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財務情報以外の開示情報について~記述情報の開示に関する原則

金融庁は、平成31年3月19日付で「記述情報の開示に関する原則」(以下、「本原則」)を公表しました。

本原則は、金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループ報告(平成30年6月28日公表)の提言を受け、ルールへの形式的な対応にとどまらない開示の充実に向けた企業の取り組みを促すため、開示の考え方、望ましい開示の内容や取り組み方をまとめたプリンシプルベースのガイダンスを策定すべしとの要請から取りまとめられたものです。

 

1.本原則の目的

財務情報以外の開示情報である、いわゆる「記述情報」について、開示の考え方、望ましい開示の内容や取り組み方をまとめたものです。

企業が開示する記述情報は、企業の業態や企業が置かれた経営環境等に応じ様々ですが、本原則は、記述情報の中でも、投資家による適切な投資判断を可能とし、投資家と企業との深度ある建設的な対話につながる項目である、経営方針・経営戦略等、経営成績等の分析、リスク情報を中心に、有価証券報告書における開示の考え方等を整理することを目的としています。

開示書類の作成・公表に関与する方は、本原則に従った開示が実現しているか、自主的な点検を継続することが期待されています。

また、本原則は、投資家が企業との対話を行う際に利用することも有用であるとしています。

 

2.総 論

本原則では、まず総論として、以下の原則を定めるとともに、それぞれの原則について、考え方及び望ましい開示に向けた取り組みが示されています。

 

(1)企業情報の開示における記述情報の役割

記述情報は、財務情報を補完し、投資家による適切な投資判断を可能とします。

また、記述情報が開示されることにより、投資家と企業との建設的な対話が促進され、企業の経営の質を高めることができます。
このため、記述情報の開示は、企業が持続的に企業価値を向上させる観点からも重要です。企業には、記述情報及びその開示のこのような機能を踏まえ、充実した開示をすることが期待されます。

 

(2)記述情報の開示に共通する事項

①取締役会や経営会議の議論の適切な反映

記述情報は、投資家が経営の目線で企業を理解することが可能となるように、取締役会や経営会議における議論を反映することが求められます。

 

②重要な情報の開示

記述情報の開示については、各企業において、重要性(マテリアリティ) という評価軸を持つことが求められます。

 

③セグメントごとの情報の開示

記述情報は、投資家に対して企業全体を経営者の目線で理解し得る情報を提供するために、適切な区分で開示することが求められます。

 

④分かりやすい開示

記述情報の開示に当たっては、その意味内容を容易に、より深く理解することができるよう、分かりやすく記載することが期待されます。

 

3.各 論

次に、各論として、以下の開示項目について、考え方及び望ましい開示に向けた取り組みが示されています。

 

(1)経営方針、経営環境及び対処すべき課題等

  1. 経営方針・経営戦略等
  2. 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
  3. 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 

(2)事業等のリスク

 

(3)経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析

  1. MD&Aに共通する事項
  2. キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
  3. 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

取締役会の権限と取締役の義務について

会社の重要な機関である取締役会と取締役について、その権限と義務を解説します。

 

1.機関設計に関する会社法の規程

 

会社法では、次に掲げる株式会社は、取締役会を置かなければならないとしています。

 

(1)公開会社

(2)監査役会設置会社

(3)監査等委員会設置会社

(4)指名委員会等設置会社

 

また、監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社を除く取締役会設置会社は、監査役を置かなければなりません。

 

2.取締役会の権限

 

会社法は、取締役会の権限についての基本的な定めを第362条で行い、指名委員会等設置会社及び監査等委員会設置会社に関しては別途規程を設けています。

 

(1)取締役会の構成

取締役会は、すべての取締役で組織します。

 

(2)取締役会の権限

 

取締役会には、以下の権限があります。

 

① 取締役会設置会社の業務執行の決定

② 取締役の職務の執行の監督

③ 代表取締役の選定及び解職

 

(3)取締役会は、次に掲げる事項を含む重要な業務執行の決定を取締役に委任することはできません。

 

① 重要な財産の処分及び譲受け

② 多額の借財

③ 支配人その他の重要な使用人の選任及び解任

④ 支店その他の重要な組織の設置、変更及び廃止

⑤ 社債に関する事項

⑥ 取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制と株式会社の業務並びに当該株式会社及びその子会社から成る企業集団の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制の整備

⑦ 取締役等の責任の免除

 

なお、大会社である取締役会設置会社においては、取締役会は、⑥に掲げる事項を決定しなければなりません。

 

3.取締役の義務

(1)取締役と会社の関係

取締役と会社の関係は、「株式会社と役員及び会計監査人との関係は、委任に関する規定に従う」とされています。

 

民法では、「委任とは、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる」としていて、「受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う」としています。

いわゆる、善管注意義務です。

 

(2)会社法の忠実義務の規定

 

会社法は、「取締役は、法令及び定款並びに株主総会の決議を遵守し、株式会社のため忠実にその職務を行わなければならない」として、忠実義務を課しています。

 

忠実義務としては、「競業及び利益相反取引の制限」があり、「取締役は、次に掲げる場合には、株主総会において、当該取引につき重要な事実を開示し、その承認を受けなければならない」とされています。

次ぐに掲げるものがその対象です。

 

① 取締役が自己又は第三者のために株式会社の事業の部類に属する取引をしようとするとき。

② 取締役が自己又は第三者のために株式会社と取引をしようとするとき。

③ 株式会社が取締役の債務を保証することその他取締役以外の者との間において株式会社と当該取締役との利益が相反する取引をしようとするとき。

 

