1.企業統治について
株式会社の監査役について説明します。
株式会社を管轄する法律は、「会社法」です。
会社法では、
会社の経営をどのようにするのかをという観点から、株主と経営者の関係を定めています。
「企業統治」ということが出来ます。
会社法では、以下の会社に分けて「企業統治」を規定しています。
●公開会社と非公開会社
●大会社と中小会社
なお、同族会社・非同族会社は税法上の分け方になり、会社法ではそのような区分けはありません。
それでは、それぞれどのようなものかを見ていきましょう。
公開会社
全部又は一部の株式を会社の承諾なしに自由に譲渡できるようになっている会社のこと。
非公開会社
発行する全部の種類の株式について、その譲渡について承認を要する旨の定款の定めのある会社のこと。
大会社
以下のどちらかに該当する株式会社です。
《1》
最終事業年度の貸借対照表に資本金として計上した額が、5億円以上である
《2》
最終事業年度の貸借対照表の負債の部に計上した額の合計額が、200億円以上である
中小会社
大会社ではない株式会社をいいます。
『公開会社』と『非公開会社』
『大会社』と『中小会社』
という観点からは、以下のように分けられます。
公開会社 | 非公開会社 | |
大会社 | 多くの上場企業 | 上場企業の子会社や関連会社等 |
小会社 | 小規模公開会社 | 多くの中小企業 |
それでは、非公開の中小会社について
取締役・監査役の「要」 or 「不要」を見てみましょう。
※不要の場合でも、任意で設置は可能になります。
取締役 | 必要 | 任期は、原則2年 10年まで延長可 単独も可 |
取締役会 | 不要 | |
監査役 | 不要 | |
監査役会 | 不要 |
取締役と監査役の組み合わせの主なものを示してみます。
取締役は必須なので、取締役を中心に考えてみます。
取締役会 | 監査役 (会計監査のみ) |
監査役 (業務監査・会計監査) |
監査役会 | |
× | × | × | × | |
× | 〇 | × | × | |
× | × | 〇 | × | |
取締役 | 〇 | 〇 | × | × |
〇 | × | 〇 | × | |
〇 | × | × | 〇 | |
〇 | × | × | 〇 |
企業統治の観点からは、
中小企業といっても、取締役会と監査役はあった方がよいと思います。
2.なぜ監査役が必要か
大部分の中小会社は、株主と取締役が同一かもしれません。
会社の規模が小さいうちは、取締役だけで会社経営を行うことが迅速な意思決定を行うために有効かもしれません。
会社がある程度の規模になると組織的な運営が必要になります。
このときに、経営の意思決定に関して透明性・妥当性を確保する必要が出てきます。
取締役会や監査役を設置することで、
意思決定の透明性・妥当性を担保することになり、
特に、監査役は以下にのべる業務監査権限がありますので、経営者の意思決定をチェックする機能があります。
3.監査役の仕事
では、具体的に、監査役とはどのようなことをするのでしょうか。
監査役は、会社の業務と会計について監査を行います。
会社法では、監査役の権限を定めています。業務監査権限と会計監査権限といいます。
特に、取締役の業務執行を監査することが重要になります。
監査役は、いつでも取締役や従業員に対して事業の報告を求め、会社の業務や財産の状況を調査することができます。
年初に監査計画を立て、期中に監査を実施し、年度末に会計監査を行い、監査報告書を作成する、ということになります。
また、取締役会には、出席が義務づけられています。
監査計画
これは、1年間の監査の方針と具体的計画を記載します。
具体的計画には、経営者から経営方針や事業の進捗状況をヒアリングしたり、
営業や生産の現場を視察したりする時期や内容を記載します。
期中監査
監査を実施し、気がついた点があれば、経営者の報告し、意見や改善策を聴取します。
会計監査
貸借対照表や損益計算書などの計算書類が、会計基準に従って適切に作成されているかを監査します。
監査報告書
監査報告書には、取締役の業務執行において問題があったかどうかを記載します。