式交換等完全子法人の事業が株式交換等完全子法人において引き続き行われることが見込まれていること(共同事業を営むための株式移転においては、株式移転完全子法人の事業と当該事業と関連する他の株式移転完全子法人の事業とが引き続き行われることが見込まれていること)

 

(8)株式継続保有要件
株式交換等により交付される株式交換等完全親法人株式等のうち支配株主(株式交換等直前に株式交換等完全子法人(株式移転においては他の株式移転完全子法人を含む)との間に支配関係がある株主)に交付されるものの全部が支配株主により継続して保有されることが見込まれていること

 

. 株式交換等にかかる税務上の取扱いのまとめ

 

(1)株式交換等にかかる完全子法人及び完全子法人の株主の課税関係をまとめると下表のとおりとなります。

 

 

 

(2)株式交換等にかかる完全親法人の税務上の取扱いをまとめると下表のとおりとなります。