(3)取締役の報告義務

取締役は、株式会社に著しい損害を及ぼすおそれのある事実があることを発見したときは、直ちに、当該事実を株主(監査役設置会社にあっては「監査役」、監査役会設置会社にあっては「監査役会」)に報告する義務があります。

 

監査役・監査役会と会計監査人について

監査役・監査役会・会計監査人は、会社のガバナンスの担い手です。会計監査人の選解任や会計監査報告等について、監査役・監査役会との関連を含めて解説します。

 

1.会計監査人の選任

会計監査人は、株主総会の決議によって選任されます。

会計監査人は、公認会計士又は監査法人でなければなりません。

 

会計監査人の任期は、選任後一年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとし、定時株主総会において別段の決議がされなかったときは、当該定時株主総会において再任されたものとみなされます。

 

2.会計監査人の解任

会計監査人は、いつでも、株主総会の決議によって解任することができます。

解任された会計監査人は、その解任について正当な理由がある場合を除き、株式会社に対し、解任によって生じた損害の賠償を請求することができます。

 

3.監査役による会計監査人の解任

監査役会は、会計監査人が次のいずれかに該当するときは、その会計監査人を解任することができます。

 

(1)職務上の義務に違反し、又は職務を怠ったとき。

(2)会計監査人としてふさわしくない非行があったとき。

(3)心身の故障のため、職務の執行に支障があり、又はこれに堪えないとき。

 

解任は、監査役が二人以上ある場合には、監査役の全員の同意によって行わなければなりません。

 

会計監査人を解任したときは、監査役は、その旨及び解任の理由を解任後最初に招集される株主総会に報告しなければなりません。

 

4.監査役の選任に関する監査役の同意等

 

取締役は、監査役の選任に関する議案を株主総会に提出するには、監査役(監査役が二人以上ある場合にあっては、その過半数)の同意を得なければなりません。

また、監査役は、取締役に対し、監査役の選任を株主総会の目的とすること又は監査役の選任に関する議案を株主総会に提出することを請求することができます。

 

5.会計監査人の選任等に関する議案の内容の決定

 

監査役設置会社においては、株主総会に提出する会計監査人の選任及び解任並びに会計監査人を再任しないことに関する議案の内容は、監査役が決定します。

 

6.会計監査人の監査

 

会計監査人は、計算関係書類を受領したときは、次に掲げる事項を内容とする会計監査報告を作成しなければなりません。

 

(1)会計監査人の監査の方法及びその内容

 

(2)計算関係書類が当該株式会社の財産及び損益の状況を全ての重要な点において適正に表示しているかどうかについての意見があるときは、その意見

 

当該意見が次のイからハまでに掲げる意見である場合にあっては、それぞれ当該イからハまでに定める事項の記載

 

イ 無限定適正意見

監査の対象となった計算関係書類が一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行に準拠して、当該計算関係書類に係る期間の財産及び損益の状況を全ての重要な点において適正に表示していると認められる旨

 

ロ 除外事項を付した限定付適正意見

監査の対象となった計算関係書類が除外事項を除き一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行に準拠して、当該計算関係書類に係る期間の財産及び損益の状況を全ての重要な点において適正に表示していると認められる旨並びに除外事項

 

ハ 不適正意見

監査の対象となった計算関係書類が不適正である旨及びその理由

 

(3)前号の意見がないときは、その旨及びその理由

 

(4)追記情報

「追記情報」とは、次に掲げる事項その他の事項のうち、会計監査人の判断に関して説明を付す必要がある事項又は計算関係書類の内容のうち強調する必要がある事項としています。

 

① 継続企業の前提に関する注記に係る事項

② 会計方針の変更

③ 重要な偶発事象

④ 重要な後発事象

 

(5)会計監査報告を作成した日

 

7.会計監査人設置会社の監査役の監査報告の内容

 

会計監査人設置会社の監査役は、計算関係書類及び会計監査報告を受領したときは、次に掲げる事項(監査役会設置会社の監査役の監査報告にあっては、(1)から(5)までに掲げる事項)を内容とする監査報告を作成しなければなりません。

 

(1)監査役の監査の方法及びその内容

(2)会計監査人の監査の方法又は結果を相当でないと認めたときは、その旨及びその理由

(3)重要な後発事象

(4)会計監査人の職務の遂行が適正に実施されることを確保するための体制に関する事項

(5)監査のため必要な調査ができなかったときは、その旨及びその理由

(6)監査報告を作成した日

 

8.会計監査人設置会社の監査役会の監査報告の内容等

 

(1)会計監査人設置会社の監査役会は、監査役が作成した監査報告に基づいて、監査役会の監査報告を作成しなければなりません。

 

(2)監査役会監査報告は、次に掲げる事項を内容とするものでなければなりません。

この場合において、監査役は、当該事項に係る監査役会監査報告の内容が当該事項に係る監査役の監査役監査報告の内容と異なる場合には、当該事項に係る各監査役の監査役監査報告の内容を監査役会監査報告に付記することができます。

 

① 監査役及び監査役会の監査の方法及びその内容

② 前項(2)から(5)までに掲げる事項

③ 監査役会監査報告を作成した日

 

(3)会計監査人設置会社の監査役会が監査役会監査報告を作成する場合には、監査役会は、一回以上、会議を開催する方法又は情報の送受信により同時に意見の交換をすることができる方法により、監査役会監査報告の内容を審議しなければなりません。

 

9.会計監査人の職務の遂行に関する事項

 

会計監査人は、特定監査役に対する会計監査報告の内容の通知に際して、当該会計監査人についての次に掲げる事項を通知しなければなりません。

ただし、全ての監査役が既に当該事項を知っている場合は、この限りではありません。

 

(1)独立性に関する事項その他監査に関する法令及び規程の遵守に関する事項

(2)監査、監査に準ずる業務及びこれらに関する業務の契約の受任及び継続の方針に関する事項

(3)会計監査人の職務の遂行が適正に行われることを確保するための体制に関するその他の事項

 

監査基準委員会報告書の体系及び用語について

監査基準委員会報告書は、日本公認会計士協会監査基準委員会が作成した監査実務に関する指針で、監査人は遵守することが求められます。

 

「監査基準委員会報告書(序)」(以下、本報告書)の内容は、以下のようになっています。

 

Ⅰ 目 次

 

1.本報告書の目的

2.監査基準委員会報告書を含む監査実務指針の位置付け

3.監査基準委員会報告書の体系

4.監査基準委員会報告書における参照方式

5.監査業務に関連する用語

6.不正リスク対応基準に関連する指針

 

付録1: 監査基準委員会報告書の体系

付録2: 用語集

付録3: 不正リスク対応基準に準拠して監査を実施する場合の要求事項及び適用指針を含む監査基準委員会報告書の一覧

 

Ⅱ 内 容

 1.本報告書の目的

本報告書は、監査基準委員会報告書の体系及び用語法について明確にすることにより、監査基準委員会報告書の全体的な理解に資することを目的としています。

 

2.監査基準委員会報告書を含む監査実務指針の位置付け

(1)監査基準の体系

我が国において一般に公正妥当と認められる監査の基準に関しては、平成22年に改訂された監査基準の「前文二1」において、「我が国の監査の基準の体系としては、平成3年の監査基準の改訂において、監査基準では原則的な規定を定め、監査基準を具体化した実務的・詳細な規定は日本公認会計士協会の指針(監査実務指針)に委ね、両者により我が国における一般に公正妥当と認められる監査の基準とすることが適切」と示されています。

ここで示されている「監査実務指針」は、監査及び監査に関する品質管理に関して、日本公認会計士協会に設置されている各委員会が報告書又は実務指針の名称で公表するものが該当し、我が国における一般に公正妥当と認められる監査の基準の一部を構成しています。

監査基準委員会報告書は、企業会計審議会が公表する監査基準(法令により準拠が求められている場合は、監査における不正リスク対応基準を含む。)を実務に適用するために具体的・詳細に規定したものであり、監査実務指針の中核となるものです。

 

(2)実務指針の適用

監査実務指針を実務に適用するに当たっては、日本公認会計士協会が公表する監査に関する研究報告や研究資料、及び一般的に認められている監査実務慣行が参考になることがあります。

これらは、監査実務指針の適用上の留意点や具体的な適用の方法を例示し、実務上の参考として示すものであることから、監査実務指針を構成するものではありません。

 

3.監査基準委員会報告書の体系

監査基準委員会報告書には公表順に付す番号の他に、監査基準委員会報告書の基になった国際監査基準(ISA)との関連性を明確にするため、ISAの体系に沿った以下の報告書番号を付しています。

相当するISAがない我が国独自の監査基準委員会報告書は、900番台としています。

 

200-299 監査全般にわたる基本的事項と責任

300-499 リスク評価及び評価したリスクへの対応

500-599 監査証拠

600-699 他者の作業の利用

700-799 監査の結論及び報告

800-899 特殊な監査業務

900-999 その他の考慮事項

 

4.監査基準委員会報告書における参照方式

監査基準委員会報告書間における相互参照には、前述の報告書番号を用いています。

 

また、相互参照に略称を用いる場合がありますが、それぞれ以下を指しています。

品基報 : 品質管理基準委員会報告書

監基報 : 監査基準委員会報告書

監基研 : 監査基準委員会研究報告

監保報 : 監査・保証実務委員会報告

監保実 : 監査・保証実務委員会実務指針

監保研 : 監査・保証実務委員会研究報告

保証実 : 保証業務実務指針

 

 5.監査業務に関連する用語

品質管理基準委員会報告書、監査基準委員会報告書及び関連する監査実務指針並びに保証業務実務指針の「定義」に含まれる用語に、その他、監査の基本的な用語や使用頻度が高く報告書の理解を促進するために必要と考えられる用語を追加して、用語集を示しています。用語集には、ISAで用いられている英文表記を含めて作成しています。

 

用語集の利用にあたっては、備考欄に記載している品質管理基準委員会報告書及び監査基準委員会報告書等の本文を参照の上、理解されなければなりません。

 

6.不正リスク対応基準に関連する指針

監査基準委員会報告書の一部には、監査における不正リスク対応基準に準拠して監査を実施する際に遵守が求められる要求事項と関連する適用指針(項番号の冒頭に(F)が付されています。)が含まれています。

公開企業の監査を行う監査法人の透明性に関するIOSCO 報告書

証券監督者国際機構(IOSCO)は、平成 27 年 11 月 6 日 に、最終報告書「公開企業の監査を行う監査法人の透明性」(以下、本報告書)を公表しました。

 

1.本報告書の内容

 

本報告書は「監査法人の透明性報告」を取り扱っており、投資家及びその他の利害関係者に対して監査法人自身の透明性に関する報告、とりわけ、監査法人のガバナンス及び財務諸表監査における品質管理体制に関する報告を行う上で、監査法人が採用する実務について検討しています。

 

2.本報告書の有益性

 

透明性報告は、監査法人内部での内省及び規律を高め、監査法人自身の監査品質に関する関心の向上を促進する可能性があり、投資家及びその他の利害関係者にとって有益であると考えられます。

監査契約の締結検討のために、監査法人間の比較をする場合、透明性報告は、各監査法人の監査品質の情報を提供することで、公開企業の監査人を選任する責任者の意思決定プロセスの一助となる可能性があります。

 

本報告書は、監査法人の透明性報告に関するステートメント(声明)と指針を含んでいます。当該指針は、優れた取組みを奨励するとともに、高品質な透明性報告に資するような枠組みとして機能することを意図したものです。

 

3.本報告書のための研究

 

本報告書公表のため、IOSCO は、当該分野について以下の方法によって研究を進めてきました。

 

(1)規制当局の観点による公開企業監査の品質に関する円卓会議の開催

(2)コンサルテーション・ペーパーの公表とそれに対して寄せられた 21 のコメントレターの分析

(3)複数の監査監督当局、その他公開企業の監査業務関与者からの意見聴取

(4)監査法人における現行の報告実務及び IOSCO 加盟国のうち数カ国における法令上の報告要求に関する調査実施

 

 

4.高品質な透明性報告の条件

 

IOSCO の研究結果及び証券規制というIOSCO の目的との整合性の観点から、IOSCO は、透明性報告に含まれる情報が、とりわけ以下のような要素を含んでいる場合には、当該報告は高品質たりうると考えています。

 

(1)監査法人の法的構造及びガバナンス構造

(2)監査品質を向上させるための監査法人の取組み

(3)監査法人内部における監査品質の指標

(4)監査法人外部の団体の取組みによって開発される監査法人の監査品質に関する指標

 

5.透明性報告に含まれる情報

 

監査法人がこれらの事項を記載するにあたって、IOSCOは、透明性報告に含まれる情報は、以下のような性質を備えているべきであるとしています。

 

(1)明瞭・有用であり、報告書に関する様々な想定利用者にとって有意義となるよう十分詳細に記述されている

(2)事実を基に記載し、誤解をまねく可能性がない

(3)偏りがなく、マーケティング又はサービスの売込みを指向するものではない

(4)簡潔かつ当該監査法人固有の内容を記載し、紋切り型の記述を避ける

(5)適時で、正確かつ完全

(6)監査法人の監査品質に係るアウトプット及びインプットの評価に関する記述のバランスが取れている

(7)監査法人間において比較可能性がない場合があるなどを含め、監査品質に関する指標の限界に関する十分な説明がなされている

 

自社利用のソフトウェアの会計処理~研究開発費に係る会計基準より

自社利用のソフトウェアに関する会計処理は、平成10年3月13日に企業会計審議会により「研究開発費等に係る会計基準」(以下、本基準)が公表されています。

また、日本公認会計士協会は、平成11年3月31日(最終改正:平成26年11月28日)に「研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関する実務指針」(以下、本実務指針)を公表しています。

 

1.ソフトウェアの定義

ソフトウェアとは、コンピュータを機能させるように指令を組み合わせて表現したプログラム等を言います。その範囲としては、以下になります。

(1)コンピュータに一定の仕事を行わせるためのプログラム

(2)システム仕様書、フローチャート等の関連文書

 

なお、ソフトウェアがコンピュータに一定の仕事を行わせるプログラム等であるのに対し、コンテンツはその処理対象となる情報の内容であり、それぞれ別個の経済価値を持つものであることから、コンテンツはソフトウェアに含めないこととされています。

 

コンテンツの例としては、データベースソフトウェアが処理対象とするデータや、映像・音楽ソフトウェアが処理対象とする画像・音楽データ等が挙げられています。

 

2.研究開発費に係る会計処理

研究開発費はすべて発生時に費用処理しなければならず、ソフトウェア制作費のうち、研究開発に該当する部分も研究開発費として費用処理します。

 

3.研究開発費に該当しないソフトウェア制作費にかかる会計処理

ソフトウェアの制作費は、その制作目的により、将来の収益との対応関係が異なること等から、ソフトウェア制作費に係る会計基準は、取得形態(自社製作、外部購入)別ではなく、制作目的別に設定することとしています。

 

研究開発費に該当しないソフトウェア制作費の会計基準を制作目的別に定めるにあたっては、販売目的のソフトウェアと自社利用のソフトウェアとに区分し、販売目的のソフトウェアをさらに受注制作のソフトウェアと市場販売目的のソフトウェアに区分することとしています。

 

これは制作目的に応じて、将来の収益との対応関係が異なることに着目しているためといえます。

 

4.自社利用ソフトウェアにかかる会計基準

 

(1)資産計上の要件

ソフトウェアの提供または利用により、将来の収益獲得または費用削減が確実であると認められる場合には、適正な原価を集計して当該ソフトウェアの製作費を無形固定資産として資産計上するか、または、取得に要した費用を無形固定資産として資産計上しなければならない、としています。

 

機械装置に組み込まれているソフトウェアは、当該機械装置に含めて処理します。

 

制作途中のソフトウェアは、無形固定資産の仮勘定として計上されます。

 

ソフトウェアが資産計上される場合の一般的な例示は、以下のとおりです。

 

① 通信ソフトウェア又は第三者への業務処理サービスの提供に用いるソフトウェア等を利用することにより、会社が、契約に基づいて情報等の提供を行い、受益者からその対価を得る場合

 

② 自社で利用するためにソフトウェアを制作し、当初意図した使途に継続して利用することにより、利用する前と比較して会社の業務を効率的又は効果的に遂行することができると明確に認められる場合

 

③ 市場で販売しているソフトウェアを購入し、かつ、予定した使途に継続して利用することによって、会社の業務を効率的又は効果的に遂行することができると認められる場合

 

(2)資産計上の考え方

将来の収益獲得又は費用削減が確実である自社利用のソフトウェアについては、将来の収益との対応等の観点から、その取得に要した費用を資産として計上し、その利用期間にわたり償却を行うべきと考えられます。

したがって、ソフトウェアを用いて外部に業務処理等のサービスを提供する契約が締結されている場合や完成品を購入した場合には、将来の収益獲得又は費用削減が確実と考えられるため、当該ソフトウェアの取得に要した費用を資産として計上することとしています。

 

また、独自仕様の社内利用ソフトウェアを自社で制作する場合又は委託により制作する場合には、将来の収益獲得又は費用削減が確実であると認められる場合を除き費用として処理することとなります。

 

ソフトウェアを用いて外部へ業務処理等のサービスを提供する契約等が締結されている場合のように、その提供により将来の収益獲得が確実であると認められる場合には、適正な原価を集計した上、当該ソフトウェアの制作費を資産として計上しなければなりません。

 

 

(3)資産計上の開始時点

 

資産計上の開始時点は、将来の収益獲得又は費用削減が確実であると認められる状況になった時点であり、そのことを立証できる証憑に基づいて決定します。

 

立証できる証憑の具体例としては、ソフトウェアの制作予算が承認された社内稟議書、ソフトウェアの制作原価を集計するための制作番号を記入した管理台帳等が挙げられます。

 

なお、ソフトウェアの制作開始時点においては、将来の収益獲得又は費用削減が確実であると認められず費用処理していたものの、その後一定時点で将来の収益獲得又は費用削減が確実であると認められた場合には、その一定時点以降に発生した制作費についてソフトウェアとして資産計上することとなります。

過去に費用処理された部分については資産計上しません。

 

(4)資産計上の終了時点

 

資産計上の終了時点は実質的にソフトウェアの制作作業が完了したと認められる状況になった時点であり、そのことを立証できる証憑に基づいて決定します。

 

立証できる証憑の具体例としては、ソフトウェア作業完了報告書、最終テスト報告書等が挙げられます。

 

(5)自社利用ソフトウェアの償却

 

資産計上された自社利用のソフトウェアについては、その利用の実態に応じて最も合理的な減価償却の方法を採用すべきとされています。一般的には定額法が合理的とされています。

 

耐用年数は、当該ソフトウェアの利用可能期間によるべきですが、原則として5年以内の年数としており、5年を超える場合には、合理的根拠に基づくことが必要とされます。

 

修正国際基準(JMIS)とはどのようなものでしょうか。

企業会計基準委員会は、修正国際基準(国際会計基準と企業会計基準委員会による修正会計基準によって 構成される会計基準) の適用に関する文書を2015年6月30日に公表しています。2018年12月27日版が、最終改正となっています。

 

1.目 的

本文書の目的は、修正国際基準(国際会計基準と企業会計基準委員会による修正会計基準 によって構成される会計基準)(以下「修正国際基準」という。)に準拠した連結財務諸表を作成する場合において、準拠すべき規定を示すことであるとしています。

 

 2.構 成

修正国際基準は、以下から構成されます。

 

(1)本文書

 

(2)当委員会が採択した国際会計基準審議会(IASB)により公表された会計基準及び解釈 指針(以下、会計基準及び解釈指針を合わせて「会計基準等」という。)

 

(3)「企業会計基準委員会による修正会計基準」

 

3.適 用

 

修正国際基準に準拠した連結財務諸表を作成する場合には、別紙 1 に記載されている企業会計基準委員会が採択した IASB により公表された会計基準等の規定に、別紙 2 に記載されている企業会計基準委員会による修正会計基準における「削除又は修正」を加えた規定に準拠しなければならないとしています。

 

企業会計基準委員会が採択したIASB により公表された会計基準等において「 International Financial Reporting Standards (IFRSs)」という用語が会計基準等の体系を指すものとして使用されている場合、「Japan’s Modified International Standards (JMIS): Accounting Standards Comprising IFRSs and the ASBJ Modifications」(「修正国際基準(国際会計基準と企業会計基準委員会による修正会計基準によって構成される会計基準)」)と読み替えるものとしています。

 

企業会計基準委員会による修正会計基準は、以下の2つです。

 

(1)企業会計基準委員会による修正会計基準第 1 号「のれんの会計処理」 (2018 年 4 月 11 日改正)

 

(2)企業会計基準委員会による修正会計基準第 2 号「その他の包括利益の会計処理」(2018 年 4 月 11 日最終改正)

 

これにより、「削除又は修正」の対象となる会計基準等は、以下の6基準となっています。

①IFRS 第 3 号「企業結合」

②IAS 第 28 号「関連会社及び共同支配企業に対する 投資」

③ IFRS 第 7 号「金融商品:開示」

④ IFRS 第 9 号「金融商品」(2014 年)

⑤IAS 第 1 号「財務諸表の表示」

⑥ IAS 第 19 号「従業員給付」

 

4.エンドースメント手続きの概要

企業会計基準委員会は、企業会計審議会が公表した「国際会計基準(IFRS)への対応のあり方に関する当面の方針」(2013 年 6 月)の記載に基づいて、2013 年 7 月に「IFRS のエンドースメントに関する作業部会」を設置し、IASB により公表された会計基準等に関するエンドースメント手続を実施し、修正国際基準を公表しています。

 

(1)エンドースメント手続とは

エンドースメント手続は IASB により公表された会計基準等について、我が国で受入れ可能か否かを判断したうえで、必要に応じて、一部の会計基準等について「削除又は修正」し、金融庁において指定する仕組みです。

 

(2)エンドースメント手続きの実施の際の勘案事項

エンドースメント手続を実施するにあたり、 これまでのエンドースメント手続と同様に、修正国際基準が任意適用であることを前提としたうえで、IASB により公表された会計基準等をエンドースメントする際の判断基準として、公益及び投資者保護の観点から、次の点を勘案することとしています。

 

  • 会計基準に係る基本的な考え方

 

  • 実務上の困難さ(作成コストが便益に見合わない等)

 

  • 周辺制度との関連(各種業規制などに関連して適用が困難又は多大なコストを 要することがないか。)

 

(3)考慮事項

これまでのエンドースメント手続と同様に、IASB により公表された会計基準等のエンドースメント手続を実施するうえでは、「削除又は修正」を必要最小限とすること、すなわち、可能な限り受け入れることとしたうえで、十分な検討を尽くし、我が国における会計基準に係る基本的な考え方、実務上の困難さ及び周辺制度との関連の観点からなお受け入れ難いとの結論に達したもののみを「削除又は修正」することとしています。

 

(4)意見発信機能

当該エンドースメント手続により開発される修正国際基準は、実務的に適用可能な1組の会計基準として IFRS に対する我が国の考えを発信する役割も担っていて、これまで「削除又は修正」を行った項目については、企業会計基準委員会より積極的に意見発信を行っているところです。

 

「独立監査人の監査報告書における監査上の主要な検討事項の報告」(KAM)について

日本公認会計士協会(監査基準委員会)は、企業会計審議会から2018年7月5日付けで公表された「監査基準の改訂に関する意見書」に対応するため、関連する監査基準委員会報告書等の新設及び改正について検討を行い、2019年2月27日に、監査基準委員会報告書 701 「独立監査人の監査報告書における監査上の主要な検討事項の報告」(以下、「本報告書」)を公表しました。

 

本報告書の範囲及び目的

1.本報告書の範囲

本報告書は、監査報告書における監査上の主要な検討事項の報告に関する実務上の指針を提供するもので、監査報告書において監査上の主要な検討事項の報告を行う監査人の責任並びに監査上の主要な検討事項の決定についての監査人の判断及びその報告の様式と内容について取り扱っています。

 

2.監査上の重要な検討事項の報告の目的

監査上の主要な検討事項の報告の目的は、「実施された監査に関する透明性を高めることにより、監査報告書の情報伝達手段としての価値を向上させることにある。」としています。

 

(1)監査上の主要な検討事項の報告により、想定される財務諸表の利用者に対して、当年度の財務諸表監査において監査人が職業的専門家として特に重要であると判断した事項を理解するのに役立つ追加的な情報が提供され、監査の透明性を高めることができます。

 

(2)監査上の主要な検討事項の報告は、想定される財務諸表の利用者が企業や監査済財務諸表における経営者の重要な判断が含まれる領域を理解するのに役立つ場合があります。

 

(3)監査報告書において、監査上の主要な検討事項を報告することによって、想定される財務諸表の利用者と、経営者や監査役若しくは監査役会、監査等委員会又は監査委員会(以下「監査役等」という。)との間で行われる、企業、監査済財務諸表又は実施された監査に関連する特定の事項についての対話が促進されることが期待されます。

 

3.留意事項

監査報告書における監査上の主要な検討事項の報告は、監査人が全体としての財務諸表に対する監査意見を形成した上で行われるものですので、監査報告書における監査上の主要な検討事項の報告は、以下のいずれを意図するものではありません。

 

(1) 財務諸表の追加的な注記事項の代替

 

(2) 除外事項付意見の表明の代替

 

(3) 継続企業の前提に関する重要な不確実性に関する報告の代替

 

(4) 個別の事項に対する意見表明

 

4.適用範囲

本報告書は、以下の監査に適用されます。

 

(1)法令により監査報告書において監査上の主要な検討事項の記載が求められる監査

 

(2)監査報告書において監査上の主要な検討事項を任意で報告することを契約条件により合意した場合

 

ただし、監査人が財務諸表に対する監査意見を表明しない場合には、監査上の主要な検討事項の報告を行ってはならないとされています。

 

5.本報告書における監査人の目的

本報告書における監査人の目的は、以下のとおりです。

 

(1)監査上の主要な検討事項を決定すること

 

(2)財務諸表に対する意見を形成した上で監査上の主要な検討事項を監査報告書において報告すること

 

6.定義

「監査上の主要な検討事項」とは、当年度の財務諸表の監査において、監査人が職業的専門家として特に重要であると判断した事項をいいます。

 

監査上の主要な検討事項は、監査人が監査役等とコミュニケーションを行った事項から選択されます。

 

要求事項

 

1.監査上の主要な検討事項の決定

監査人は、監査役等とコミュニケーションを行った事項の中から、監査を実施する上で監査人が特に注意を払った事項を決定します。

その際、監査人は以下の項目等を考慮しなければなりません。

 

(1) 監査基準委員会報告書315「企業及び企業環境の理解を通じた重要な虚偽表示リスクの識別と評価」に基づき決定された特別な検討を必要とするリスク又は重要な虚偽表示リスクが高いと評価された領域

 

(2) 見積りの不確実性が高いと識別された会計上の見積りを含む、経営者の重要な判断を伴う財務諸表の領域に関連する監査人の重要な判断

 

(3) 当年度に発生した重要な事象又は取引が監査に与える影響

 

監査人は、上記に従い決定した事項の中から更に、当年度の財務諸表の監査において、職業的専門家として特に重要であると判断した事項を監査上の主要な検討事項として決定します。

 

まとめると以下のように、徐々に絞り込まれていくことになります。

 

監 査 役 等 と の コ ミ ュ ニ ケー ショ ン

監 査 人 が 特 に 注 意 を 払 った 事 項

監査上の主要な検討事項

 

 

2.監査上の主要な検討事項の報告

監査人は、監査報告書に「監査上の主要な検討事項」区分を設け、法令等により公表が禁じられている場合若しくは公表により公共の不利益となる場合 又は除外事項付き意見に該当する場合を除き、個々の監査上の主要な検討事項に適切な小見出しを付して記述します。

 

また、「監査上の主要な検討事項」区分の冒頭に以下を記載しなければなりません。

 

(1) 監査上の主要な検討事項は、当年度の財務諸表の監査において、監査人が職業的専門家として特に重要であると判断した事項である。

 

(2) 監査上の主要な検討事項は、財務諸表全体に対する監査の実施過程及び監査意見の形成において監査人が対応した事項であり、当該事項に対して個別に意見を表明するものではない。

 

3.除外事項付意見表明を代替することの禁止

監査人は、監査基準委員会報告書705 に基づき除外事項付意見を表明しなければならない状況において、除外事項付意見を表明せず、除外事項に該当する事項を監査報告書の「監査上の主要な検討事項」区分において報告してはなりません。

 

 4.個別の監査上の主要な検討事項の記載内容

監査報告書の「監査上の主要な検討事項」区分において、以下を記載しなければなりません。

 

(1) 関連する財務諸表における注記事項がある場合は、当該注記事項への参照

(2) 個々の監査上の主要な検討事項の内容

(3) 財務諸表監査において特に重要であるため、当該事項を監査上の主要な検討事項に決定した理由

(4) 当該事項に対する監査上の対応

 

ただし、連結財務諸表及び個別財務諸表の監査を実施しており、連結財務諸表の監査報告書 において同一内容の監査上の主要な検討事項が記載されている場合には、個別財務諸表の監査報告書においてその旨を記載し、当該内容の記載を省略することができます。

 

 5.監査上の主要な検討事項として決定した事項を監査報告書において報告しない場合

監査人は、以下のいずれかに該当する場合を除き、監査報告書に監査上の主要な検討事項を記載しなければなりません。

 

(1) 法令等により、当該事項の公表が禁止されている場合

 

(2) 極めて限定的ではあるが、監査報告書において報告することにより生じる不利益が公共の 利益を上回ると合理的に見込まれるため、監査人が当該事項について報告すべきでないと判断した場合。

 

ただし、企業が当該事項に関する情報を財務諸表以外の何らかの方法により公表している場合は、報告すべきでないと判断する状況には該当しません。

 

 

6.監査上の主要な検討事項の記載内容と監査報告書に記載すべきその他の項目の相互関係

監査報告書に対して除外事項付意見を表明する原因となる事項、又は継続企業の前提に関する重要な不確実性は、その性質上、監査上の主要な検討事項に該当します。

しかし、監査人はこれらの事項を監査報告書の「監査上の主要な検討事項」区分に記載してはなりません。

この場合、監査人は、「監査上の主要な検討事項」区分 への記載に代えて、以下を行わなければなりません。

 

(1) 該当する監査基準委員会報告書に準拠してこれらの事項を監査報告書において報告する。

 

(2) 「監査上の主要な検討事項」区分に、「『[除外事項付意見]の根拠』に記載されている事項を除き」又は「『継続企業の前提に関する重要な不確実性』に記載されている事項を除き」と記載する。

 

 7.その他の状況における「監査上の主要な検討事項」区分の様式及び内容

監査人は、企業及び監査に関する事実及び状況を踏まえて、報告すべき監査上の主要な検討事項がない場合や個別財務諸表の監査報告書において監査上の主要な検討事項の内容等の記載を省略している場合などについては、監査報告書に「監査上の主要な検討事項」の見出しを付した区分を設けて、その旨を記載しなければなりません。

 

8.監査役等とのコミュニケーション

監査人は、以下に関して監査役等とコミュニケーションを行います。

 

(1) 監査人が、監査上の主要な検討事項と決定した事項

 

(2) 企業及び監査に関する事実及び状況により、監査報告書において報告すべき監査上の主要 な検討事項がないと監査人が判断した場合はその旨

 

9.文書化

監査人は、監査調書に以下の事項を含めなければなりません。

 

(1) 監査人が特に注意を払った事項及び各事項が監査上の主要な検討事項となるかどうかの監査人の決定の根拠

 

(2) 監査報告書において報告する監査上の主要な検討事項がないと監査人が判断した場合、又は報告すべき監査上の主要な検討事項が除外事項若しくは継続企業の前提に関する重要な不確実性以外にない場合はその根拠

 

(3) 監査上の主要な検討事項であると決定された事項について監査報告書において報告しないと監査人が判断した場合はその根拠

 

監査法人の組織的な運営に関する原則(監査法人のガバナンス・コード)について

「監査法人のガバナンス ・ コー ドに関する有識者検討会」は、平成29年3月31日に「監査法人の組織的な運営に関する原則」(監査法人のガバナンス・コード)(以下、本原則)を公表しました。

 

Ⅰ 概要

会計監査は資本市場を支える重要なインフラであり、今後の会計監査の在り方について幅広く検討するため、平成27年10月、「会計監査の在り方に関する懇談会」が設置されました。

平成28年3月にその提言が取りまとめられましたが、そこでは、大手上場企業等の監査を担う監査法人の組織的な運営に関する原則を規定した「監査法人のガバナンス・コード」の策定が提言されました。

これを受けて、平成28年7月、有識者検討会が設置され、「監査法人の組織的な運営に関する原則」を取りまとめることとしたものです。

 

本原則は、組織としての監査の品質の確保に向けた5つの原則と、それを適切に履行するための指針からなっています。

以下のことを行うことなどが規定されています。

 

・  監査法人がその公益的な役割を果たすため、トップがリーダーシップを発揮すること

・  監査法人が、 会計監査に対する社会の期待に応え、 実効的な組織運営を行うため、経営陣の役割を明確化すること

・  監査法人が、監督・評価機能を強化し、そこにおいて外部の第三者の知見を十分に活用すること

・  監査法人の業務運営において、法人内外との積極的な意見交換や議論を行うとともに、構成員の職業的専門家としての能力が適切に発揮されるような人材育成や人事管理・評価を行うこと

・  さらに、 これらの取組みについて、分かりやすい外部への説明と積極的な意見交換を行うこと

 

 

Ⅱ 本原則の内容

 

1.監査法人が果たすべき役割

 

企業の財務情報の的確な把握と適正な開示の確保は、経済活動の支えであり、会計監査は、日本経済の持続的成長につなげていく前提となる重要なインフラであるとしています。

 

その役割を果たすために、以下のことをすべきとしています。

 

(1)価値観の共有

(2)行動指針

(3)職業的懐疑心の動機づけ

(4)解放的な組織文化・風土

(5)非監査業務の位置づけ

 

2.組織体制

 

法人の組織的な運営のためにすべきことを挙げています。

 

(1)実効的なマネジメント機関の設置

 

(2)経営機関の役割の明確化

  • 監査品質
  • 監査上のリスク
  • 人材育成、人事管理
  • ITの有効活用
  • 経営機関の構成員

 

3.経営機関の実行性評価

 

監査法人の経営から独立した立場で、経営機能の実効性を監督・評価する機能の確保を求めています。

 

(1)監督・評価機関の設置

 

(2)監督・評価機関の構成員に独立性を有する第三者を選任

 

(3)第三者の役割明確化

 

  • 実効性評価
  • 構成員の選退任、評価等
  • 内部、外部通報の検証、評価
  • 資本市場の参加者との意見交換

 

4.業務運営

 

(1)組織的な運営を効率的に行うための業務体制の整備を求めています。

 

  • 監査品質の持続的向上のため、経営機関の考え方の監査現場までの浸透
  • 人材育成、人事管理・評価・報酬の方針策定
  • バランスの取れた構成員の配置
  • 幅広い知見・経験を得る機会

 

(2)被監査会社との十分な意見交換に留意すべきとしています。

 

(3)内部・外部通報情報の活用と通報者の不利益払拭に留意すべきとしています。

 

5.透明性の確保

 

(1)被監査会社、株主等の資本市場の参加者が監査法人を適切に評価できるよう、透明性の確保を求めています。

 

  • 本原則の適用状況や品質向上に向けた取り組みの説明
  • トップの姿勢
  • 共通の価値観、行動指針
  • 非監査業務の位置づけ
  • 経営機関の構成、役割
  • 監督・評価機関の構成・役割
  • 実効性評価

 

(2)監督・評価機関の構成員の第三者の知見を活用すべしとしています。

 

(3)実効性の定期的評価を行うこととしています。

 

(4)資本市場参加者との意見交換を行うこととしています。

 

社外取締役とは、何をする人か?その役割と責務

 

社外取締役に関連する規定は、会社法と東京証券取引所の上場規程に定められています。

また、コーポレートガバナンス・コードでは、社外取締役の役割と責務についての記載があります。

 

 

1.「会社法」における社外取締役の定義

 

社外取締役とは、株式会社の取締役であって、次に掲げる要件のいずれにも該当するものをいいます。

 

  • (1)当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役でなく、かつ、その就任の前十年間当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役等であったことがないこと。

 

  • (2)その就任の前十年内のいずれかの時において当該株式会社又はその子会社の取締役、会計参与又は監査役であったことがある者にあっては、当該取締役、会計参与又は監査役への就任の前十年間当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役等であったことがないこと。

 

  • (3)当該株式会社の親会社等又は親会社等の取締役若しくは執行役若しくは支配人その他の使用人でないこと。

 

  • (4)当該株式会社の親会社等の子会社等の業務執行取締役等でないこと。

 

  • (5)当該株式会社の取締役若しくは執行役若しくは支配人その他の重要な使用人又は親会社等の配偶者又は二親等内の親族でないこと。

 

 

2.「有価証券上場規程」における独立役員の定義

 

(1)独立役員の確保

 

上場会社は、独立役員を1名以上確保することが求められています。

 

上場規程における独立役員とは、会社法に規定する社外取締役または社外監査役のうち社外役員に該当するものを指しています。

 

(2)取締役である独立役員の確保

 

上場規程では、取締役である独立役員を1名以上確保するように努力する規定が定められてます。

 

(3)独立役員が機能するための環境整備

 

上場規程第では、独立役員が期待される役割を果たすための環境を整備する努力規定が定められています。

 

3.「コーポレートガバナンス・コード」における役割・責任

 

コーポレートガバナンス・コードでは、原則及び補充原則において、独立社外取締役の役割と責務について記載しています。

 

期待される役割は、以下の4点を挙げています。

 

  • (1)経営方針や経営改善への助言

 

  • (2)経営の監督

 

  • (3)利益相反の監督

 

  • (4)少数株主をはじめとするステークホルダーの意見の反映

 

また、社外取締役の有効活用のために、独立社外取締役を2名以上選任すべきとし、必要な場合には、独立社外取締役を取締役の3分の1以上選任すべきとしています。

 

4.コーポレートガバナンス・コードと会社法・上場規程の関係

 

コーポレートガバナンス・コードは、会社法と上場規程の定めを踏まえて、社外取締役制度を有効活用するために必要な基本な考え方、心構えを定めるとともに、会社法や上場規程の定めよりもより厳しい形式基準も要求しています。

コーポレートガバナンス・コードの求めるところは、会社法・上場規程の上位にあるということができます。